代役。

第17話 【高嶋 瑞希の杞憂】

「瀬戸が入院した」と、まるで号外の新聞を配り歩くように桐谷 聡明が言い回っていた。


家が近く、瀬戸と幼馴染だった私はきっと誰よりその情報に喰い付いた。


文化祭の準備にかなり遅れてくるなり、休校中の学校内を走り回り、瀬戸の体調不良を言い広げる桐谷。

私はその足を止めさせて詳しく話を聞いた。


「瀬戸が家で倒れて、意識を戻さないらしい。」桐谷の口からそう聞いた時に、私の体は震えていた。


言い切るとまた桐谷は走り去ってしまった。


小刻みに震える体は鳥肌を起こしていて、脳は誤作動を起こす。

「瀬戸が死んでしまう。」


私は体育館に戻るなり、雛子に「コンビニ行ってくる!」と言って瀬戸の家を目指した。


電車に揺られて十分、そこから歩いて五分くらい。

肌色に近い木の色の柔らかい雰囲気のお家、庭には花が綺麗に埋められて、優しさと瀬戸の雰囲気を綺麗に包む箱。



電車はいつもより幾らも長く感じた。

まるで三十分くらい乗った気分で、ずっとずっと

「瀬戸がいなくなっちゃう。」という杞憂だけが心を蝕み、頭に反芻はんすうした。


電車を降りてからも走り続けた、スカートがめくれる事も気にせずに走ったのは久しぶりだった。

おかげで今は脹脛ふくらはぎが痛く、全身が汗まみれで、息が上がりきっている。

そのせいで、折角吸い込んだ息がなぜか出ていってしまう。


「やっと、ついた、!」


荒く繰り返す呼吸でインターホンを押す。

その真っ黒なインターホンは、それっきり黙り込んでしまった。


どうしよう。

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