10話

「……ところで生徒や教師達はもう避難したのか?」


「えぇ、そうらしいわ……みんな近場のショッピングモールに避難しているみたいよツーシンのグルが非通知しているのに来るんだもの」


 ツーシンとはSNSメッセージアプリのことである。


「そうか、みんな無事ならよかった。んだけどつばき、なんでみんなのツーシン知っているんだよ」


「さっき惺夜せいやくんが戦っている時に見たから」

「俺に来てないぞ。てかそれ以前に誘われてない」

「今度ツーシン誘うから」


 緊張感のない会話を終えると2人とも真面目な顔になっていた。


「テロリストが来たということは殺さなきゃいけないって事だよね」


「あぁそうだ、SATのトップ千木楽ちぎらさんが言っていた『この学園に危険が伴う不審者を見かけ次第で消せ』と」


「それと『闘うしかない。例え相手が人であれど金品の強奪と自分らを殺しにきているのは明白。私たちが戦う義務はある、殺しても罪人にはならない。法の元に合法的に殺しが正当化される。』もそうじゃないかな?」


 と正確に覚えている彼女に対し少し恐怖心を覚え惺夜せいやは3日分の冷や汗をかいた。


「なんでそこまで覚えているの……?!」

「真面目に聞いているからよ」


「真面目に聞いていてもそう言うのないな」

「そうかしら? まぁ強くなるためには誠実に行うのも大切だよ」


「そうか、それならいいんだ」


 また緊迫感のない会話をする二人。


 そして惺夜せいや達はこの場から離れ、敵がいなさそうな教室に隠れ込んだ。


 つばきは小声で。

「今は司咲つかさくんのことが心配ね、私たちに断りもなしにどこか出かけて、まさか! 別の方に行った可能性も……」

 声を震わせて話した。


「あんまり思いたくはないけどそうかもな、別館からも重く鈍い音が聴こえた。多分あいつはそこに行ったのだろう。無事だといいが……、相手が弱いといえど不意打ちをくらってしまったらテロリストの餌食だ。なるべくSATのメンバーは一人もかけてはいけない。」


 つばきは「そうね」と一言。


 彼女の顔には悲壮感に浸っていた。


 その一瞬、教室外から音が聴こえる。

 銃弾の音だ。

 彼らは拳銃を構えてお互いの顔を見ながらうなずく。


 そしておそるおそる身体などを机や椅子などで防御しながら音を殺して移動する。

 そして教室の扉までついた時、こっそり見てみた。


 ゆっくり来たとはいえ影はまだ相手を撃ち殺している。


 だが幸運なことに影の正体は『天羽凪あもうなぎ』だったのだ。

 殺した相手はテロリストである。


 凪も事情を察したのか惺夜せいや達のいる教室に入った。

 でも二人の本心はうざいやつか来てしまった。


 冗談で敵だったら撃てたのにとエゲツない事を考えていた。


 でも実弾を撃つのは冗談でも考えてはいけないなという良心もある。

 彼らは一瞬、反省した。


「いや〜西園寺さいおんじさん達がここの教室にいるとは思わなかったよ〜。僕は君の笑顔を見るためだけになら嫌いな道化師だってなってやるさ」つばきに向かってなぎは言う。


 もちろん、赤髪の少女は嫌な顔をしている。


 彼女の嫌いなタイプは自称ダンディかつキザっぽく振る舞う痛々しい奴なのだから。


「もうとっくの通りなっているじゃないの? そうだ。千木楽さんの指示があったとはいえ、テロリストの何人かバラしたけど平気よね」つばきは淡々と話す。


 惺夜せいやは身震いし、(こいつこんな感じだっけ)と少し疑問に思った。


「平気さ、蒼光の仔猫ちゃん。テロリストは多分金銭目当てでここを襲ったんだろう〜。だから落ち葉を掃くぐらいの気持ちでテロリストを殺していい感じでもあるけどな〜」凪は言う。


「で〜も、西園寺さいおんじさん。いくら蒼光の美酒みたいな美しい笑顔をする君でも『バラす』という表現はよろしくないな〜」と凪が喋っていたが、無言でつばきはジト目でキザな彼のほうを見てた。


 (う、ウザい。私が何言おうと勝手でしょう)とは考えている。


「僕だったらそうだな〜テロリストには『晴天を逆らい、不罪人を喰い荒らす者伴、罰の喜悦を浴びながら散れ』だな〜。ンッン〜ダンディチック」


 となぎはつばきに向かって投げキッスを飛ばすも二人はイラッとした、ふざけているのかと。


 痛すぎて見てられないのか、二人はなぎを無視してこの教室から去ろうとする準備をしていた。


「俺そう言う奴嫌いだわ、やめてほしい」

「私も同意見です。貴方のキスはいらないですよ。早く別の人を好きになってください」


 二人はサラッと辛辣な言葉を吐く。


 惺夜せいやは小声でつばきに「急にすまないお前に伝えたいことがあったんだ」とこっそり話す。


「どうしたの、惺夜くん。こんなところで」

「つばきは自分のことを強いと思っているか?」


「全然、私は惺夜くんや司咲くんほどでは……」

「だと思った。俺はお前のこと強いと思っているよ」


「……何番目ぐらいに?」


「そりゃ、俺の中でNo.2の実力だ。つばき。No.1は司咲つかさだけどな」と、彼女をからかってるのかように微笑みを浮かべる。


「そうなのね。ありがとう、惺夜くん」


 彼女は笑みを浮かべる。小動物のように、とても可愛い笑顔だ


 そして惺夜せいやとつばきはガンカタに出会えた事にも感謝もしている。この二人ならどんなことがあっても勝てるし、性別を超えた友情も感じていた。


(やっぱり惺夜せいやくんは優しいんだな。)つばきは再度ニコッと笑い、それを見かけた惺夜せいやは少し照れる。


 この照れに恋愛感情はない。ただ話がズレていたなと間違いについて恥ずかしがっていた。


 時刻は一三時前になる。

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