二章
22話
フィアナはつばきと共に廊下を歩いている。
赤髪少女の格好はブレザー制服ではなく、黒いフードマントを着ていた。
テロリストの彼女が一瞬で着せたのだ。
(私は優しいなー。戦ってこの子は近距離戦が苦手だと一瞬でわかり、わざと手を抜いていたもの)
フィアナは鼻歌混じりに、心弾みながら思っていたら、目の前に誰か現れる。
同じフードマントを着ている
「
少女の声がする。
「見つけてくれてありがとうね。職員室はなかなか見つからなかったけど、どうやって見つけたの? えーと……誰だっけ?」
「ぼくは
「なるほどね。壁触る行為が子供っぽくて可愛らしいけど本当凄いわー。ご褒美にキスしてあげましょうか? 永瀬さん」
フィアナは唇を尖らせる。
「すみません……僕、その趣味は持ち合わせてありませんので。話戻しますが、私たちは本部に向かいます。射守矢様はどうされますか?」
セクシーな女性は少し悩み、こう答えた。
「私も本部に向かうわ。ちょうど学園兵隊のトップを洗脳させたかったですもの。たしか、えーと?」
「シン……
フィアナは不気味な笑みを浮かべてから春花の肩を叩く。
「大丈夫よ。私は元SAT所属のトップだから。日の浅い子供には負けないわ」
「そうですか、よくわかりませんが良かったです」
春花は肩を撫で下ろす。
フィアナと春花とつばきは横に並んで歩きながら本部の方角へ廊下を歩く。
沈黙の時間を減らすために、テロリストの女は話す。
「そういえばさっきキスしてあげると言ったけど、私は別に女性が好きってわけじゃないのよ。どっちかで言うと、私より強い男性や清潔感ある男性が恋愛対象よ」
「へぇー……」永瀬は呟く。
「だけどね。可愛い女の子を見ていると、ぬいぐるみのようにチューしたくなるんだよね。愛くるしいから」
「そ、そうなんですね……。なんでぼくに言ったんですか?」
春花はたずねる。
「いやなんとなくよ。強いて言うなら、話し相手が欲しかったから。隣につばきちゃんはいるけど、その子を『凶悪な戦闘マシーン』に仕上げようと思って、あまり話しかけないようにしていたの」
フィアナはつばきの頭をポンポン叩く。
「私のお気に入りだから、タダで壊れてほしくないのよ。だからさっきまでずっとW・Aの敵は全て殺せと命令したわ」セクシーな女性はフフっと笑う。
そして刹那の沈黙の後フィアナはこう言う。
「W・Aがこの学園を襲った理由は、仲間を増やすためよ。SATはピンキリだけど、強い人がいるからね」
彼女は立て続けに。
「日の浅いテロリスト集団が生き延びるためには金で雇った仲間を殺して、ここで仲間を作り……、いや洗脳をさせてまた次の仲間を増やす。つまりは強い人を洗脳させて、W・Aの隊員になる……。素晴らしいことね」と言う。
「えぇ、素晴らしい考え方です。尊敬します」春花は目を輝かせて言う。
「ありがとうね、永瀬さん。ちょっと待ってねSFの仲間を呼ぶから」
フィアナはトランシーバーを取り出し命令する。
SFの装置はW・Aのトランシーバーとつながっており、そこから報告や状況把握ができる様になっているのだ。
一分も経たないうちに、SFが物陰から集まり万全の状態に本部へ向かう。
その頃、千木楽と
オレンジ髪の少年と合流し、トップはSATメンバーに「学園内にいる奴は本部に戻れ」と命令を下す。
命令下す前に凪から「テロリストは洗脳装置を持っている。SATメンバーは洗脳されている可能性が高いよ〜」と聞いて。
「だとすると、先生達をその装置で洗脳させてショッピングモールに行かせるように仕向けてそうだな」と言葉を話す。
「そうだね千木楽くん〜。それはありそうだ。SATメンバーに知らせた方がいいね」
「そうだな……。何人ぐらい洗脳されているの分かるか?」
「うーん、まだ1人しかわからないけど、もう少し居そうだね。それも伝えてくれない〜」
千木楽はで連絡機と携帯を使い、みんなへ伝え今に至る。大半のメンバーがSFに洗脳されていると知らずに。
「……っと、みんなに伝えておいたぜ」
「ありがとう千木楽くん〜。で〜も、先生が洗脳されているのを伝えなかったのは何故なんだい〜?」
