第89話 散漫

高島は携帯をいじる。


ふと高嶋の携帯が鳴った。

直ぐに高嶋は立ち上がって、電話をし始めた。


「もしもし。うん。そうだよ。うん。いいよそれで、はーい。ありがと。」


高嶋は電話を切った。

「誰からの電話ー?」


聡明が聞く。


「ママからの電話で。家にあんた達がいるってことと、夕飯はあんた達の分要らないよっていう話。」


「あー、ありがとな。」


「うん。」


聡明は何故か電話の内容というプライベートな所にも漬け込む。


が、高嶋もそれに慣れているのか、何も突っ込まないし感謝されていつもの通りに返事をする。


本当に聡明は女子だとか気にしていないんだな。


きっとこう言う奴には恋愛感情ってもんがないんだろうな。


高嶋はまた携帯をいじりはじめる。


俺は気が散ってるんだと思う。

二人の行動を常に把握していることを自覚した。

良くないな。


俺が集中して、付箋から目をそらさないようにしようと胸に決めると、暫く無言は続く。


聡明は鼻歌を歌い始めた。

古いポップスだ。


高嶋はまだ無言で携帯をいじっていると思う。


でも何故か、横にいる聡明からではなく、前に座る高嶋から視線を時々感じる気がする。


俺は気になってなにか考える。

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