第11話 武器完成からの狩り

 まずはナイフから仕上げていく。

 ナイフのつかの先端部にある切れ込みに刃を差し込み、麻紐でしっかりと固定する。これでナイフの完成だ。そして、振り回しても刃が外れる素振りは全くなかった。

 次に槍を仕上げる。

 槍もナイフと同様に組み立てて完成させたが、槍のほうが少し難しかった。ちなみに、振り回しても大丈夫そうである。


 あ、ナイフがこのままだと危ないな。

 ナイフは手に持たず、ポケットに入れていこうと思ったが、このままだとポケットを突き破る可能性がある。


 応急処置だが、葉を刃に巻こう。

 長めの葉を入手し、刃に巻きつける。この状態だと葉が簡単に外れてしまうので、余った麻紐を使い固定する。

 そして、槍を片手で掴む。


 これで狩りの準備が終了した。あとは動物を探して狩るだけ。

 「ここの川に魚がいるのに、どうして動物を探すの?」と思ったかもしれないが、それにはわけがある。


 ……僕の現在の実力では、素早く動く魚を仕留めることができないのだ。

 考えてみてほしい。あなたは今まで槍を使ったことがないと思う。そんなあなたが「槍を使って魚を仕留めてこい!」と言われて、槍を持ち、川に行っても魚を仕留めることはできないだろう。


 そういう訳だから、僕は魚を狙わずに陸の動物を狙っている。



 ……石探しをするために川へ行っていたときは動物がいたのに、現在は全然見かけない。武器を持っているから警戒しているのか?


 動物を見逃さないために、目を凝らして辺りを注意深く見ながらゆっくり歩いていく。


 そんな感じで約40分が経過した。


 僕は現在、一匹の動物を観察している。色はスカイグレー(曇り空のようなわずかに青みを帯びた明るい灰色)で、もふもふの毛が生えている。大きさは……正確にはわからないが、およそ30cm前後だろう。


 観察といってもここは薄暗いし、あの動物と僕との距離は5m以上離れているから詳しいことはわからない。


 一方で、あの動物は僕に背を向いて草を食べている。こちらに気づいた素振りは全く見せていない。おそらく、警戒心が薄いのだろう。


 あの動物を狩るには、もう少し近づかなければならない。この距離は槍の攻撃範囲外だからだ。

 ただ、気づかれたら十中八九逃げられるだろう。


 僕は音を極力立てずに息を殺してあの動物に接近していく。あと少しで攻撃範囲に入る……その時だった。


 「バキッ」と僕の足元から不穏な音がした。どうやら、気づかずに木の枝を踏んでしまい、枝が折れたのだ。


 やばい、これは確実に気づかれた!


 あの動物は振り返ってこちらを見てきた。その姿は、どう見てもうさぎだった。しかし、一つだけ違う点がある。それは……額に一本の角が生えていることだ。


「キシィィィー!」


 角が生えた兎……角兎つのうさぎとでも呼ぼうか。その角兎は僕に対して威嚇した。鳴き声が完全に兎の声ではないが。


 それから、角兎は威嚇が効かないとわかったのか、こちらに背を向けて逃げていく……なんてことはなく、こちらに突進してきた。


「うわっ、危なかった……!」


 僕は間一髪で角兎の突進をかわした。くっ、このままやられっぱなしではいられない。ここからは反撃の時間だ!

 僕は槍を角兎に向けて勢いよく突き出す。

 しかし、兎は持ち前の脚力を行使して飛び下がり、その槍が当たることはなく地面に突き刺さった。

 僕は急いで槍を地面から抜こうと行動を起こす。


 角兎はその様子を好機と思ったのか、再び僕にめがけて突進を繰り出してきた。

 これはまずい!そう思った僕は咄嗟に槍を己の前に突き出す。


 その瞬間、角兎の額から鮮血が噴き出て地面を赤く塗った。


 何が起きたんだ……?


 そう思ったが、僕はすぐに状況を理解した。角兎が突進してきた先は槍の穂先ほさきだったのだ。


 そう考えていると、突如に頭の中で機械的な声が聞こえた。


『ステータスⅠとステータスⅡをインストールします。その際、過度な頭痛が発生する可能性があるので、ご注意ください』


 これは一体何だろう? 何を言っているのか分からない。


 そう思ったのは束の間だった。唐突に頭に激痛が走る。


「ぐあぁぁぁぁ!」


 つい我慢できずに苦痛の声を漏らしてしまった。


『インストールを開始しました。完了まで時間が少々掛かりますので、少しの間お待ちください』


 その声が聞こえた瞬間、僕の意識が途切れた。




――――――――――――――――――


 遂に次回からストーリーが大幅に動きます!(あれ?前に同じようなことを言っていた気がする……)

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