38話

「私たちはあなたを救出するため。案内するためにきました、さっどうぞ校門まで」


 また別のSFが喋る。


 少年は意味がわからなかった。

 何で敵であるテロリストの一味がシンジを助けに来たのか。


「僕たち三人では足りないのでしたら、仲間を呼んで加勢しますよ。何人、何十名でも……」

 シンジは少し迷って。


「いや、三人で大丈夫だ。よろしくな、よくわからない奴ら」

「スレイブファイター……SFでもいいですよ」


「んじゃ、スレファイでいいか?」

「……まぁなんでもいいです」


 そのまま校門まで進むシンジ達。しかし、彼はまだ疑っていた。


(絶対に罠だ、こいつらはおれっちを騙し、後で処刑するつもりだ。バカなおれっちでもわかる! 学園を脱出したらおれっちは逃げる。ショッピングモールに避難しても意味ないから別方向だな)シンジはどんどん深く考える。


(まてよ、別方向に逃げても、相手のほうが強いから逃げられなくて死ぬのでは……! おれっちどうすれば……)


「何かお悩みでも?」一人のSFはシンジに声をかける。


「!? いや何も、帰ったらゲームしたいなーと思ってさ」


「……そうですか。あと二メートルですので、早く攻略できますよ。なんのゲームをやっているんですか?」


「聞いて驚くなよ! なんとTPSとアクションRPGを組み合わせたゲーム。その名も『トゥーン・ゼノデュアル』! 可愛らしいデザインに骨太な内容で、ちょーぜつ面白いゲームさ」

「なかなか良さげですね。あとそろそろです」


(……なんか機械と話しているみたいで不気味だな。実際、このゲームは遊んでいるし、好きなんだが。時間稼ぎとしては効果ないな。まだ警戒心を高めないと)


 そうこうしている内にシンジが無傷のまま校門まで辿り着いた。


(本当に護衛してくれたんだな。途中から裏切ることもなかったし、安心と言えば安心だが、まだしこりはある)


「ありがとうな、スレファン達! これでおれっちは、無事にここから出られる! じゃあね!」


 SF達に向かって挨拶をする。


(早く逃げ出さないと、キザみ海苔に申し訳ない! 俺が無傷のままで脱出しないと……)

「……ねぇ、ボク。私の楽しいことしない?」


 校門の外に赤いドレスを着た女性と数十人のSFが立っていることをシンジの瞳に映る。

 ニヤリと彼女は笑う。


「……楽しいこと? なんだ! まさか、おれっちを始末……」

「うーん、貴方にとって始末は楽しくないわよ。それよりも楽しいことよ」

「なんだ?! 言ってみろ!」


「私の体を好きに触ること」フィアナは不敵な笑みを浮かべる。


 流石のシンジも(これはハニートラップだな、健全な男子高校生でもわかる。おれっちがこの人をさわっている間に、スレファンからの攻撃で、おれっちの命が危ういことに……。待てよ“おれっちのいのち”って韻踏んでいるな)と懐疑の念を抱く。


 頭を働かせる男子生徒は騙されたフリをする。


「え?! さわっていいの? やったー。でもどうせ、制限あるんだろ?」


「ううん無制限でフリーよ。身体のどこかさわってもいいわ。貴方の興味ある部分でもね♡」

「本当に?! どこでもいいの?!」


「ええそうよ、私は何もしないわ。もちろん、私の手で貴方を血で染めることもしないから安心してね」


「だからなんだ」シンジは真剣な目をし、フィアナに訴えるように目を鋭くする。


「まさか、おれっちを、お前の身体如きで許そうと思うのか? お前はテロリスト、おれっちは一般人。どう考えても罠しか見えない。こんな状況で生み出す答えは一つ、断ることだ。じゃあなお姉さん、おれっちは、自力で女の子の体を触るよ」


 フィアナは口を尖らせ「ふーん、そうなんだ。少しいいことを教えてあげるね」

「なんだ? まさか、いやらしいことじゃないだろうな? 女狐」


「このフード姿の人は、貴方達を守ってくれる学生兵隊SATよ。今は洗脳させて龍康殿様や私の思いのままに操っているの。あとはわかるよね」


 シンジは冷や汗を一滴一滴かく。まるで曇天後の小雨の様に。


「洗脳……よくわからないがつまりおれっちを処刑……」

「いや違うわよ、SF達、準備して」


 すると洗脳された少年少女全員がナイフを持ち、自分たちの首付近にナイフの刃を立てる。

「どうする? 貴方が断ったから、SATメンバーが首を掻っ切って死ぬことになるわ。別に貴方が悪いってことないわ、紳士的で好きになりそうですものー」


(やりやがった……! この女狐、最初っからこれが狙いで……!)


