44話
惺夜とケルビムはグラウンドから離れ、学園の校舎周りで戦っていた。
彼女の攻撃に青髪の少年は弾丸で守るしかない。
(くっ、なかなかいい攻撃をしてくるな。永瀬先輩は。全く尊敬するしかないぜ)と思っている惺夜。
(だがな、俺がくたばる口実じゃないぜ。永瀬先輩を助ける為なら、俺が傷ついても構わねえ!)
彼はケルビムの方へ睨む。
それを見たフード姿の少女は。仮面下で不思議そうな表情をする。
(なんだこの男、どこかで見たことあるぞ。誰だったかな。まぁW・Aの敵なら殺すしかないけど)
ケルビムは惺夜の顔を覚えてないぐらいの洗脳されていた。
時刻は十三時三十四分と少し秒針がズレる――。
空虚の鳥の巣のような校舎外で戦うケルビムと惺夜。
お互い発砲しながら、間合いをみる。
筒先を光らせ、火薬の匂いを校舎外に充満。
惺夜は左足を大きく、縦に回し蹴りを体重に乗せて蹴る。
ケルビムは右手で防ぎながら、引き金を引くと、惺夜はそれを弾丸で撃ち返す。
攻防は止まらない。動く、動く。攻撃をやめたら、お互い死ぬとわかっているから。
心臓が走る、肺が踊る、手足が震える、脳が回る。
2人の身体はヒートアップし、筒先に香る火薬を堪能しながら、銃を持ちながらダンスをする。
それはまるでダンサー同士のナワバリ争いのようにも見える。闘魂高まる試合だ。
ケルビムの動きはすごく美しい、まるで黄金長方形の彫刻を見ているようだ。
その
(……くっ! 強い!)
彼は苦虫を潰したような表情。勝てそうで勝てない“もどかしさ”がある。
(どうする……爆弾を使うか? いや、永瀬先輩に使いたくない)
無理もない、敵とはいえ惺夜の先輩だ。そんな無礼なことはやりたくない。
しかし、惺夜はまだ知らない。永瀬春花はもう
ケルビムの口が開く。
「ぼくのマスター……射守矢様の命令でW・Aの敵は全員殺せと言われている」
「ふーん。んで、そのダブルエースってのがお前らの組織ってわけ?」
惺夜は喋りながら、弾を補充する。
「通称はね、本当はアルアリング・エンジェルと言う組織名だ」
「アルアリング……やっぱり知らねぇな。新米テロリストだからか? てか、よく考えたら、新米テロリストってパワーワードだよな」
瞬間、惺夜はケルビムの足元を狙う。だが彼女はそれを予想していたのか、弾丸で打ち返す。
金属音が鳴り響く、そして弾が弾きどこかに飛ぶ。
「やっぱり読んでいるよね。だが、次の攻撃を読んでいたら怖いけどな!」
惺夜は発砲しながら近づき、武術をお見舞いする。
「なんだ、そう言うことね。読めるよ、そのぐらい」
少女は呆れながら、弾丸を返し、銃の舞をお披露目する。
攻撃をしながらとはいえ、SFで強化したケルビムの前ではただの朝飯前である。
また弾をはじく音が聞こえる。惺夜とケルビムの鼓膜に届く、届く。
戦う途中で青髪の彼はマジックミラーの仮面の前に銃を構える。
「この次は読めるか? えーと……」
「ぼくはケルビム・デュアルだ」
「そうかケルビン・デュアルね。二重の絶対零度の単位か。テロリストの癖して、カッケェ意味だな」
「ケルビンじゃない! ケルビムだ! 智天使の意味だぞ!」
「なるほど、二重の智天使ってことね。なんで天使が二人いる必要あるんだ?」
また惺夜が撃とうすると、ケルビムは防衛のため動くが。“少年は撃たなかった”。
撃つフリをしてケルビムの腹にエルボーをかます。
「カッ!」と言いながら腹部を抑える彼女。
「俺言ったよな、次は読めるのかって?」
「フフフ、これは読めなかったよ」
ケルビムは誇らしげに言う。その態度に惺夜はムカついた。
「結構イラつくなお前、永瀬先輩を返せ。エセ先輩よぉ!」
と言いながら敵の少女を掴み、一階の教室の窓を突き破り校舎内に入る。
「第二ラウンドってわけかな? 先輩。俺の命に賭けても絶対に助けるからな」
そう宣言する惺夜。それを聞いたケルビムは。
「助ける……? 愚かな考えだ。ヒーローごっこは楽しいか?」と茶化すように煽る。
「俺は精神年齢が四歳児だから楽しいぜ。お前そこ厨二病全開のテロ行為は楽しいのかよ?」
「ぼくは楽しくない……、だけどマスターのためならなんでもするさ。命が燃えても!」
「命が燃えても……。俺が鎮火してやるよ!」
攻撃が激しくなる、鼓動が高まる、
たしかにケルビムは強い……強すぎる。だけどさっきまでの戦いで疲労困憊している状態。彼は軽い敵を相手にしていたとはいえ、まだ体力に自信はある。
だが、困憊しているケルビムと、体力消耗してない惺夜が互角なのは心配なところ。
正義感の強い少年は、いま、少しずつ体力が減っているからだ。
惺夜は戦いながら質問する。
「そういえば、西園寺つばきっていう奴って知っているか……? お前、いや永瀬先輩の洗脳を解けてから探そうと思っているが」
ケルビムはボイスチェンジャーの声を漏らしながら考え唸る。
「うーんそうだな……。一言で言うなら、“つばきって奴は死んだ”。ぼくが殺したからね」
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