14話

「おい! 戦闘終了後の痛々しい独り言を言うのいい加減にやめろよ。」


 惺夜達が弱ったつばきの肩を組んで移動している中、突っ込む。


「何〜? 惺夜くん、僕が言ったのは、これで初めてなんだけどな〜」


「前やっていた訓練の模擬戦闘の時に何回も言っていただろうが!」


「そう? あれは僕独特が考えた“リフレッシュ法”さ、君も模範としてチャレンジしてみよう〜」


「ふざけるな。それやったら、俺も痛々しいやつ認定されるだろうがよ!」


「話は逸れるが、惺夜君の肩に乗っている人って誰だい? あのテロリストの一員?」


「こいつか? 見てわからんねえのかよ、お前の好きな西園寺さんだ」と惺夜が言う。


 凪は顔を青ざめ、尋常じゃないぐらい焦っていた。


「エエェ!? ちょっと待て! なんで西園寺さん怪我しているの!?」


「それはえーと……ナヨナヨしている女の子ってテロリストにとっては最適な獲物なんだよとか言って、その……腹蹴られた。」


「だからってこんなボコボコにするのかよクソの極み共は! まじで死ねよ! ノーミソがちくわ磯辺揚げ以下の分際共がぁ!」


「お前がこんなに暴言吐いているとこ初めて見たわ。少し怖え……」


 惺夜は初めて見る凪の表情に怯えていた。


「凪……つばきを守れなくてごめんな。」惺夜は申し訳なさそうに凪に謝った。


「え? 何言っているんだい惺夜くん、別に君のせいじゃ無いんだよ。弱いものを標的にする野生的なテロリストの性格が悪いんだから」多重人格者みたいにいつもの凪の態度になっていた。


「そうか、なんだか申し訳ないな……」


「でも1つ注意点〜 。君は悪くないのに、すぐ謝ってしまう癖がある。そうしている間にも敵からの攻撃が来ちゃうよ〜」


「だから気をつけてね。僕の親友……いや大切な家族。」凪が悲しげな表情をしながら言うとしんみりした空気が流れていた。


「……ありがとうな。本当に感謝している前提で言うけど、常時、痛々しいのはやめてほしいと毎回注意しているのだが?」惺夜は半ギレ気味に言う。


「そーゆーのは目を瞑るのがマナーじゃないかな? ドゥーユーアンダスタン?」凪は言う、惺夜は呆れて言葉も出なかった。


 W・AがSAT学園の屋上に侵入されてから数分後、春花しゅんかはテストでほぼ赤点取ったぐらい焦っていた。


 いやそれ以上に、十数年ぶりに現れた危機感がドンときたからだ。


 SATメンバーは千木楽の指令を出し、皆、任務遂行のために一所懸命に戦っている。

 無論、春花もSATメンバーなので遂行している。拳銃もそこそこ使えるが、アーミーナイフを使った近接戦闘が得意。ここの学園はアーミーナイフで戦う生徒が多いのだ。


 三階の廊下で春花はウロウロしている。


「うーん、どこを見渡しても怪しい奴はいないなぁー」春花は藁の中の針を見つけるように敵を探す。


 その時、後ろから春花の口を抑えられ、動きを封じ込められた。


(?! しまった! どっかに潜伏していたのか)


「動くなよ! この金髪ギャル! 動いたらお前の命はない」


 動きを封じ込めたのはテロリストの一員。

 見た目は40代後半で服はベージュ一色のベスト、ズボン。地味な服装だ。


「うっへぇぇ! こんなエベレストが豊満のえっちぃなギャルを抑えるの俺はうれしいぜぇ! バッキバキになっちまうわぁ」


(よりによってセクハラ親父かよ。キッショ! 絶対結婚したら家事とか何もしないで、飯に文句言う奴へなっているんだろうな。てかぼくに欲情は気持ち悪くてさっき食べたうどん吐きそう)


 春花はジタバタと体を動かすも全然動けない。


「若々しいなぁ最高だなぁ、と言うわけで豊満エベレスト揉ませろ! いいだろ?! 嫌なら、情報をゲロれ! 本部の場所や学生兵隊は今どの辺か全て言え! 言わないと唐揚げの漬け込みのように揉んで他の生徒を殺すぞ!」


(物理的に吐きそうだよ! だったらクッセェ手をどけて喋らせろ! この加齢臭ぷんぷんクソセクハラ親父!)