「悩んでもいいけど、私の指揮棒で今すぐSAT崩壊までできるのよ。でも好きなペースでいいわ」


 シンジは少し悩み、落石の岩よりも重い口が開く。

「やっぱ、乳揉みたいから。お姉さんの身体触るわ」ニコッと笑う健全な男子生徒。


「あら、正直なのね。でも健全的で可愛げあるわ。でも私以外の人にはやらないでね、普通に痴漢で捕まるから」


 シンジの発言には下心はなく、ある作戦を立てている。

 それは自分の本当に始末しないかの武器を探し当てること。


(武器を探さなければ。もしかしたら隠し持っているはず! だからハニートラップに引っかかるフリして、おれっちが安全の立ち位置なのか確認しないと)


 シンジはセクシーな女性の身体を触りまくる。


(どこだどこだ? 安全だと良いが……)


 胸以外にも触るが、武器らしいものはなかった。


 つまり彼女は凶器を持ってなく、本当に始末する気はないらしい。


「ところで貴方の名前は何ていうの?」


 少年は戸惑ったが、時間稼ぎのため名前を言う。


「下の名前でも良いか? シンジっていうんだ。よろしくね、お姉さん」


「ええ、よろしく。私も下の名前で言うわ。フィアナよ、頭の片隅に置いといて良いわ」

(……フィアナか、覚えておいて、誰かに伝えないとな)


「ところで、もう充分かしら? また触っていてもいいけど」

「あぁ、おれっちは充分だぜ、これで一生分は触ったかな?」


「あら良かったわね〜。これで満足なら私も嬉しいわよ〜」フィアナは少年に投げキッスをする。


「もしかしたら、ボディチェックで武器を探していたなんて思っていたら殺していたわ」


 空気が一変する、シンジは脂汗をかいた。そして平常心でこう伝える。


「いやいや、そういうことしないぜ。ただ揉みたかっただけだから。んじゃ、おれっちは避難してくるぜ〜」


 シンジは内心、(やばいやばいやばいやばい、バレるところだった。こんな緊迫した空気で異性の身体触っても怖い雰囲気だろ……)と焦っていた。


 シンジは校門から出ようとしていた。


「お姉さん身体触ってくれてありがとう。一生の思い出にするわ」


「ありがとうね、ちゃんと避難できると良いわね〜」


 微笑む、銀髪の女性。


「これからまた一生分の思い出になるわ」


 次の瞬間、フィアナは不気味な笑みを浮かべる。


 すると、男子生徒の首からは、黄葉秋風吹かれる夕焼けのような血が噴き出してくる。


 首を切ったのはアーミーナイフを持った、誰も知らない年配の男性だ。首にはSFが装置されている。


「あがッ?! なんで」彼は横に倒れる。


 シンジの前までドレスをきた女性は歩き、仁王立ちで立つ。


「ごめんね、あなたは人質にするため。罠を貼っておいたのよ」


 シンジは首を押さえながら話した。


「くっ……フィアナさん、何もしないと言っていたんじゃ……」


「あら? 私は何もしてないわよ。やったのはSFで洗脳させた一般の方。もちろん武器は持たせてね」


 年配男性が持っていたのは、彼女がさっき拾ったナイフだ。


 フィアナは先に回って、一般人を洗脳させて待ち伏せしていたのだ。


 自分から処刑しないのは、相手を安心するためと、単純に銀髪女性の余裕を持たせて不安感を煽る目的だ。


 もちろん、テロリストの女の趣味を入っている。


「射守矢様、目的者ターゲットの首を切りました。次の命令をお下しくださいませ」年配の男性はボイスチェンジャーの声を漏らす。


「どうもお疲れ様 あなたの次の命令わね……」

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