12話

「百人近い学園関係者の人達が皆、ショッピングモールで集まっている。期限は今日の一四時だ。ほんの一秒遅れても、人質の命はアリを軽く踏みつける感覚で嬲り殺す。しかも死ぬ直前まで言わずにな」


 と人質解放の条件を聞いた惺夜は憤怒して、歯を食いしばる。


「仔羊達の親には上手く誤魔化し、身代金を請求させた」龍康殿は少し笑みをこぼしながら話す。

「まぁせいぜい我々に従っといてくださ――」とボスが言い終える前に。惺夜はスピーカーに筒先合わせ引き金を絞る。同時に壊れたノイズが頭によぎった。


 彼はテロリストのボスのまだ若い葉を勝手に取って、少しずつ剥がすような態度に忿怒ふんぬしていた。


 時刻はもうすぐ一三時を回ろうとする。

 

 そして千木楽ちぎら惺夜せいや達があることに気がついた。


 みんな学外で危険を伴う事がある行動をしてショッピングモールに行ったのか。


 それはテロリスト共が変装して学園に潜り込み、誘導させたのだ。

 獣の餌になるとも知らずに。


 だが、千木楽はまだ不可解な事があった。

 何故、部外者である奴が先生や生徒を説得させてから、処刑場たてものに移動したのか。


 それが頭に引っかかるが、そんな事を考えている暇はない。


 千木楽はなぎに電話をかける。


 惺夜曰いわく「携帯電話は基本戦場に持ってはいけない。しかし音を鳴らさなければ大丈夫と言うガバさのかけらしか無い、暗黙の了解がある」と言うがそれは惺夜の勝手な思い過ごしで、最近では連絡機を使えない人ならば携帯はOKとなっている。


 スピーカーが壊れている廊下の前で凪とつばきはただ惺夜を呆然とみている。


 深刻な声で「舐め腐った態度しやがって」と惺夜は感情込めて言葉を吐く。


 SAT達もW・Aの人達を殺しまくっているが、これで人質が死んだら会長がなんとかしてくれるとはいえ、学園兵隊に罪も軽く囚われてしまうからだ。


 自分のためでしか無いが、惺夜の脳内では突然行方不明になった親友と、人の命を天秤にかける事もあるのに軽い気持ちでSATに入ってしまった自分の愚かさ。

 

 そして出来てから日が浅そうなテロリストのボスの冷酷で生唾が出るような利口な手口をする態度にキレながらも悔しさをみせる。


 今にも気が狂いそうな惺夜に向かって、つばきは「テロリストのボスっぽい人が身代金を欲しいと言っていたけど、それって親に頼まないといけないんじゃ無い? 上手く誤魔化したとか喋っているけど、バレないのかな?」と呑気に質問する。


「……推測だが、奴らは学園の教師だと偽り、『学校行事や修学旅行の金額が上がりました』とか言って、馬鹿どもを騙しているんじゃ無いか? バレても通報元の細胞を一つ残らず処理してさ。」


 少しだけ落ち着いた惺夜は息を切らしながら話した。


 つばきはワタワタしながら。

「言っている事めちゃくちゃよ! さっきの事でムカつくのはわかるけど一旦落ち着いて」

 と、青髪の彼をなだめる。


「……そうだったな。俺はこう言うやつ見ると、イラついて、しょうがないんだ。すまなかった」と惺夜は深呼吸をする。


「惺夜くんは正義感が強いのね、大変じゃない?」


「いやそんな事ないよ。むしろ勇気が湧いてくる。まぁ感情的にもなるけど」


「そうか、それは良かったね」


 彼らが会話している時に 凪は千木楽からの電話をとっていた。


「う〜ん、わかった、今から向かうよ。千木楽君それってみんなにも伝えたの?」


 内容はシンプルでテロリストが少なくなり次第。SATメンバーが十四時までにショッピングモールに行く。


 だが、凪はそのまま本部まで来て欲しいと言うものだった。


 本来なら凪一人で来て欲しいところだが、千木楽には内緒で惺夜達を連れて行くことにした。

 単体行動は危険である。


 もしかしたら、司咲に会えるかもしれないという二人の期待も含めガンカタを構えて本部でまで行くが、惺夜だけはあのボスの事を考えていた。



 この校舎は本館と別館があり、それぞれ本館の屋上含め4階まで存在している。職員室は珍しく本館2階にあり、今、彼らは別館の3階から移動している。渡り廊下は一階と三階にしかなく本部に行くのには遠い。


 惺夜達は歩いてもテロリストが見当たらず少し暇を持て余していた。

「そう言えば惺夜くん。二人倒していたけど、昼休みに銃舞スイーパーは飽きたとか言わなかったけ?」

 と、つばきが話を振る。


「なっ、何言っているんだよ! 俺がそんな事言って……たわ」


「おやおや〜? それは失礼な事だな〜君がこんな事言うとは、そんな子には僕がビシバシ鍛えないとな〜」


「嫌、いいよ。厨二の化身。授業だけで厳しいのにあんたとやると脳みそが発酵して厨二病の合わせだしになりそう」惺夜はオレンジ髪の少年をウザそうな目で見ている。


 すると、凪は軽く笑い。


「そんなこと言うなよ。こんなに照れ隠しで誤魔化しているつもりでも僕はわかっているから、そして君もSATの中で大事な人なんだよ。まぁ〜一番はつばきさんだけどね」と得意げに言う。


 惺夜はしかめっ面で。

(マジかよ……俺は大切な人だと思ってすら無いわ)と内心語る。


「別に君だけじゃ無い、もちろん全員大切な存在だけど、君とか司咲くんや千木楽くんは個人的に特別で僕は尊敬しているんだよな〜。つばきさんはマドモワゼルだけど」


「そこで私を入れないでください……けがわらしい……」


「またまたそんなこと言……」


「言っていません!」とつばきはキレ気味で叫ぶと、残り少ないテロリストの2人がかけつける。


 太っている人と痩せている人だ。

 太っている人は人質の女子生徒の腕を掴んでいる。


 惺夜は少し怒りを見せ、つばきも察して青髪の少年を援護するように両手に銃を構える。


 凪は冷静に鷹の眼のように相手の足に向け撃つ。一人しか命中しなかったが、「そいつは二人に任せるよ〜」とキザ口調でいい、足を負傷した奴の方へ向かった。

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