第29話 何気ない一日
空には分厚く、暗い雲が一面に広がっている。晴れの状態だったら僕は外に出られないので好都合だ。だが、いずれ晴れになる日がやってくる。その時はどう説明しようか……?
朝食をとり終わった後、僕たちは家の外に出ていた。今日の午前中にアル村長は仕事があるらしいので、午前はティグリスが稽古をつけてくれるそう。
「入学試験まであと半年もないから頑張ってね」
ティグリスのそんな一言に僕は僅かに瞠目する。
(半年もないだと?)
そういえば、現在の年月を把握していないな。あと半年で入学試験があるということは、今は秋頃か?(入学試験が春に行われることが前提になるが)
「ああ、確かに今は
ソルデウスがしみじみと呟く。
「
「お前、そんなことも知らないのか? ……仕方ない、俺が教えてやる」
やたら偉そうな言い方だが、こちらが教えを乞う側なので突っ込まない。
「前に
「だったら他の月は何と呼ぶんだ?」
「年の初めから順に言うと、
なるほど。
あの世界と変わらないのなら、現在の季節は秋。だが、それほど寒くはない。感覚的には夏の終わりくらいだ。
「今回、君たちには逃げる僕を追いかけて捕まえる、ということをしてもらうよ」
おっと、もう広場(前回の訓練の時の拠点)に着いたのか。月の話は終わりにして、ティグリスの話を聞こう。
「なあ、叔父さん。それだけだと分からないからルールを教えてくれ」
「わかった。今から説明するね。流石に大雑把なルールだと、僕がずっと逃げ続けて君たちは捕まえることができずに終わってしまうだろうから、今回は色々と僕に制約をかけたルールにしたよ」
自信満々でそう語るティグリス。確かに僕たちが、何の制約も設けられていないティグリスを捕まえるのは非常に困難だ。
「当然、僕は全力で走ることができないのと、魔法やスキルなどの使用も一切禁止。そして、僕は決められた範囲まででしか動けない。あと、僕の居場所が君たちにわかるようにしてあげよう」
ティグリスが手を右後方に引いてから、僕たちの前で手を左に勢いよく振った。その手からは
そして、手から放たれた粒子は僕とソルデウスにかかった。
「よし、これで準備は終了っと。これから始めるよ〜」
粒子を眺めていた僕たちを置いて、逃げていくティグリス。中々のスピードだ。
って、そんなことを考えている場合ではない。早く追わなければ!
「絶対に捕まえてやるぞ……!」
ソルデウスもやる気を出して、ティグリスを共に追いかけた。
***
「今日も疲れたな……」
午前の訓練では結局ティグリスを捕まえることはできず、僕たちは何回も転がされた。泥だらけになった僕たちは、その後に水浴びをしてから昼食をとり、それが終わると僕は文字の読み書きの練習、ソルデウスは前回に続いて政治学、法学、地理学、薬学、工学のテストをしたそう。
ソルデウスが受けたテストの学科を聞き、この歳にしては学ぶ量が多くて驚いたのを覚えている。
あれらの学科が試験に出るのなら、僕も早く文字の読み書きができるようになって色々と学習を進めないと非常に苦しいことになってしまうぞ……。
ちなみに、現在は文字のほとんどが読めるようになっている。この国の文字だけだし、書くことはまだできないが。
また、他国の言語も習得しなければいけないので中々大変。おそらく試験が終わるまでハードスケジュールが続くだろう。
「休める内に、身体をゆっくりと休めないとな……」
客室の寝台に寝転がりながら呟く。最近は本当に目まぐるしい毎日を送っているので、情報も整理したいところだ……。
――――――――――――――――――
更新が遅れてしまい、誠に申し訳ございません。私は前回に「今後は通常通り、2、3日に一回の更新をしていこうと思います」などとほざいていたようですが、体調を再び崩したり忙しかったりして結局更新が遅れるという事態になってしまいました。
このことを反省して、体調管理に気を付けつつ、更新も頑張っていこうと決意しました。
そして、重要なお知らせです。この度、『vampire superstes』は「読みにくい」等の理由によって、タイトル変更をさせて頂きました。新タイトルは、
『
https://kakuyomu.jp/users/nulla/news/16817330665854600406
タイトル変更とは全く関係ありませんが、次回予告をさせて頂きます。次回は「閑話Ⅲ ゼロは離れ、再び交わる」です! 閑話になりますが、第二章は一応あと数話続きます。また、割と重要な話なのでお見逃しなく!(更新は土曜日を予定しております。間に合わなかったら、申し訳ございません……)
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