第10話 来訪は唐突に
そんな日なので、忙しさは増していく一方。だが、最近は実力もついてきて、ソルデウスとの連携も上達し、(手加減した)ステラとも良い勝負ができるようになってきている。まあ、それでも213戦中213敗、つまり僕たちは全敗しており、今でもなお記録を更新し続けている。
この記録を止める日が来ると良いな。そう思っていたら、コンコン、とドアノッカーを叩く音がした。誰か来たのだろうか?
「おーい、誰かいるかー。いるなら返事をして、扉を開けてくれ! あ、そういえば名乗ってなかったな。俺だ、俺! ゼルシスだ!」
やって来たのはゼルシスのよう。声も以前聞いた時と同じだし、確実に本人であろう。だが、このまま何も考えずに扉を開けるのはどうかと思うので、とりあえずソルデウスを呼ぶことにする。
「少し待っててくれ」
扉に向かってそう言い、僕はソルデウスの元へ向かった。今日はアル村長とメルさん、ティグリスは不在なので、ソルデウスは皿洗いをしているはずだ。朝食をとり終わってからもう20分ほど経っているので、皿洗いも終盤に差し掛かっているところか、終わりかかっているだろう。
そんな予測をしつつ、台所へ向かう。台所に着いた時、ソルデウスは流し台で木製の皿を拭いているところだった。
「ソルデウス。ゼルシスがやって来たぞ」
「ゼルシスが来た? それならレイが対応してくれ。今はちょっと手が離せないんだ」
そういうことなので、再び玄関に戻り、扉の鍵を開けた。
「おはよう、ゼルシス。1ヶ月振りだな」
「おはよう! 今日はシェンシアを連れて来たからみんなで遊ぼうぜ!」
シェンシアを連れてきた? どこにも姿が見えないが……。
「もう、ゼルシス。私たちは遊びに来たわけじゃないのよ」
透き通った声、というのだろうか。少し低めの美しい声がゼルシスの後ろから聞こえた。
「あ、そうだった。うっかりしてたぜ。……と、それはさておき、こいつがシェンシアだ」
「初めまして。彼の言った通り、私がシェンシアよ」
ゼルシスの背中に隠れていて見えなかったシェンシアが姿を見せた。艶があり瑠璃のようなショートヘアが美しく、透き通った菫のような色の瞳はどこか遠くを見つめているようだ。また、小柄な
そして、やはりと言ったところか、容姿が整っている。ゼルシスと並ぶと色や背の高さの違い、何よりも両者の容姿が整っているからとても絵になるであろう。
だが、僕の目を引いたその容姿ではない。身につけている衣服だった。……何と、白いブラウスにネイビーブルーのプリーツスカートを着ているのだ。髪と目の色さえ違っていれば、日本にいても違和感がないと思う。何というか、中学生の制服を着ているみたいな感じなのである。
そんな一風変わった衣服をどこで手に入れたのだろうか。……僕も変わった衣服を着ているし、ゼルシスも日本にあってもおかしくないパーカーを着ている。そして、ゼルシスもステラもそんな衣服を着ているので、本当に今更なのだが。なぜそんなことに気づかなかったのか疑問に思うほど、今までは何とも思わなかったのが不思議。
「こちらこそ初めまして。僕はレイです。……単刀直入に言いますが、丁寧な言葉遣いでなくてもよろしいでしょうか?」
「もちろんいいわ。これから長い付き合いになると思うし、よろしくね」
「ああ、よろしく」
とりあえず、挨拶は終わらせたので二人を家に上げる。
……単刀直入という言葉が通じた、か。そういえば以前にもゼルシスが「大船に乗ったつもりで」(ゼルシスが言っていたのは泥船だったが)と発言していたな。これは
衣服といい、言葉といい、今までは全く気づかなかった新しい発見が今日見つかった。なぜ今までは気づかなかったのか、なぜ日本や中国などに関わるものがあるのか、など謎が深まるばかりだ。
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近況ノートに「ゼルシス」と「シェンシア」のイメージ画像を載せました!
見て頂けると幸いです。
ゼルシス→https://kakuyomu.jp/users/nulla/news/16817330668175409008
シェンシア→https://kakuyomu.jp/users/nulla/news/16817330668175411496
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