第二章 愛と真の強さ
愛は辛いモノ
プロローグ とある村の夫婦
今回は三人称視点です。
――――――――――――――――――
現在は太陽があと少しで沈みきる時刻。
そんな時間に森からとある村に行くための道を歩いている男がいた。男は猪らしき動物の死体を担いでいる。おそらく、狩りから帰ったのだろう。
それから数分間歩き続けると、村が見えてきた。その村は小さく、古めかしい雰囲気を持っている。
男は村の木でできたボロボロな門をくぐり、奥の丘の上に建っている村の中でも一際大きい家に向かって行く。
「村長、お疲れ様です!」
歩いている最中に20歳ぐらいの若い青年が話しかけてきた。
「今日の収穫は?」
「ホーンラビットが13匹、フォレストボアが1体です」
その言葉を聞き、男の顔が険しくなった。
「そうか。今回は少ないな」
顔が可哀想なくらい真っ青になる青年。若い彼には男から発せられるプレッシャーに耐えられなかったようだ。
「申し訳ありません!最近は動物や魔物の出現数が減っており――」
「別に責めているわけではない。思ったことを口に出しただけだ」
男は不機嫌に見えるが、これが普通の顔らしい。まあ、男の顔がいつにも増して不機嫌なように見えるから青年が勘違いを起こしたのだが。
「ティメーレ、お前はもう19歳だ。そろそろ結婚をした方がいいと思うぞ」
「俺――いえ、私はまだ結婚をせずに職務を
「ふむ。では、現在の職務が
そう話した
*
「ただいま帰った」
男は丘の上に建っている家の扉を開けるとそう言った。どうやら、ここは男の家のようだ。
「あら、お帰りなさい」
男を出迎えたのは、滑らかで長いハニーブロンドの髪に、赤く透き通った瞳が目を
彼女を見た人はほとんどが性別に関係なく
……これで子持ちの28歳なのだから驚きである。
「まずはご飯にする? 水浴びにする? それともわ・た・し?」
まるで新婚の妻が言うような言葉を口にする。
「無論、夕食からだ」
男としては「
「え~! アル君のいけず、へたれ、え、えっと……あんぽんたん!」
頬を膨らませる女性。アル君と呼ばれた男――「アル」と呼ぶことにしよう。アルはその様子を見て肩を
「メル、単刀直入に言う。俺は飽きた」
「がーん! な、なんですって……」
メルと呼ばれた女性――「メル」と呼ぶことにしよう。メルは大変ショックを受けた様子だった。
「あ、あ、飽きたのはこの3択? それとも……私!?」
メルはがっくりと崩れ落ちて泣き出した。その仕草はわざとらしいように見えるが、アルはこれが本当に泣いているということを知っている。だからこそ、珍しく動揺した。
「飽きたのはメルではなくてあの3択だよ。結婚してからほとんど毎日同じようなことを言われたら流石に飽きてしまうからね」
アルは誤解を解くために必死で
「よ、よかった……。私が飽きられちゃったと思ったよ……。あれ?だったら
最近抱いてくれないのは何でかな? あと、あの3択が飽きられたことに地味にショックを受けてるから……」
メルの目のハイライトが消えかかっている。それを見て、アルは悪寒に似たような症状に襲われた。身体がブルブルと震える。
「い、今は子供が3人もいるだろう? この家、というかこの村の家の壁は薄いから声が結構聞こえるんだ。子供を起こすのは良くないし、最近は俺も疲れていて、致すぐらいだったら早く休みたいんだ……」
アルは必死に言い訳……ではなく正論を言う。しかし、その正論が通用しないのが
「私たち専用の寝室の壁は防音仕様になってるし、アル君は私とちょっとした運動をしただけでへこたれるような
メルが「どうだ!」と言わんばかりに自信満々でそう言い放つ。しかし、問題がある。前半の音漏れ問題は解決しているが、後半は全く解決していないのだ。
アルはそう反論したがメルは聞く耳を持ってくれず、結局はすることになった。メルからしたら、夕食と水浴びを致す前に済ますことが最大の譲歩らしい。
……その翌日には、やけにぐったりとしたアルと肌がさらにツヤツヤになったメルがいた。
それを見て、末っ子が「どうしてパパはそんなにつかれているの?」と聞いてきたので、アルは「昨日にたくさん運動をしたからだよ。ははは……」と答えた。
……普段は厳格な村長(29歳)も、妻には勝てないようである。
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「これ本編と全く関係ないじゃん!」と思った方がいると思いますが、これは関係のある話です。
※「……この時、既に
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