第59話 前兆

カウンター席しかないこの店の端の方に俺と父さんは座ったが、入口付近は、作業着の男らが座っていた。


父さんは食べるのが少し遅いほうだが、待っていた。

嫌な気持ちはしなかったし、少し嬉しかった。


キッチンでの、湯切りをする音や餃子を焼く音などの中、俺らは黙っていたが、その沈黙を刺すように俺の携帯がなり続けていた事に気づく。


俺は急いで携帯を手に持つと外まで少し走って電話に出る。

うろうろしながら人の邪魔にならない場所を探して、路地のような場所で携帯を握っていた。


「もしもし。」


「おう。お前いつから入んの?」

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