40話
司咲は千木楽の命令を無視して、ゆっくりと惺夜の近くまでいく。そして倒れた彼の胸に手をかざすと青髪少年の身体もみるみる回復していく。
「……命令を無視するなら、こっちから行くまでよ!!」
千木楽は拳銃を構えながら向かう。
司咲も尽かさず銃を取り出し、弾が光の速さで敵の左右の手の甲を正確に狙い撃つ。
洗脳された彼は痛そうだ、悔しそうに紫髪の少年の方を見続ける。
同時に惺夜の意識も戻り始めた。
「かっは! なんだ? 俺生きているのか……」
正義感の強い少年は、司咲の方を見ながら。
「司咲なんだ、その顔の模様は、お前が傷を癒したのか……? なんで、まぁそんなことはいい、俺たちで千木楽さんを正気に戻そう」
「……いや惺夜、ここは俺一人で行く。お前はつばきと天羽さんと永瀬先輩を助けてやってくれ」司咲は真剣なまなざしで伝えた。
「……あぁ、助けたいのは山々だが、今はダンディ厨二病やつばきの居場所がわからない。だからといって、いちいち学園内を探すのは、ちと時間がかかりすぎる」
惺夜は心配そうに言う。
「永瀬先輩と天羽さんはこのフロアで戦っている。もし、軽く探してもいなかったら、別のフロアから探してくれ、多分二人がいると思う」司咲は目を瞑り、話す。
青髪の男は、「わかった、それじゃいってくる。」と言い、教室から出る。
そのとき、千木楽は「逃すかよ! SATの犬!」と言いながら追いかけようとするが、司咲は敵の目の前に立ち、つかさず腹を平手で打つ。
(なっ速い!)千木楽は目を丸くし驚く。
「さぁて、千木楽さん、ここからは私の番だ。間髪を入れずに首を狙う……、絶対正気に戻しますからね」
「はは、何言っているんだおめぇ、俺は元々正気さ。おめぇこそ、頭がおかしいんじゃねえのか?!」
司咲は少し黙る。
「──千木楽さんがそんなこと言うわけないだろ!」と覚醒した男の子は怒鳴り散らす。
両者銃を構え、
さながらアクション映画のワンシーンのようだ。
興奮しているのか、千木楽の動きが大きく動くのに対して、司咲の動きは微量だにせずただ静かに最低限動く。まるでそよ風泳ぐ草木のようだった。
(見える。SATトップで洗脳している千木楽さんの動きが予想できる!)紫髪の少年は少し動揺しながら微々たる動きをする。
「はぁはぁ、嘘だろ……! 俺の動きが読めるのは! なんでだ!!」
「理由はわかるか? 見ればわかるだろ、私は覚醒したんだ。それ以外の理由なんてないじゃないですか?」少し口角を上げる司咲。
「だって今のあなたは、千木楽さんに似た誰かだからだ。さっさと千木楽さんを返せよ。チョーカー野郎」
「ふざけるな……、ふざけるなよ! 青二才がぁ!!」
千木楽は司咲に襲い掛かるも攻撃した瞬間、謎の力を持った少年は雷神のように避ける。そしてSATトップの背後に立つ。
「なんだよ、本当に。お前はもう邪魔なんだよ!!」千木楽は必死そうに無意味な暴言を吐く。
「二度と喋るなよ、キャラが崩れる」また司咲は静かに切れる。
千木楽の動きを観察しタイミングを見据え、司咲は彼の首筋にあるチョーカーめがけて弾丸を撃つ。
黒髪の敵は首筋をガードするも遅く、弾丸はチョーカーに当たる。
パリンと音が聞こえ、千木楽は前に倒れた。
「千木楽さん。これで目を覚ましたかな? おはようございます」さらっという司咲。
そう覚醒した司咲は千木楽を助けたのだ。
その覚醒名は【サナティオ】と呼ぶ。
龍康殿が追い求めていた
千木楽の目は少しずつ開き出す。
龍康殿は学校内の階段で休んでいた。
彼はグラウンドに近く外の景色を眺めている。
もちろん凪とケルビム……つばきと戦っているところを。
なんで休んでいるかで言うと疲れたからもそうだが、司咲の“サナティオのオーラ”で気が滅入ったからだ。
「……どうやらNaSOEに目覚めた人物がいるそうだ。私は嬉しい限りだよ」
龍康殿は微笑む。
「本当に強力で、腕に自信がある私でさえ崩れ去りそうなオーラだ。もう一度洗脳させれば私の組織は完全無欠になる」
少しフラフラしながら立ち上がるテロリストのボス。
「さて、私はもう少し学校探索に行こうか。後一人は欲しいところ、わたしと射守矢さん、そして、NaSOEを持った二人さえいれば、強力な別組織の総力を半壊し、洗脳できる」
少し体調が戻り通常状態の龍康殿になる。
「……多分このオーラで覚醒する人がもう一人出てきそうだ。私はそれに備えなければ」意味深なことを言うスーツ姿の彼。
それは吉と出るか、凶と出るか、わからない。
「さて、私は神になる存在なのか、天使なのかは、探索しながら考えてみますか。きっと答えは出るはず」
コツコツと学校の隅々をみる、龍康殿は二周目の学校を探索する。
凪が戦っていただろうであるフロアを隅々まで探した惺夜。しかし誰もいなかった。
(だ、誰もいない……! 早くしないとダンディ厨二病やつばきが……)少年は少し焦る。
しかし、次の瞬間、こう感じる。
(いや待てよ。もしここに戦っていたら、多少、音は聞こえるはずだ。俺がきた時は聞こえなかったからまだ探してないところと言ったら……。グラウンド周辺にいる可能性は高い)
だんだん焦る惺夜。まるで田舎のバス停の終電ギリギリ走るように。
(違っていたらどうしよう! でも時間がないから賭けるしかない! まだグラウンドは見てねぇからな!)
そのとき、龍康殿とすれ違ったが惺夜はそう言う時間がなかったのだ。
「彼は、なんで急いでいるんでしょうね。あぁそうだ、十四時にショッピングモールの避難している人を皆殺しにするお約束をしていましたね。すっかり忘れていました」
風格のある初老はハハハと笑うと。
「少し早めに神の幸福にしてもいいんですけどね。後で射守矢さんに伝えておきますか。でもまだ十三時三十二分。もう少し待ってみますね」不気味な笑みを浮かべる龍康殿。
「自分たちのおかげで人々が幸せになるならそれが私の本望です。絶対に私たちが皆さんを神にさせますね」
今、龍康殿は自分の気持ちを抑えつけている。
(私は神になりたい。私は神になりたい。私は神になりたい。なりたいなりたいなりたい)と気が狂うほど思っている――。
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