エピローグ 九死に一生を得た吸血鬼

※エピローグとありますがこの物語は終了しません。これは第一章のエピローグです。


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 あれ……? ここは、どこだ……?


 僕は森で熊に背中を切り裂かれ、意識を失った。その時は「死んだ」と思ったのだが……。


 不思議なことに、視界には満天の星空が広がっている。樹木がたくさん生い茂っているあの森では目にかかることがない光景だ。


 ここがどこなのか確認するために身体を起こそうとしたが、力が入らないうえ、背中に激痛が走ったので起こすことができない。なので横たわったまま周囲を見渡してみると、ここがあの森ではないことが一目瞭然だった。 


 辺りには木が少ししかないし、かたわらには拠点の近くにあった川の倍以上の幅がありそうな川がある。


 また、先ほどまで致命傷を負って半死半生だったのに、今は痛みこそあるが

致命傷には至っていないことにも疑問を持っている。


 ……考えても分からないことを、つい考えてしまうのは昔からの癖だろう。


 とりあえず今は今後の方針を……あ、このままだと日が昇ったらまずいことになってしまう。


 アルビノの人が日焼けすると火傷みたいな症状がでるから、日焼けを回避するためにここから一番近い日陰に行かないと。


 これが一時凌ぎにしかならないことは分かっている。しかし、何もしないのとは雲泥の差があるのだ。


10には埋められない差がある』


110にするのは容易だが、01にするのは極めて難しい』


 僕はこの言葉がとても気に入っているのだ。しかし、理由は自分でも分からないが。


 ……それはさておき、一番近いと言っても10m以上離れた場所にある日陰に、身体を動かそうとすると背中に激痛が走るのを我慢しながら行くのは非常に骨が折れることである。


 だが、そうしないとので四の五の言っている場合ではない。


 僕は覚悟を決め、初めの一歩を……踏み出そうとしたが、背中に一際大きい痛みが走ってまともに動くことができなくなり、その一歩は頓挫とんざした。


   *


 初めの一歩こそ頓挫してしまったものの、日が昇る前に日陰に辿り着くことができた。


 ……その代償に背中の痛みが悪化してしまったが。


 背中は当分治ることがないだろう。まあ、そもそも生きていることが奇跡だからそれは些細なこと。


 僕はそう考えようとしたのだが、どうしても背中の傷が些細なものだとは思うことができなかった。



 空が目覚めた時から少し明るくなっている。日が昇るのも近いだろう。


 なぜか感慨深くなった僕は静かに空を見上げる。


「本当に美しい光景だ。僕がこの世界に来た時もこんな感じの空だった気がする……」


   *


 (空を見上げる少年の透き通った瞳には、空ではないナニカを映しているような気がする)


 零のことを密かに見つめている男はそう思った。


(この少年はきっと強くなる。息子と一緒に「あの境地」に至れば私の悲願達成にも届きるになるだろう)


   *


 零の瞳に映っていたナニカ、男がこいねがうこと。


 彼を取り巻く環境は既に変わりかけていた――




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 第一章も残すは閑話が二つとなりました。タイトルは『閑話Ⅰ エボニー?視点「暴走する感情」』と『閑話Ⅱ ??視点「懐かしい気配」』です。

 「閑話なんてどうでもいい。メインストーリーが見たい」と思う方がいらっしゃると思いますし、閑話の内容も少ないので、この二つはその日のうちに投稿したいと思います。

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