第58話 幸せの味
そんなことを考えながら歩いていると、先導の父さんが止まって、少し刺激臭の強い店に入る。
調味料だったりなんだりの匂いだが、そんな匂いじゃない。
しかし目の前のキッチンの料理にはヨダレが垂れるくらい食欲をそそられた。
「本当に食わないのか?」
「いや、食いたい。」
父さんは「そうか。」というと俺に券売機を譲り待っていた。
きっとそれなりに仲がいい親子なら、ここで微笑んだりするんだろうな。
俺は券売機のボタンを押したが、その後にお金のことを思い出した。
父さんが入れていてくれたのか。
「お金、ありがとう。」
「俺の子供なんだから当然だ。」
そういうことを言いたいわけではなかったのだが、少し嬉しかった。
子供という単語はこんなに大きくなってしまって、相応しいのか分からなかったが、自分の子供として意識をしてもらっていることが嬉しかった。
本当はこうして少しずつ幸せを集めていくのが親子なのだろうと思うが、決して親子の形はそれだけじゃないし、どうであれ親子は親子である。
それが分かろうとも、そう思うということは、自分自信が、求めていた形なのだろう。
親子という物の定義を俺が決めて、勝手に欲していた物なのだろう。
しかしそれが満たされていくことが幸せである。
料理が運ばれてから皿を平らげるのはあまりに早かったが、俺らは無言を続けた。
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