6話

 惺夜せいや達が駄弁っていると、隣から誰か現れる。

「んあぁー? みんな何してるのー」


 その声の主は『伊藤飛鳥いとうあすか

 惺夜達の一個上の先輩である。


 目がくりくりとしていてショートヘアの少女。

 いつもおっとりとしている。上は藍色ブレザーに下は仄かに赤いスカート。

 ちなみにつばきも同じスカートを履いている。


 司咲つかさ惺夜せいや、つばきの順で挨拶した。


「伊藤先輩! こんにちは!」

「伊藤先輩、ヨッ!」

「伊藤さん、こんにちは。今日もおっとりとしていて可愛いですね」


「ふふ、ありがとうね朝霧あさぎりくん、ひいらぎくん、西園寺さいおんじちゃんー」


 飛鳥の戦闘能力は低いけど、教えるのが上手いので後輩から慕われている。

「伊藤先輩、いま最近オープンしたドーナツ屋の話をしていたんですよ。『ルーマホル』という店の」


「ルーマホルは聞いたことあるよぉー。チェーン店だよねー。でも去年の春ぐらいに近くで別のドーナツ屋さんがオープンしていたんだけどなぁー」


 つばきは飛鳥あすかに向かいこう言う。

「もしかして『ドウナッツ・ナッチ』の事ですか? 最近潰れましたよ。伊藤さん」

「んあー、潰れちゃったんだー。でもしょうがないよね。そこのドーナツ、少し油っぽかったもんなー」


「伊藤さん、少しどころかギトギトでしたよ。でも好きな人は好きかなーと」


 飛鳥あすかとつばきが話している間に惺夜せいやは口を動かし。


「へぇー他にもドーナツ屋あったんだ。俺、今年の三月から引っ越したばかりだからわからなくて」と話す。


「そうなんだねぇ。ひいらぎくんはここが初めてなのかしら?」

「いえ、小さい頃ここに来た事あってまた戻ってきた感じっスね」


「そうかそうかー。久しぶりの町はどう?」

「うーん、覚えてないからわからんなぁ……」


「まぁそうだよねぇー。しょうがない、しょうがない」

「幼少期から引っ越しが多かったからな、まぁ家庭は楽しかったから友人いなくても良かったけど」


「なるほど、なるほどー」

「やっぱり伊藤先輩は癒し系で良いよな。話していて楽しい!」


 惺夜せいやがそういうと司咲つかさは声を出す。

「癒されるよな。もし付き合うんなら伊藤先輩がいいなぁ」


 惺夜せいやは笑いながら話す。。

「まじぃ?! このタイミングで伊藤先輩に告白か? 全くロマンのかけらもないよな」


「ち、違うわ! 例えだよ、例え!」

「そうか? だって前に『伊藤先輩可愛いな』と言ってたんじゃなかっけ?」

「そ、それは……」


「ほら顔真っ赤! 絶対伊藤先輩すきだろ?」

「やめろよそんな大きな声で!」


 飛鳥あすかはクスクスと笑いながら話す。


「んぁーそうかぁ。ボクのこと好きなんだねー、ありがとう朝霧あさぎりくん。ボクも朝霧あさぎりくんのこと弟だと思っているよー」


「違うんです! 誤解なんです! 勘違いしないでください! 俺……間違えた私はあなたの事は尊敬する意味で好きなんです。LoveじゃなくてLikeです」


「そう言う反応する朝霧あさぎりくんも可愛いなぁ」


 飛鳥あすかは太陽のようにニコニコしながら楽しそうに話し、司咲つかさは夕焼けの如く赤面する。


 その時つばきはあることに気づく。


「そう言えばこの食堂に千木楽ちぎらさんとか居ませんけど、今どうしてるんですか?」


千木楽ちぎらさん? 多分だけど仕事中かなー。トップの仕事は山ほどあるからねぇー。大変だ、大変だー」


「そうなんですね。昨日食堂にいたのでどうしてかなと。やっぱり基本的には忙しいんですね」


「んまぁー。昨日はたまたま仕事が少なかったんじゃないー?」


「そうかもしれませんね。そろそろ混んできたので食堂からでますか?」


 惺夜せいや達と飛鳥あすかは一緒に食堂から出て、飛鳥かのじょは別の方角に行く。

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