「ショッピングモールのいるメンバーが洗脳されている可能性もあるだろ? 言ったら人質が早めに始末されるのもあるから伝えなかった。それだけのことよ」
「ふ〜ん、そうなんだ〜。確かに人質が一人でも始末されていたら僕達も責任があるからねぇ〜」
凪は机を指でコツコツ叩く。
「思ったんだけどさぁ〜千木楽くん。この連絡機って〜どういう仕組みなの〜。僕の美酒であるマドモワゼルの声が聞きたくてさぁ〜」
「お前、通信機の仕組み分かってなかったのか……まぁあんまり使われてないからな。俺が教えるよ」
「この通信機はな。この青いボタンを押すと、一斉にメンバー全員へ告げ知られることができるんだ。んでこの赤いボタンを押すと、個人に伝えることができる仕組みだ。ざっくりですまないが、こんな感じかな」
「なるほどねぇ〜。そういうわけだったんだありがとうね〜。では西園寺さんとついでに河合さんにも安否確認しようかしら〜」
凪は指でコツコツと叩きながら千木楽の方に振り向く。
「……なんで河合なんだ? 安否確認は必要だけど」
トップである彼は懐疑の念を抱く。
「まぁ河合さんじゃなくても、園田さんや宮本さんでもいいんだけどねぇ〜。女の子の声が聞きたくてさぁ〜。別に深い意味はないけど〜」
「……もしかしてさ、俺の好きな人を探しているのか?」
凪は指パッチンしてから。
「ご名答! その通りさ〜。やっぱりトップは察しが早いねえ〜」と笑みを浮かべる。
「だと思ったよ、全く緊張感のない奴だな……」
千木楽は呆れて言葉も出ない。
「なんか合流したとき、千木楽くんの好きな人は誰かなぁ〜、と思ってさ。この連絡機で千木楽くんの愛の告白でも聞きたいなと……ね」
「このやばい時に告白なんかしねえよ。ダンディ厨二病……。お前こそ西園寺にでも告白したらどうなんだ? きっと喜ばれるぜ」
「西園寺さんも僕の酔いしれるキスで喜ぶかもしれないけどぉ〜。僕は千木楽くんをからかいたいなぁと」
「なんだそりゃ……。もういいわ戦闘配置につけ本部を襲われる可能性もあるからな」
千木楽はガンカタで戦闘配置につくも、ナギはニヤリと笑う。
「他に名前呼んでない人いるかなぁ〜……。あっそうだ! 『永瀬』さんだ!」
黒髪の彼はピクッと反応し凪の方を向く。
「あれれ、反応しちゃったの? もしかしてぇ、永瀬さんが好きなのかな〜?」
「ち、違うわバカ。と、と、とりあえずガンカタを取れよ。ダンディ厨二病……」
千木楽は人を見かけたら逃げるハトのように動揺していた。
「ふーん、永瀬さんが好きなんだぁ〜。大丈夫だよ僕は誰にも言わないからねぇ〜。それじゃ僕も戦闘モードになりますか〜」
キザ野郎は目をキリッとさせて戦闘配置についた。
(まじか、俺が春花のこと好きなことがバレてしまった……。あのダンディ厨二病に。どうするどうする……)
千木楽は焦りに焦る。
(あのテロリスト……、いやW・Aを倒したらみんなに言いふらしそうだ……。いやそれはないな。全員天に滅する場合もある……俺含め)
彼はもう少し思いふける。
(俺は無能だ。いきなりだったから命令もすぐに出せてないし、さっきも正しいのかわからない。俺の判断は全て間違っていると思っている)
黒髪の少年は反省し。
(でもこれだけは思いたい。『永瀬春花は洗脳されてない』こと。俺の好きな人を守れなかったら、どんなに技術がすごくてもトップ失格だ。もし洗脳されていたら俺も死ぬつもりでいる。俺すらも不要と思っているから)
千木楽は曇った表情をしていた。
「あれ千木楽くん。どうしたのぉ〜。もしかしてバレたから焦っているんじゃあ〜」
「ち、違えよ。ただシミュレーションしていただけだ。お前と違っていな! だから……、
「フフ、ありがとうね千木楽くん〜。大丈夫、僕は死なないよ〜。流石に西園寺さんに何かあったら、気が振れるかもしれないけどね〜。あと大切な家族が失ったらとか〜」
「そうか……」と千木楽は冷静になっていた。
(俺、この件で思ったんだよ。もしかしてお前さ、わざと俺を楽しませようとしているのか? 俺を考え込まないために……。流石にそれはないか)
トップの少年は少し笑う。
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