55話
|Ilex_Aquifolium_Annihilatio《穢れた自己犠牲に胸を当てる鼠》通称IAWのモチーフは四大元素。
元々四大元素は主にヨーロッパがこの思考だが歴史を辿ると古代ローマ・ギリシャも使われている。
哲学者ソクラテスの弟子プラトンやアリストテレスの哲学思考もこれを基に考えられている。
ルージュ色の弾丸を自分に撃ち込むと火風水地のどれかを能力を授かることができる。
もちろんランダムなので風か水か、はたまたその両方を授かるかわからない。
しかし龍康殿の豪運で四大元素を全部取り入れる〇・〇八パーセントの確率を引き当てたのだ。
龍康殿曰く、この四大元素は神のイデアではないかと考え取り入れた。つまり完璧な能力というわけである。
真の実在している永遠不変のイデア論な能力で確実に柊家を始末する弾丸。
弟を裏切りのために彼は惜しみなく歪んだ努力をしたのだ。
惺夜は龍康殿に勝てないとわかったら、とある場所まで向かった。
そう“化学室”だ。化学室にはいろんな薬品がある。硫酸や塩酸とかでテロリストのボスを弱らせるためだ。
化学室に着いた惺夜。あんだけドンパチしたのに、化学室は無事で、薬品の匂いで充満しているのを鼻腔に届く。
惺夜は、すぐさま薬品棚に移動して、何か使えるものを探す。
彼も心臓にズキズキとした痛みが走る。同時に心も昂っていた。
「くっ、龍康殿だったか? あいつを観ていたら胸あたりが痛くなってきた……。そのぐらいムカつくやつだからストレスでなったのか?」
謎の痛みを耐え、薬品を探していると。硫酸や塩酸を見つける。
「俺はそこまで賢くないか、ら薬品の使い方はなんとなくしか、わからないけど。これさえあれば、あいつの弱らせることができる。だけどこれだけでいいのか……?」
惺夜は深く考える。そして棚からとある薬品を見つけた。
「……いいもんみっけ」
これはイカレ羊飼いの野望を阻止できる。と惺夜はニヤついていた。
「絶対にあいつを弱らせなければならない。そのためにはこいつの力が必要だ」
青髪少年は決意と共に、薬品を手に取った。
──龍康殿と千木楽はお互い弾を撃ち合いながら攻撃している。
黒髪の少年がテロリストのボスに飛びつくように襲い、顔めがけて何発も足蹴りを食らわせた。初老の彼はそれを手の平で数発かわす。
しかし、惺夜の口論で疲れが出たのか、攻撃が防げず顎に当たる。
龍康殿の動きを止めることに成功した千木楽。
彼が敵ボスの首筋に向かい、思いっきり右の甲のチョップをお見舞いする。しかし龍康殿は左手でガードし千木楽の手に弾丸を撃つ。
SATトップの少年は痛そうにするも、弾を抜いて、次の攻撃に備えた。
「おい! 俺には危害を加えるんじゃなかったのか?」
千木楽はそう言いながら発砲する。
「すみません、千木楽さん。命の危機になりますと私だって正当防衛をしせざるを得ないので」
「正当防衛だぁ? よく言うぜ。大人しく撃たれていろ!」
弾丸が撃ち合う状況。二人の鼻腔には火薬の匂いが充満していた。
龍康殿は思い出したように千木楽へ向けて言う。
「君は先程“千木楽真心”と申しましたよね?」
「……そんなこと言った覚えがない。と言いたいところだけど、多分洗脳された時に俺が言ったんだろうな」
「そうですよ。察しのいい子で助かります。実は君に謝りたいことがありまして……」
「おっ、ようやく学校を襲ったことを懺悔する気になったんだな」
「いえいえ、それよりも重要なことです。貴方の身内に“
千木楽は喫驚する。雲一つない青天の純粋な脳に、稲妻が落ちるような衝撃。
「どうして兄の名前を……!」
「それはですね、彼はもともと私の組織のNo.2でしたから」
千木楽は驚きを隠せなかった。兄がテロリストの一員だなんて。
そして思い出した、フィアナに言われたことを。
『私は射守矢フィアナ、W・AのNo3よ。No2はとっくに亡くなったけど……』
そう千木楽は察した。兄、海斗が亡くなったことを。
「まさか俺の兄ちゃんが亡くなったことじゃないよな」
「そのことですよ。大変申し訳ありません」
「──ふざけるな……嘘をつくなぁ!!」
千木楽は鬼のような表情で、弾丸を辺り一面に撃ちまくる。
感情のあまりデタラメに撃っているので、龍康殿の頬皮膚を削るぐらいしか当たらない。
「う、嘘じゃありませんよ。私のせいで……こんなことになってしまった」
龍康殿は涙ながらに言う。彼の目から大粒のものが流れる。
それを見た千木楽はさらに憤慨している。怒りが加速していた。
「あぁ! お前のせいだよ! 全てな……全てお前が招いた事なんだよ!」
少年はなぜか拳銃をホルスターにしまって、龍康殿に殴りかかる。
最初に顔面からだ。鈍い音が響く。右フックをお見舞いした後、左フックを重ねる。
次に腹を殴る。五〜六発殴ったのだろう。
「お前のせいで……兄ちゃんやSATメンバーや
千木楽も涙を浮かべながら殴る。とても水無月とは思わない春先溶ける白雪の如く切ない攻撃。
「ごめんなさい。千木楽さん……。本当にすみません私が天使を亡くしてしまい貴方様を傷つけてしまいました」
お互い涙を流す。なんとも醜くつまらない塩試合だ。結果は見えていた、千木楽は感情込めて殴り続ける。
殴られながら龍康殿は話す。
「私が憎き柊家を抹殺しそびれたから、みんな不幸になってしまった……。なので貴方をまた幸せにするために私たちのメンバーに戻しますね」
龍康殿の懐からギラリと光った。
千木楽がそれを見た時はもう避けることができない距離。
彼は「もうダメだ」と確信していた。
「千木楽さん! 避けてください!」
惺夜の声が、ボロボロになった廊下中、響く。
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