第37話 再会・開
今日は母さんはいない。
昨日は退院して一日目ということで不安もあったらしく有給でパートを休んでくれたが今日はいない。
俺は今日の使い方を予め昨日決めてあった。
今日という日は国立庭園に行くのだ、
決まっていた予定なのでスラスラと準備をしていく、
高校に入ってから新調したがもう少し小さいダウンを着て、ついこの前買った手袋を付ける、最後にリュックを背負ったら、ごわつく手で家の合鍵を持ってドアを開ける。
さぁ出発だ。
ここら辺は駅近ということで若者が多かったりするが、人混みは嫌なので少し早めに家を出た。
いつも高校に行く時もこの時間だが、逆にこの時間じゃないと間に合わないのだ。
ドアの鍵を閉めて門へと歩き始めると、正面の家のドアが開いた。
「いってきまぁ〜す!」
耳に馴染みのある声だった。
高嶋瑞希、久しぶりに思い出した。
そうだ、家から高校までの距離がほぼ同じだから家を出る時間も同じなんだ。
俺の体は謎の緊張と、顔を合わせてはいけない。という半ば直観的な物に従った。
庭の低木に身を隠したのだ、今どきこんなに不謹慎で不格好な隠れ方はない。
体を精一杯細めて、低木の裏に張り付くように隠れている。
よく見れば分かるだろうに、いや、見なくてもわかるだろうに。
少しでも隠れたかった。
背徳感というか、見つかったらいけないという感覚があった。
俺は高嶋と同じ電車に乗るのだ。
プライドを捨て不格好に隠れた意味がなかった、この後高嶋の背中を追いかけなければいけないのだ。
急ぎたいと思っても走ったら高嶋に見つかる。
まぁいいか、
俺は何とか高嶋にバレずに背中を追い続けることに成功した。
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