最終章
VS龍康殿
52話
「柊……と言う人はここにいない。今ショッピングモールへ向かっている。だからこの学園から離れてください!」
つばきは青髪の少年を庇うように嘘を言う。
「嘘はいけないですよ、元メンバーのお嬢ちゃん。この中にいるはずです。もしかして柊って奴は君かな?」
惺夜はつばきの肩を乗せて。
「柊って奴は俺が知っている」彼は龍康殿を睨みながら言う。
「ほう、そうなんですね。学園兵隊さん。それでどの人ですか?」
「それは俺だ! 俺の名前は柊惺夜だ!」
「……そんな感じはしていましたよ。私たち組織と弟を奪った女の
龍康殿は銃弾を発砲させ、威嚇する。廊下の床に銃弾の穴が開く。
「貴方のせいで、SFの元メンバーが苦しんだんですよ。懺悔しなさい」
「司咲とつばきがそういうこと考えるわけねぇだろ! イカレ信者!」
「内心思っているかもしれませんよ。勘の悪い人ですね」
龍康殿の発言につばきと司咲は憤怒していた。
「私が惺夜くんのこと恨んでなんかないわよ! 勝手に思わないでください!」
「てめぇは惺夜をなんだと思っているんだ! 俺らのダチなんだぞ!」
親友達は抗議するように話している。
「ほら、元メンバーの子が嘘を言っている。なんて哀れなんでしょう。私が責任者として恥ずかしいです。お二人ともに申し訳ありません」
よくわからない発言に、司咲はキレそうになる。
「いい加減にしろよ! さっきから意味わかんねえ御宅を並べやがって、元々お前らが学校を襲って……」
龍康殿は司咲を鋭く睨む。オーラがどんどん闇に堕ちる。新月の夜のようだ。
(……だ、ダメだこれ以上言えば、何をしでかすかわからない。)
「どうしたんですか? あなたは柊と関係ないはずですよ。もしかして私が怒鳴ったせいですか? そうですか、感情的になってしまい申し訳ありません」
初老男性の感情の振り幅がおかしくなっていった。
そのおかしい態度に、惺夜は
「感情的になっただぁ? ふざけるな!」
「それは感情的にもなりますよ。だって本当に恨んでいますから、なのであなたを神にするのではなく、始末して苦しんでいる人達を解放したいと思います」
「なんで俺を殺すと苦しんでいる人が解放されるんだ? それはお前らの妄想だろ!」
青髪少年も感情的になり、テロリストのボスは反省の顔にする。
「確かにそうでした。私はつい柊の子と聞いてイラついてしまいました。そこは私の悪い癖です」
「だろ? だったら俺を殺すのはやめろ」
「なので、感情的にならずに、冷静に柊の子を始末することに決めました」
龍康殿はにっこりと笑う。目が笑ってない、作り笑いだ。スーツ姿の彼の拳銃から弾丸が走る。
惺夜の頬にかすった。頬から鮮血が出ている。少年は歯を食いしばり。
「司咲、つばき、逃げろ。ここは俺が引き受ける」
彼の発言に、司咲は驚きを隠せず口を動かした。
「?! やめろ、そんなこと! 俺らで戦おうぜ。三人なら勝てる」
「俺もそうしたい。だけどダンディ厨二病の安否が心配だろ? 二人はあいつを助けてこい」
彼の発言が気にくわなそうに聞いていたつばき。
「でも惺夜くんが……」
自己犠牲の提案を出した少年を危惧する赤髪少女。
「俺はいい! 司咲、つばき。約束守れなくてすまない! ここは俺に任せといてくれ」
惺夜はつばき達に目で訴える。
「……わかったわ。司咲くん、天羽さんのところへ行きましょう」
「おい待って! この惺夜とテロリストのボスはどうする!」
心配する司咲、だが、テロリストのボスは、なだめるように話す。
「大丈夫ですよ、元メンバーさん。これは私たちの問題です。無関係な方はお引き取りくださいませ。もし戦って貴方達に危害が及んだら、私たちの責任です。どうか仲間を助けてやってください」
謎の優しさを見せる龍康殿に、武者震いが止まらない紫髪の少年。
(なんでこんなに余裕あるんだ……? 俺らのことを部外者扱いしか思ってない……?)
「どうしたんですか? 早く助けないとお仲間さんが大変な目に遭うかもしれませんよ。私の仲間も心配なので後で連絡してみます」
「くっ! わかった。つばき遅くなってすまない。天羽さんを助けに行こう」
「うん、惺夜くん。どうか生きていて」
「……大丈夫! 俺はちょっとやそっとじゃ死なねぇ。安心してダンディ厨二病を助けてやってくれ」
惺夜は大きく息を吸い。そして吐くように言う。
「司咲、つばき、待っていてくれ。俺は学園に現れた害虫を駆除するから。絶対に生きてドーナツ屋でたらふく食おう」
青髪少年の目は綺麗に光っていた。純粋無垢で、子供のように好奇心旺盛な瞳。それをみた、つばきは少し思う。
(惺夜くん、ごめんね。また力になれなくて。天羽さんの安否を確認したらすぐ助けるから)
──彼女達は凪を助けるため廊下を駆け、つばきは胸に手のひらを置き、少し祈る。
赤髪少女の心臓はどんどん高まっていく。
(でも惺夜くん。この戦いで命を落としそうな予感がするの。あのテロリストのボスは惺夜くんより強そうだし。貴方なら自分を犠牲にして、ボスを倒そうとする危なっかしい人だから)
つばきは心から深く希求する。
(もし私に力があったのなら、絶対助けに行くからね。これは私の本音よ……)
凪の場所まで向かいながら司咲は彼女を心配していた。
「つばきどうした? やっぱり惺夜が心配か? 俺も同じ気持ちだ」
「ええ、心配よ。あの人のことは信用しているし、話していて楽しいから。その人がいなくなると寂しくなるの」
「ふーん、やっぱりお前は惺夜のこと好きだろ? まぁ俺も友人として好きだけどな。気が合うし」
「な、全然違うからね! 唯一の友達だから生存して欲しいの! SATとしては違反しているけど」
「ハハ、またからかっただけさ。どうだ、緊張はほぐれただろ? 惺夜がいなくても俺はつばきのこと友達だと思っているぞ。もちろん下心なんてない」
「そう言う人ほど、下心あるんですけど。エッチ」
「ないから! 信用して! つばきは惺夜の友人だからつるんでいるけど、意外と面白くて楽しいからさ。三人でドーナツ屋に行けるといいな」
「う、うん。そうね。私は行けると感じるの。身勝手な考えだけど」
「行けるさ、俺らで美味いもん食いに行こうぜと約束したし。つばきも行くか? ドーナツ屋とは別の店だな」
「……いってみたいな。惺夜くんと司咲くんがいればどこにでも」
「どこにでもって、地獄までもか?」
「……それは秘密」
「秘密にするなよ! おい! まぁいいんだけどさ」
──話しているうちにグラウンドへ着いた。
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