54話
──龍康殿と惺夜は睨み合っていた。
スーツ姿の彼は興奮しているのか、少年に弾丸が当たらない。絶対に殺すと思っているからか、身体がこわばって狙いを外れやすくなっていった。
「どうした? そこのジジイ。俺に向かって撃っているが、狙いが外れているぞ」
「……緊張しているからだ。私の腕はこういうのじゃないはずなのに。どうして」
「いざ、ターゲットを殺そうとするが、確実に殺せるかはわからないからな。俺はお前にとって絶対殺すべき存在で。仕留めなかったら、人々が神になれないと思っていると。重要すぎて緊張しているんじゃないかなと思うのさ」
惺夜は笑いながら煽る。龍康殿にとってあまりにも荷が重いことを行っているから外れると言っている。
「知ったこと言っているんじゃねぇよ! 青二才!」
龍康殿は口調を荒くしていた。ルージュ色の弾丸を取り出し、それを拳銃に詰める。瞳孔が開き覚悟を決めているような表情。
「どうした? まさかこの弾で俺を殺そうと思っているんじゃないだろうか?」
「ははは、そんなわけありませんよ。よく見てください」
テロリストのボスのこめかみに拳銃を当て、引き金を引く。
惺夜は不思議そうに感じる。
「? なんだ自殺……ってわけじゃないみたいだ」
こみかみからは流血しておらず。すぐ立ち上がった。
「……これはですね。神の護衛みたいなものです。名前は|Ilex_Aquifolium_Annihilatio《穢れた自己犠牲に胸を当てる鼠》と言います。この弾丸を作るのに大変時間がかかりました」
「……お得意のお喋りで時間稼ぎってことが、俺はそんなに待てないぞ」
と二丁拳銃を構え、龍康殿に撃ちまくる。
だけど無傷だ。何かオーラに守られているようなそんな感じ。
「費やした時間は数知れず。試作し続けて実験もしました。尊い命を失った犠牲者が出てきましたよ。ある方は弾丸を打ち込まれたあとに脱走して、人を殺しまくりました」
「お前、本当に酷いことしかしないんだな。新米テロリストを作る為に命を失った人たちがいるとは。胸糞悪い」
「そう彼女の名前は“瑠李奈”と言う名前の人でした。もう何年も前ですが、後日、老若男女構わず殺したらしいです。私たちの組織に加入すれば、神になれた人々もいたはずなのに……誠に申し訳ないです」
「反省の色がねぇぞ! 何が言いたいのか教えろ! どうせ時間稼ぎの一種だろ!」
「……簡単に話します。これは能力を授かる弾丸なのです。火、水、風、土のどれかを継承する弾丸ですね。私にもなんの能力を授かるかわかりません」
「ふーん、まぁなんの能力かわからんが、とりあえず力の差はあるけどお前を倒すさ」
「……どうやら能力が授かったようです。それでは呪いの子に問題です。私はなんの能力を授かったのでしょうか? 間違えた場合は始末してあげます」
「直感で言うぜ、土だ。別に能力がどうのこうのあっても、なんとかやってやるぜ」
惺夜は一瞬で、龍康殿の後ろに回り、弾丸を撃つ。
すると目の前に、土の壁が浮かび上がる。
「どうやら土は正解のようだな。テロリストのボス」
「……言われるのは癪だが、私のことは龍康殿と呼んでいただけると嬉しいです。柊の子」
「当たったから、処刑される暇はないな。厄介だが、壁を作るしかない能力なら俺でも倒せそうだぜ」
すると、何故か心地いい風が横切る。
(……? 風か? まぁあんだけ暴れていたら、風が通るのは不思議じゃない)
と惺夜は思っている。その直後、息ができないほどの苦しみを味わう。
──謎の熱さが噴き出してくる。
(?! 息ができない! なんでだ、あいつは、土しか持ってないはず)
「ははは、別に一つの能力しか、授からないとは言っていませんよ。改良に改良を重ねて、複数継承できる能力にしたので」龍康殿は作り笑いをする。
「まずは土の壁を作り、その間に炎を纏う。その後に水無月の涼しい風を浴びせる。すると炎は風により大きくホムラになります」
「だ、だとしたら。水以外の能力を授かったってことか! このや――」
『この野郎……』、と言う前に惺夜の口に水が溜まる。
「正解は全部です。今、忌子を殺す為、ランダムに継承できる能力を4つ全部継承したのです。ですので、これで貴方はおしまいです」
「い、息ができない! ど、どうすれば……」惺夜は息を途絶えようとしていた。
「さて、ようやく始末できますね。でも最初の目標、SAT学園を洗脳させて、新たなメンバー作ることは叶いませんでしたが。まぁいいでしょう。新たなところを探せばいいのですから」
不気味な笑みを浮かべる龍康殿。
「なにより柊の子を始末できることに喜びを感じています」
惺夜はその笑みを見て気を失いそうになる。
すると、龍康殿の背中から弾丸が数発当たった。振り向くと千木楽真心がいたのだ。
「くっは……!」
テロリストのボスが倒れると同時に能力が解除される。
「あ、ありがとうございます。千木楽さん」惺夜は黒髪の少年に感謝する。
「お礼はいいよ。事情は聞いている。ここは俺に任せてショッピングモールにいけ。これは命令だ」惺夜は握り拳を作り、首を振る。
「すみません。千木楽さんの命令でもできない。これは俺とあいつの戦いです。だからなんとかしてあのボスを倒します」
「そうか、お前のわがままなら、しょうがない。だとしたら、能力を使う相手を倒せる対応する頭を使うといいかもな。何かの道具を使ったりして」
「道具……わかった。俺、探してきます」と言い、一目散にある場所まで使う。
その場所とは――。
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