「んまぁ、吐けないだろうな〜。だってお前の口抑えているもん。喋れるわけねぇだろ〜。なので今からドキドキエベレスト級もみもみ作戦を実行しまーす」


(ネーミングセンスダッサ! 本当にキッショ! 死ね! こんな奴に身体を触られるのは嫌ぁ! 誰か助けて!)


 春花の鼻の奥には火薬のような匂いがある充満する。そしてテロリストの一員の手が解け、身動きも取れるようになった。


 後ろを振り返ると春花の瞳には脳みそを打たれたセクハラ親父の死体と伊藤飛鳥いとうあすかが映っていた。


「ふぅー、危ない危ないー、ボクは弱いけど不意打ちなら誰にも負けないよぉー」


「あすかっち! ありがとうね! ぼくを助けてくれて本当に気持ち悪かったの!」


「うんうんー。ボクも聞いていたよー。永瀬ちゃんの身体が弄ばれるところだったねー」


「本当そう! さっき食べたコンビニ限定豆乳うどんが丸々出そうだったの! そうだ! あすかっち捨て台詞吐いて! 死んでいても聴力はまだ生きているって言われているからトコトン痛めつけよう!」


 飛鳥は「わかった」といい捨て台詞を吐く。


「女の子をモノ扱いしている男は自己中心的で嫌われるよ。お前のような人がいるから関係ない同年齢の男性に風評被害が及ぶのよ。わかった? おじさん。いや人間のクズ!」

 飛鳥は冷ややかな目で死体を見る。


「あすかっち、カッコいい!!」

「いやいや、そんなことないよぉー。でも永瀬ちゃんが無事でよかったぁー」


「まさか潜伏しているとは思ってなくて、でもそれすら見抜けないとダメだと思ったわ」

「そうかもねー。でも次回から気をつければ良いよー」


「次回からって、死んでから意味ないけどね」


 飛鳥は考え事していたのか少し唸ってこう言う。


「んー、思ったんだけどさー。永瀬ちゃんはアーミーナイフ持っているのに反撃しなかったの? でもそういうの封じられたからしょうがないかもねー」


「まぁ、あすかっちの言う通りだけど、ぼくはね、アーミーナイフを血で汚すのが嫌なんだよね。まぁ血を洗うのがめんどくさいと言うか、毎回専用の薬品でゴシゴシするのがチョー億劫なの」


「んあー、わかるよその気持ち。でもやるべきことはやらなきゃダメだよー」

「はーい、ってさっきは本当に身動き取れなかったから、許してちょー大福!」


「良いよーかん」


 緊張感のない会話が繰り出される中、春花と飛鳥の目の前には司咲つかさが走ってこっちに向かっていた。


「おーい! 永瀬先輩、伊藤先輩。無事ですか?」


 春花達の方に向けて大声で言う。

 司咲の首筋には見たことのないチョーカーがセットされているも、2人はそれを見えなかった。


「わぁ〜朝霧あさぎりくんだ。そっちは大丈夫?」


「え? あ、うん。不意打ち食らったけど大丈夫ですよ。心配ありがとうございます」


「不意打ちかぁ〜大変だったねぇどこ打ったの?」

「頭」


 司咲は真顔で答えると、春花は心配する。


「えぇ?! 頭打ったの! それまずくない? 絶対食べたものナイアガラになっちゃう!」

「実際ナイアガラしちゃいました」


 金髪の彼女は心配する。飛鳥も少し驚きながら、穏やかに声をかける。


「あらら、それは大変だ〜。でも無事で良かったね〜」

「無事じゃないですよ、頭が痛くて……」


 他愛のない会話をする三人。


「あっそうだ向こうからテロリストW・Aの副リーダーの女性がくるので早くここから逃げましょう!」


 それを聞いた春花は「え! マジ?! 敵くるの?! やっばあ、早く戦闘体制に入らないと」


 と銃舞スイーパーを構えて行動する。

 司咲のそれを聞いた飛鳥は、懐疑の念を抱く。


(なんで朝霧くんそんな詳しい情報知っているのかしら?)


 穏やかそうな彼女の目線は司咲の首を見ている。するとチョーカーらしいものを発見。

(?! 首に何かある! なんでなんで!)


 すると目の前に顔が凛としていて赤いドレスを着た女性が現れる。牛歩のように少しずつ春花たちの方へ向かう。


 それをみた司咲は「大変だ! 射守矢様が来る! 早く向こうに逃げないと!」

 と司咲は春花を引っ張り奥の教室へ急いで向かう。


「いったぁ! つかっちゃん無理やり引っ張るのやめなよぉ〜」


 と安全そうな音楽室まで連れて行く。

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