第8話 食事(for the first time since reincarnation)
それは茶色の毛をふさふさと生やした――
蜘蛛だった。
「……」
その
イメージはオオツチグモ(タランチュラ)だろうか。でも、オオツチグモよりこの蜘蛛の方が大きい(オオツチグモは体長が約5~10cmほど)。
一言でいうと、気持ち悪い。蜘蛛好きの方には申し訳ないが、大体の人が蜘蛛のことを快く思ってはいないはずだ。もちろんこれは偏見であり、確実では無い。そして、蜘蛛が好きだという人の意見は否定しない。好みは人それぞれだからだ。
ともかく、僕は蜘蛛が苦手というか、好ましくは思っていない。それには理由がある。
あれは数年前のことだった。
◇
春の陽気が感じられたある日の
読んでいる本は夏目漱石の『こころ』である。……読んでいる本は関係ないか。話を戻そう。
この本を読んでいる途中、無性に外の景色が見たくなった。しかし、日が昇っておらず空は暗いのに、窓にはカーテンが閉まっていて手が届かないところにあったため、景色を見ることは叶わなかった。
とは言っても、景色を見れないことに残念とは思わない。
僕は読書を再開するために本へ目を落とした。その時、初めに目に入ったのは文字ではなく、小さくて黒い塊だった。
それの正体は一匹の小さくて黒い蜘蛛だった、
その蜘蛛は、僕が意識を本から逸らしていたときに、天井から糸を引いてこちらに来ていたのだ。
「……」
僕は無言で蜘蛛を掴み上げ、ゴミ箱の方へ向かって投げ飛ばす。
この時には読書する気が失せていたで、本を机に置いた後、黙って眠り込んだ。
――それから、幾度か似たようなことが起こるのだった。
◇
……ということがあったので、僕は蜘蛛のことをあまり好ましくは思っていない。
おっと、話がずれたな。ここで蜘蛛の話は終わりにしよう。それより、今はこの蜘蛛をどうするのか考えないといけない。
この蜘蛛は地球にはいない。なので木の実を食べるかもしれないから、試してみようと思う。
ただ、食べなかった場合はどうしようか。無難に逃すのが良さそうな。
「とりあえず、食べさせてみよう」
僕はポケットから
「まずは木苺からだな」
さっきからこの蜘蛛は微動だにしない。眠っているのか?
眠っているのかもしれないので、起こすために頭の部分を
「……動かないな」
それは置いておこう。
すると、蜘蛛が木苺を頬張った。むしゃむしゃと美味しそう(?)に食べている。
今の段階では木苺に毒があるのかわからないので待つことにした。しかし、問題がある。それは、木苺に遅効性の毒があった場合だ。
遅効性の毒は数時間、長ければ数十時間経ってから発症するのもあるので、相当な時間待たないといけない。
ただ、僕も蜘蛛も、数日間待つことはできないだろう。なので、2~3時間程待つことにした。思ったより短いと思うだろうが、僕は何故か3~4日間程何も食べていないような
2~3時間程待つために、僕は蜘蛛を手で捕まえたまま、いろいろなことを考えていた。
*
体感時間で3時間程経っただろう。蜘蛛に異変はなく、むしろもっと木苺を食べたそうにしていた。
「木苺を食べたそうにしているところで悪いが、これ以上はあげることができない。ただ、その代わりと言ってはなんだが、この桜桃をあげよう」
蜘蛛に言葉が通じるのかわからないが、自然と声を出して桜桃を与えていた。
ちなみに、蜘蛛は桜桃も美味しそうに頬張っていた。
木苺のときと同じく、桜桃を与えて2〜3時間程待つ。待っている間には木苺を食べ、無くなったら蜘蛛を手で捕まえたまま木苺を採集して食べた。
久しぶりに食べたものは、非常に美味しかったとだけ言っておこう。
*
蜘蛛が桜桃を食べてから体感時間で3時間程経ったが、異変は見られなかった。
検証が終了したので、蜘蛛を手から解き放つ。
「君は役に立ったよ。……けど、この蜘蛛に『陦?豸イ縺ッ螟壹¥蜷ォ縺セ繧後※縺?↑縺?@縲∽ス輔h繧翫?∫ゥ「繧後※縺?※鄒主袖縺励¥縺ェ縺』」
……僕は何を言っているんだ?いや、僕じゃない。俺が言っているのか。それなら納得だ。
桜桃はここら辺にはないが木苺は沢山あったので、桜桃を食べずに木苺を食べ続けることにした。木苺には水分がたっぷりと含まれていたので水分補給にもなったのは嬉しい誤算である。
「これからはどうするか……」
何度考えたかはわからないことを考えて前に進む。
――このとき、水分をとったのに喉は渇いたままだった。
僕は喉の渇きを潤すために、無意識のうちに動物を探していた……。
――――――――――――――――――
本文でレイが言っていたところの『』の部分はわざとです。あの部分の内容は後ほど明かされます!
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