11話

「おいお前。本部の場所をいえ」


 銃声混じる廊下の中で一人の男が話す。


 そいつはW・Aの一員で教師に変装している。


 SATの教師を銃口で脅し本部の場所を炙り出している。


「ひぇーわかりました。言います、言います。あそこら辺です」

「そう、あそこか! ご苦労! では腐りかけた玉葱の如く死ね!」


 廊下内には火薬を焦がした匂いが充満する。


「さーて仲間を呼んで集中砲火だ。|let'sGo! on vegetable《我が畏敬する彼女は花道に加わる》」


 男はニコニコしながら本部を探す。

 その頃SAT本部では千木楽ちぎら一人。


 「俺は最善のことを尽くしているのか」と考えながら、緊張をほぐすように書籍を読んでいる。


 もちろんSATのメンバー達には出動命令を指示している状態。


 SATに従属している兵達は連絡機を持っているのだが、ここ10年以上事件とかなかったので、忘れているSATメンバーもいる。


 そういう時は携帯にも出動命令を出していた。

 しかしSATメンバーが一斉に出動しているので千木楽は本部を護衛している。


 彼が読んでいる書籍の内容は人類に秘められた第六感について。

 別に本人が忘れやすくて見ているわけではなく趣味でみている書籍だ。中身は以下の通り。



 第六感とは視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚の五感の超えるものである。

 だが第六感にはいろんな種類がある。


 第六感を暴走した状態を『カロルナ』と呼び、第六感を暴走せずに純粋な強化形態を『サナティオ』と呼ぶ。


 第六感を失うことをSleep Messiahスリープメシアと呼ばれるも全ては名前が決まっておらず人々の呼び方次第で、長く短く学者によっては自由に決めてある。


 でもポピュラーな言い方はこの書籍の呼び名が多い。……と書いてある。



 漫画感覚で千木楽は読んでいると本部に突然教師が現れる。


「おいお前! ここに居たら危ねえからな! もしかしたら次の瞬間W・Aが撃ち放った弾にお前の頭めがけてトマトとスイカを同時に割ったような状況になるぞ! だから早く逃げろ!」と慌てて言う。


「大丈夫ですよ、先生。絶対に死にませんので」


「なら良いが。それよりこんな事態だっていうのに、近接戦闘本や人間の隠された能力等を読んで先生は感心した。お前がこんな勉強熱心だったとは……」


「ありがとうございます。そういえば、別の先生からの命令で生徒を全員出動させましてここにいるのが俺しか居ませんが……。良かったら一緒に逃げませんか?」


「あぁその方が良い。生徒も他の先生も心配だが、まずはお前から先に救出だな」


「あぁそうだ、言い忘れて事がありました先生」と千木楽が言うと。


「なんだ言ってみろ」と先生の口が動く前に千木楽は相手に銃口を向けた。


「先生達は俺のことお前呼ばわりしないし、W・Aの名は知らねえよ」と一言を放ち。銃音の指揮棒を振ると先生に扮した人が息を絶える。


 千木楽は心の中で(こんな状況なのに呑気に本を読んで勉強熱心とか言う馬鹿はいないわ)と述べると、死んだメンバーの1人に向かって、雨粒の如く何重にも銃弾が飛んでいるのを見逃さなかった。


 千木楽は弾の形状から見ておそらく改造されたライフル系かと推測する。


 すると案の定、改造アサルトライフルを持ったテロリストの一味が四人出てきて。


 「職員室はどこだ」やら、「金庫の場所を言えさもないとこのライフルが火を噴く」とか、くだらない事しか質問しないので、千木楽は少し不機嫌になる。


 少し様子を見て後から、敵の仲間が来ない事を確認すると、素早く近接格闘を繰り広げた。


 テロリストに向かって首を締めながら相手の心臓に撃ったり、喉を潰して目をえぐったり、銃で手足の動きを止める。『こめかみ』目掛けて殴り続け、改造されたアサルトライフルを奪って腹に溜まるような銃弾をおみまいした。


「生徒に学校の金庫の場所など知るわけねぇよ。アホ共」

 と千木楽の心の声を出しながら。


 テロリストを処理し終えると、小型連絡機からショッピングモールにいる先生の連絡がくる。


 どうやら、SAT以外の生徒の七割、教師の半分ぐらいが避難していることがわかった。


『七割』や『半分』と言えどこの学園は教育費と入学する倍率が高く、一五人に二人しか入れないので生徒と教師合わせて数百人弱ぐらいが避難していると考えても良い。


 SATトップはみんなが無事を知るとホッと胸を撫で下ろすが、どうやら学校を訪問した人達が指示を出し無事にショッピングモールへ避難したと言う話だった。


 この話に千木楽は違和感を覚える。


 今の段階で学校の中のとこで避難するよりもずっと良いが、それでもテロリストがウジャウジャいるのに学校外に移動すること自体がおかしく。


 最悪数十人は犠牲が出てしまうケースもある。

 しかも警察にも連絡しないとなると……。


 と千木楽が深く考えてたの同時に学校からの放送が流れる。

 それは隠れて移動中の惺夜せいや達の耳にも入ってきた。


「紳士淑女の諸君、突然な訪問で申し訳ない。単刀直入に言おう。『私たちは三つだ』、富豪と獲物と名誉が欲しい。富者の仔羊からざっと二億貰えれば、この学園の他の所の侵入や外国へ飛ぶことぐらい容易いだろう。だが急にこの事を言葉にしても、共感は得られない。」


 龍康殿の声が学園中に響いてく。トーンが鉛の様に重く、とても丁寧な言葉遣いだ。安直に皆このテロリストのボスか、とSATの人達は一瞬考える。


 そして龍康殿りゅうこんでんは少し息を整えてから、手榴弾のピンを抜くような衝撃な事を言う。


「だから、人質を作った」

 とそのまま立て続けに話す。

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