第15話 奈落に眠る魔女
「今から語る話は口外無用だ。分かったな?」
「「はい」」
次々と秘密の情報を僕に流しているということは、逃がすつもりが無いということを暗に伝えているのかもしれない。
「この話の題は『奈落に眠る魔女・略』。1人の魔族の少女の生い立ちを記した書物である『奈落に眠る魔女』を私が簡潔にまとめたものだ」
魔女か……。関連性が見えてきたな。
「『奈落に眠る魔女・略』原作:セルフィア・ギアレス・シルフィエーレ.著『奈落に眠る魔女』」
……考えるのは一旦やめよう。今は話に集中しなければならない。
僕とソルデウスが集中して話を聴こうとする姿勢をとると、アル村長は静かに続きの言葉を紡いだ。
===
現在から約5000年前、とある人族の王国に二人の女児が誕生した。その双子の父親は国王、母親は公爵家の長女という位が高い者だ。
従来なら二人とも新たな王族として迎えられるが、そうはならなかった。なぜなら、当時は双子は忌み子とされていたからである。その上、双子の姉の方は人族の両親から生まれたのに魔女という種族だったため、更に忌み嫌われた。一方、双子の妹は種族が人族で、類を見ないくらいに優秀だった。国王は双子の姉を生まれなかったことにし、妹を大切に育て上げることを決める。それからの姉の生活は大変だった。双子が生まれてから1年後に母が疫病で死ぬと、姉は専属の女中1人と共に王城から追放された。死刑でなかっただけまだ良かったのかもしれない。
姉が追放された後、妹は大変悲しんだ。一晩中泣いて女中を困らす日が続いた。ついには宮廷魔術師達も駆り出され、精神を安定させる魔法を妹に使用することとなった。
その頃、姉は女中の働きによって何とか生きることができていた。女中は武術経験者だったので冒険者に就いて働き出したのだ。
そんな生活が5年続き、姉は6歳になる。この時に姉は冒険者として働き出した。当時の冒険者は実力さえあれば歳や身分に関わらず誰でも就ける職業だったので、6歳の姉は冒険者という職業に就くことができたのだ。
それから3年の月日が流れ、姉は9歳になる。その年も毎日が忙しかったが、充実した生活を送ることができた。だが、そんな日々は唐突に終わりを告げた。女中が魔物に襲われて死んだのだ。これは最近は魔物の様子がおかしいので警戒するように、と言われた矢先に起きた出来事である。
(原作では女中を失った悲しみについて綴られているが関係ないためカット)
一方、妹はおかしくなった魔物の対応に追われていた。魔物は強さや性質が変化し、知能が上昇しているのだ。
それから数ヶ月経つと瞬く間に国、いや、世界に一つの情報が広まった。その情報は「魔王の復活」という最悪のもの。しかし、なぜか復活した魔王は大人しく、侵攻を企む気配はなかった。おそらく魔族の数が少なかったからだろう。
魔王の復活から6年経つと、恐れていた事態が起きた。そう、魔王が動き出したのだ。魔王は眷属を生み出すことで魔族の代用にし、侵攻を進めようという計画を実行していた。
後に、その計画の実行には1人の魔女が関わっていることが分かる。彼女は自ら前線に立ち、魔王の眷属に指示を出すことで人族たちに大きい被害を与えた。
その魔女の正体はなんと……双子の姉だった。
彼女がどうして魔王側についたのかは、絶対に分からない。彼女は理由を訊く前に行方不明になってしまったからだ。
……こうして「魔女」という種族は人々から恐れられる存在となり、生きていること自体が許されなくなった。きっと魔女という種族は姿を隠してひっそりと生きているのだろう。
===
『奈落に眠る魔女・略』を語り終えたアル村長は考え込んでいる僕とソルデウスを見て口を開いた。
「深夜に分かったことなのだが、
……そうか、そうだったのか。それなら辻褄が合う。
5000年も前の話だが、魔女には国家反逆罪以上の罪を犯した。
「
ソルデウスが呟く。
「
「「ということになっている?」」
僕とソルデウスは同時に同じ言葉を発した。……偶然だからそんなに睨まないでくれ。
「事件の犯人はまだ確実に分かっているわけではないからな。
……何だか雲行きが怪しくなってきたな。
この話を聞いて
「
……やはり、逃れることはできないのだな。
*
『奈落に眠る魔女』には続きが書いてある。しかし、私は読むことができなかった。一体、なぜだろう……?
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近況ノートにパートリア村の村長である「アルダンティ(通称:アル村長)」とその弟である「ティグリス」のイメージ画像を載せました!
見ていただければ幸いです。
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