第31話 自慢

「うん。それなんだけどね、クビにしたよ。」


「…そうですか。」


悔しかった。

俺に夢を見させてくれる高収入バイトだったというのに。


悔しいけどまたバイトを探すか、就職をするか。

どっちかだというのか。


「仕事してくれないからさ。」


「はい。そうですよね」


「ん?あぁ瀬戸くんじゃないよ?」


「え?」


「大林だよ、大林 務。」


「あぁ…え!?」


アイツがクビになったのか!?

俺は動揺して携帯を落としそうになってしまったが、なんとか左手で受けて、高揚した気持ちから携帯を強く握る。


「君がいなくなって気づいたよ。本当に大林が仕事をしていなかったということにね。」


「あ、いえそんな、」


もはや店長の戯言などどうでもよかった。

あの大林がいないのだ。これほどまでに嬉しいことは無いだろう。


「あ、でもね。君がいなくなった初日、その時の働きぶりは凄かったよ。もう満身創痍!って感じで、動き回っててよくみかけたよ。」


「え、大林さんがですか?」


「あぁ。あれは君よりすごかった。まぁそれからは力尽きたって感じだったけどねぇ…」


あいつが?

俺以上にすごかった?この人は何を言ってるんだ?


「そうなんですね。」


「そうそう。まぁあの日は近くでxsix《エクシックス》のライブがあったからね。あの日だけは本当に助かったというか、君じゃ用に足らなかった可能性はあるね。ハハハ」


「そうなんですね。xsixってあのアイドルのですか?」


「そうそう。だから客足が途絶えなくてね、レジャーシートだとか菓子パンだとか、携帯扇風機だとかが爆売れしちゃってねぇ。」


「そうなんですね。」


「まぁ君も来てくれよ。よろしく頼むよ。」


「はい。」

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