67話
能力に覚醒した者の姿は、司咲の格好に似ている。
しかし、違う点をあげるなら、右目が黄色、左目は藍色。彼の目の色と異なっていた。
あとは、少し赤みある羽のような片翼もある。
分け与えられた者は、個人によって、姿、形が別々に存在するのだ。
だが、稀に別の能力になるケースもあり、それは『アマテナ』と呼ばれている。
「西園寺さん……これは?」
「天羽さん、これは司咲くんが持っていた能力です。私にも備わった……と思っていてください」
「――――まさか、本当に能力があるとは」
「信じられないのも、しょうがないですよ」
「それじゃ、僕たちで戦いますか、痛てて」
「天羽さんは、休んでいてください。いや、早く治したほうがいいですね」
つばきは凪の体を触れ、治癒させる。傷がどんどんなくなっていた。
「ありがとう、西園寺さん。これで――――」
オレンジ髪は、一緒に戦う気で準備するも、彼女は真剣な目で話す。
「私のわがままで、すいません。これは自分一人に任せてください。彼女との決着をつけたくて」
つばきの目は本気だ。凪は理解した。
「……わかった、ここは西園寺さんにお願いするよ」
「ありがとうございます」
新たに覚醒した赤髪の少女。それを見たフィアナは、いつものようにからかった。
「あら〜。 つばきちゃんもシープに覚醒したのね〜。そのご褒美にキスしてあげる、チュー」
口を尖らせるフィアナ。赤髪天使にとっては、屈辱そのものだ。
「……私のことを馬鹿にしている? ふざけるな」
つばきは、引き金を引き、弾丸を放した。テロリストの女は避けようとする。
しかし、突如、弾が加速した。能力の影響だ。
少女も「え?」と、声を漏らす。
それは、
「……くっ、シープは強いのね。肌で感じたわ」
「……よくわからないけど、それが、私に備わっているものね」
「あら、理解するのが早い~。良い子、良い子」
子どものようにあやす彼女。
「だけど、龍康殿様もためにも、貴女と戦うわ。大丈夫、殺したりはしないから」
「死なないけど、洗脳はさせるんでしょう? 知っている」
「あらあら、バレちゃった」
「さっき、言っていたからね」
覚醒した少女はドレス姿の女性まで、刹那に駆ける。
負傷した
横に倒れ、頭を強打。フィアナの視界はぐらんと揺れる。つばきの姿が二重にもみえた。
「……なんだか、記憶が落ちている。私が私ではない感覚」
立ち直る女性。拳銃を持ち始め、距離を詰める。
まだ二人の攻防は続く。つばきの拙い
フィアナも本気でやっている。だけど、奪略した能力だからか十代後半の女の子にも勝てない。
詳細は不明だが、奪うよりも分け与えたほうが力の差はあるみたいだ。
彼女達は発砲しながら打撃を加える。フィアナの妖美で華麗な動きは、禁断の花園に導かれそう。
時計の秒針が
テロリストの女は焦っていた。銃の舞にも影響され、動きが俊敏じゃなくなる。
しばらくすると、フィアナに好転する展開が訪れた。少女の下半身に、隙を見つけたのだ。
タイミング良くいけば、下腹に短刀が刺さりそう。
仮に回復されても、素早くSFを付ければいい話。
SFに再度洗脳されたら、もう二度と元の人格には戻れないだろう。
一生、W・Aの忠犬として、働き続けなければならない。
「ふふっ、やっぱりこの子は可愛いわね。さて、ラストチャンスにかけますか」
つばきの腹にフィアナの短刀が突き刺さる。
「結構怪しかったけど、これで私の勝ちね。大丈夫。また洗脳が解けないように、もっと強くするからね」
すると、フィアナの首筋から冷たい痛さが神経に響く。
つばきのアーミーナイフが彼女の
「私と最初に戦ったこと覚えている……? そのやり方を参考にしたのよ」
そう、少女は最初にテロリストの女と戦ったときの策略を真似たのだ。
「なるほど、私を模範して可愛い作戦を立てたことは、とてもいいわ、 ありがとうね」
フィアナはつばきの頬にキスをする。母性を感じるような接吻。
つばきは敵ながら心が温かく感じた。
「――! またそういうことをして!」年頃の女の子は頬をホオズキのように赤くする。
「いいじゃないの。私とつばきちゃんの仲ですし」にっこりと笑うテロリストの女。
「でも、この状況はピンチね。ひとまず逃げるわ」
彼女はそのまま逃走。どこかへ逃げる。
「あっ! 待て! うっ!」
つばきはフィアナの短刀を抜いて、目覚めた力で治癒する。
「司咲くん! 天羽さん! 行くわよ!」
二人は二言返事を言い、つばきの方に向かう。
フィアナはあの場所まで行く。そう、柊伽耶がいるところまでだ。
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