ショッピングモール
60話
「撃つ……? と言うことは警察さんね! 良かった〜。助かったわ!」
テロリストの女はその女性の顔を見る。見た目は若々しいが歳いってそうだ。まるで美魔女。そう考える。
「……なんでこの状況で警察だと思うのよ。違うわ。私はえーと、まぁ悪い人ってこと」
「悪い人〜。私悪い人見るの初めてなんですよ〜。なんで運がいいのかしら〜」
銀髪女性はドブを見るような目で質問する。
「この頭で生き残っているのは奇跡のようね。とりあえず人質になってもらおうかしら」
「人質?! なるなる〜。いやぁ、生まれてから人質になるのは初めてだな〜」
「そう、良かったわね。名前は?」
能天気な美魔女は表情をかえる。
「……なんで名前なんか言わなきゃいけないの? 別に人質と呼べばいいじゃない?」
鋭い声だ。しかし表情を変えたと思ったら次の瞬間。
「私のことは人質のひーちゃんと言ってくれたら嬉しいな〜」と元の能天気姿に戻る。
まるで頭のおかしい人だ。しかし、フィアナはその顔に見覚えがあった。
顔は少し変わっているが、彼女は
龍康殿が追っている惺夜のお母さん。ドレスを着ているテロリストの女は人質と言いながら彼女を殺すつもりでもある。
「んじゃ、ひーちゃん。私のそばにいてくれるかしら? 少し離れるだけでもあなたの命はないわ」
「わかりました! 悪い人! 私行きたい場所があるんですがいいでしょうか」
「ダメだ、とりあえずカートも置いてくれ。黙って私についてくれたらいい」
「いやだ! いやだ! いやだ〜! 私、古本屋さんにようがあるの〜」
「状況をわかっているのか? お前。自分の命が関わっているんだぞ」
フィアナはいつもと性格が違うように脅す。無理もない、相手は殺すべきターゲットだからだ。ここではわざと強い言葉を言わなければならない。自分のほうが上だと思わせるために。
「いやだ〜。古本屋さんに行きたいよ〜。今日は買いたいものがあったのに〜」
「……そうか。それだったら、殺すしかないな」
フィアナは銃弾を込め、筒先をひーちゃんと名乗る伽耶に向ける。能天気の彼女は真剣な表情を見せた。
「ええ、いいわ。殺しても。私には何も価値はないからね……。まだ人質として生かした方がいいかもよ。私はそのぐらい古本屋さんに行きたい」
「――まさか、ここまで気持ちが揺るがないと考えたが、わかった。とりあえず今は生かしてやる。一旦古本屋に行け。私も同行するけどな」
「……ありがとうね、悪い人さん」
「どうも、ところで古本屋へ何を買うんだ?」
「うーんと、私、古本の匂いが好きだから臭い本を買うの。あとショッピングモールの雰囲気も好きだから日課にしているんだ」
ひーちゃんのよくわからない発言で一旦切れそうになるも少し抑える。
(なんなの! 結局
「……何しているんですか? 悪い人さん。早く古本屋に行きましょう」
「……わかったわ。すぐ付いていく」
フィアナは人質を連れて古本屋に行く。古本屋は四階にあるようだ。すぐに向かった。
ひーちゃんは鼻歌混じりに歩く。まるで一時間前SATに足を運んだフィアナのように。
テロリストの女である彼女は自分のことを差し置いて嫌な目で見ている。
(今日はラッキーだと思っていた。つばきちゃんという可愛い子を見つけたり、久しぶりにSATへ行けたりで。だけどまさかショッピングモールでこんな人と一緒に歩くとは)
フィアナは少しため息をつく。
(……もし、海斗が見ていたらこの状況を見ていたら笑うかしら? その前に演じている私を見ていたら笑うかもね)
銀髪の女性はクスッと笑う。
フィアナがまだW・Aと名付ける前の仮の組織の頃。龍康殿と彼女そして千木楽海斗の3人だけで結成された組織である研究をしていた。
覚醒者の目覚め方、柊家を始末するために作られた能力を継承する弾丸。強い人を洗脳させるSF。その三つを研究や実験をしていた。金で雇った研究員。そして
研究を進めていると、覚醒者の目覚め方は洗脳させることによりNaSOE、別名サナティオに覚醒することが発覚した。
人体実験は失敗続きだ。
能力継承する弾丸はモルモット達にとって、刺激が強く暴走する。
SFも洗脳が重くなり昏睡状態になりやすく。龍康殿も半分諦めながら幸福を感じていた。
「とても、お辛い実験体になってまで、我々無名の組織のために神へなってくれたことを感謝します。喜んでくれてとても嬉しいです。私もとっても幸せですよ」
ボスの歪んだ発言をフィアナは隣で聞く。
「ええ、私も嬉しい限りです。私自身幸せになりたいですよ」
「射守矢さんの幸せは願っていますが、貴女は大切な天使です。我々と一緒に人々を神にさせてください。それも私の幸せです」
「……龍康殿様が良ければ私も嬉しいです」
銀髪の女性は心に満ちている。命の恩人である龍康殿に幸せと言ってくれたからだ。
「射守矢さんも疲れているだろうし、少し休むといいですよ」龍康殿は柔らかくにっこりと笑う。
「わかりました。ありがとうございます。龍康殿様」と、彼女は自分の部屋に向かった。
すると、誰か肩を叩いた。フィアナは知っていた。振り向くと銀髪女性の頬に指がぷにっとつつかれる。
「引っかかった」
お茶目なイタズラをしたのは千木楽海斗。そのイタズラにフフっと微笑むフィアナ。
「海斗……まだそんな子供騙しみたいなことをして」
「いいじゃないか。俺ら古参だろ? 元SATメンバーだし」
彼女は前を向いて、海斗と一緒にフィアナの部屋に向かう。
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