第5話 パートリア村
「なあ、親父。なぜ俺を呼んだ? 今は勉強で忙しいんだが」
少年が金髪の男――アルにそう言った。少年はアルと似た顔つきに、髪の色も同じ。しかし、アルの瞳はダスキーグレー(青みの灰色)であるのに対し、少年は真紅の瞳である。
「ソル、お前を呼んだ理由は――」
アルはソルと呼ばれた少年に理由を語っていく。初めのうちは嫌そうに聞いていたソルだったが、段々と真剣になっていった。
「……その話はマジなのか?」
「ああ、本当の情報だ。あと、その件については俺達が対応する。お前の出番は後だ」
満点の星が夜空を照らす。そんな時間に親子は重要なことを語らっていた――
***
「そろそろ村の門が見えてくる頃かな? 村にあと少しで着くよ、レイくん」
お、やっと着くのか。2時間という短い時間がこれほど長く感じたことは久方ぶりだったな。
それから数秒後。ティグリスが言った通り村の門とその
……ただ、その門よりも気になったことがある。それは僕から見て右斜め前あたりにある何だか既視感がある謎の跡だった。その跡は中心が深く抉れていて、周囲が軽く削れているものだ。
……これはもしかしたら、デュアルホーンラビットがいたと思われる所にあったあの跡ではないか?
それなら既視感があったことにも頷ける。若干抉れ方などが違う気がするが、そんな些細なことはどうでもいいだろう。
僕は謎の跡についての考えを完結させたので、再び門を見る。
……ボロボロなのに変えないのだろうか? それとも変えたいけど変えることができないくらいに忙しかったり貧しかったりするのか?
僕が門について軽く考えていると、ティグリスが荷車を置き、門番の近くに行って何かを話していた。僕との距離が少し離れているのと、声が小さいのが相まって、全くその話を聞くことができない。
盗み聞きができないようにわざわざこの距離に荷車を置いたティグリスの考えに舌を巻く。
それから少しすると、話が終わったのかティグリスがこちらに戻ってきた。
「目的地である村――パートリア村に着いたよ。たから、これから村長の家に行こうと思うけどいいかな?」
一応僕に確認をしてきたが、拒否権は無いので素直に頷く。
「よし! じゃあ早速行こうか」
*
パートリア村は、家が見る限り十数軒しかない小さくて古い村だった。
基本的に家の壁は木でできており、頑丈そうには見えない。そして屋根には
一言で表すと「お世辞にも住みたいとは思わない家」だろうか。それぐらいボロボロな家である。雨が降ったときに全ての家で雨漏りが起きそうなくらいだ。
……しかし村長の家だけは違う。壁は木ではなく、しっかりとした石材でできてある。また、屋根には灰色の瓦が使用されていて、一目見ただけで村長宅と分かる造りになっていた。
ティグリスはその家のドアノッカーと呼ばれる玄関の扉に取り付けられている叩き金を鳴らし、声を上げた。
「兄さ~んっ! 僕が帰ってきたよ~」
すると、ドアが開いてティグリスに似た容姿の男が出てきた。
「やっと帰ってきたか、ティグリス。例の少年は連れてきたか?」
「もちろん連れてきたよ。ほら、この子が例の少年だよ」
話の内容に引っかかったが、話の流れ的に僕が名乗った方が良さそうなので一旦置いておこう。
「お初にお目にかかります。私はレイと申します。以後、お見知りおきくださると幸いです」
「承知した。では、私も名乗るとしよう。私の名はアルダンティ。村長であり、ティグリスの実兄だ。アル村長と呼んでくれ」
その名乗りを聞いた僕は呆気にとられていた。
ティグリスは村長の弟だったのか……!?
まあ、ティグリスが村長の弟なのはドアノッカーのくだりから予想はついていた。ただ、ティグリスと雰囲気が全然違うとは思わなかった。
ティグリスは少し軽い感じだが、アルダンティ――アル村長は重い雰囲気がある。
そんなことを思っていると、アル村長の後方から声が聞こえた。
「親父、俺も名乗った方がいいか?」
若い声だったが、声変わりを迎えているようである。声がなかなか低めだ。
「ああ、名乗っておけ。これからも長い付き合いになるだろうからな」
長い付き合い? 一体どういうことだ?
「俺の名はソルデウス。村長の嫡男だ」
疑問を抱いてからすぐに若い声の持ち主が名乗りを上げ、姿を現す。その人は、金髪に真紅の瞳が特徴的な、僕と同じ歳くらいの少年だった。
――――――――――――――――――
今日も余裕があったので投稿しました。この余裕がいつまで続くのか戦々恐々しています。
近況ノートに金髪に真紅の瞳が特徴的な少年である「ソルデウス」のイメージ画像を載せました!
見ていただければ幸いです。
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