51話
51話
──その頃、千木楽は教室を出て、火薬の残り香以外何もない校舎の中で司咲達を探す。春花の思いと共に。歩いていたら、目の前に男性がこっちに向かっていた。
「おやおや、これはこれは、元メンバーじゃないですか。こんにちは。もしかして私を探していたのかな? ありがとうございます」
目の前には龍康殿がいる。しかし千木楽は無視をする。
「うーん、無視をするのは良くないですよ。陰湿でダメな大人になってしまう」スーツ姿の彼は、黒髪の少年に声をかける。
「……お前テロリストのボスだろ? お前らこそ陰湿でダメな大人たちじゃないのか?」
「ハハハ、面白い冗談だ。君は大人を喜ばせる会話術を持っていますね。素晴らしいですよ。いい大人になれそうです」
「冗談……? 現状を見ろ! この学園を滅茶苦茶にして、火薬の匂いが充満にしたのはどこのどいつだ! 無関係な生徒や先生を殺したのは誰だ! 俺らの仲間を洗脳させたのは……もうわかるだろ。全部お前のやったことだ、これは冗談でもなんでもねぇ」
龍康殿はムッとした表情をする。怒りが湧いたわけでも悲しんでいる感じでも驚いた表情でもなく。ただなるほどという気持ちであった。
つまり千木楽の説教は、龍康殿の耳から通り抜けて、どうでもいい言葉になっている。
「まぁいい。おれは朝霧を探すわ。じゃあな、後で戦える時に戦おう」
「ええ、いいですよ。私には絶対に勝てませんがね。ところで朝霧というのはどなたでしょうか?」
「……お前に塩を送る必要ある?」
千木楽は呆れながら言う。
「もちろんです、さっきから動いて、塩分不足で熱中症になりますよ。でも水無月なのでまだ早いですけどね」
「そうだな、もういいか? 俺は他にも西園寺や天羽、そして“柊”も探さないといけないし」
“柊”の言葉に龍康殿は瞳孔が開き、怒りが湧いてくる。そして千木楽を殺しそうな勢いで向かい、胸ぐらを掴む。
「おい! その柊ってやつはどこにいる! あいつは人類の汚点で私たちの評価に泥を塗った名前だ!!」
「さぁな、自分で考えな。てか、お前も怒りという感情があるんだな」
「これは怒りなのではない! 忌子を排除するための防衛感情だ! 柊って奴を殺さないとみんなを神にしていても、幸せになれない!!」
「ほう、だったら俺のことを幸せにして見せろよ。俺は今、仲間を殺し続けて胸糞が悪い」
「ハハハ、あなたはまだ幸せになってないですよ。なんだって“柊”という奴がいますからね」
「柊は関係ねぇだろ!! 俺を不幸にさせたのはお前らテロリストだ!!」
「……いや、大ありです。何故ならあいつのせいで、人々は悲しい思いしていますから。伽耶と言う女も対象です」
「知らない人を出すな! それはお前の考えていることだろ!」
憤然している龍康殿。今にも千木楽を暴行しそうだ。
「わからないと言うな! あいつらのせいでな、神になれなかった犠牲者がいるんだ! 私の使命で神にしようとしても妨害してくる……。私はそれを阻止するため生きているのだ! 君にはそのことを少しずつわかるように、努力していい大人になって欲しい」
「うるせえな、一発撃ってもいいか?」
千木楽は拳銃を取り出す。しかし。
「う、なんだ。この気持ち悪い感じは……!」
龍康殿の禍々しいオーラで撃てなかった。
「おや? 私を撃てないんですね。まぁ子供が大人に敵わないですから。当たり前なことです。気づけてよかったですね。それでは私は柊というやつを殺します。そして、人々を幸せにさせます」と乱暴に胸ぐらを掴んだ割には優しく離す龍康殿。
そして、千木楽のことを去るように向かう。良くわからない行動の不気味さに、恐怖を知った少年は、一歩も動けなかった。
「……今まで見たことない感じの人だ。俺は強いと思っていた。しかし、こいつは俺だけでは勝てない……。五人がかりでも勝てるかどうか……」
千木楽は怯える。過去に無かった出来事だ。
──早歩きで廊下に足をつける龍康殿。
(……まさか呪いの子が、この学園にいるとは。絶対に殺してやる! 奴のせいで神になれなかった人がいることを言わなければ!)
どんどん、どんどん、どんどん。と廊下をかける。
臙脂色のスーツを着た男性は血眼で柊を探す。
(穢れた血筋の子がここにいるとは幸いだ。忌子を殺すために作った弾丸もあるからな)
と龍康殿の懐からルージュ色の弾丸が光る。
(|Ilex_Aquifolium_Annihilatio《穢れた自己犠牲に胸を当てる鼠》これを私に取り組み強化する。
龍康殿が廊下を隅々まで探していると、惺夜たちを見つけた。彼は惺夜たちを睨みつける。
「少し聞きたいことがあるが、いいか?」
龍康殿はそういうと惺夜は不機嫌そうに。
「……いいわけねぇだろ。今から、負傷してそうな仲間を助けにいくからな。じゃあなテロリストのボス」
と言い、惺夜は後ろに振り向き、その場から去ろうとする。
──青髪少年の背後に遠くから、拳銃を構える龍康殿。
「柊と言う奴はどこにいるんだ……!」
廊下中に龍康殿のドスの効いた声が惺夜達の鼓膜から聞こえる――。
龍康殿は惺夜の背後に拳銃を構えた状態で怒鳴るように言う。
初老のボスは十分前まで穏やかな顔から形相に変わり、三人を睨みつける。
司咲とつばきは怯えている表情。彼女の口が開く。
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