第22話 幸福体質

文化祭、瀬戸くん主役なのにな。


昨日いた人が、今日突然居なくなってしまうなんて

誰も思ってないよ。


まるでその予告をするみたいに、ご先祖さま達は皆いなくなっちゃったけど、

それでもエンディングがこんなにも突然なんて、そんなの酷いよ。


そうだ、瑞希ちゃんと夜、電話しよう。

きっと瀬戸くんの事を思い出すと辛くなっちゃうだろうから、寝るまで話していればそれまで辛くないよね。


駅を出た私は、道端に一輪だけあった黄色く小さな花を見ると笑って歩き出した。


住宅街に溶け込んでいたような駅だから、周りはすっかり静まり返っている。

細い道なんかはもう真っ暗になっているし、他の道は街灯で何とか明るい感じ。


家から駅までが近くて、いつも電車の音が聞こえてたから、勉強している時もずっと電車の音を聞いていた。

だから「うるさーい!」なんて電車に怒ったことだっていっぱいあったなぁ、

妹の羽那も電車が通る度に「ばーか!」って言ってたし。


あ、カーテンあきっぱなしじゃん!


自宅に着くと、外からお父さんの部屋が丸見えだった。

私は急いで家に入ると、手を洗ってすぐさまお父さんの部屋に行く。


「もう。いい加減にしてよね!」


カーテンを閉めると、キッチンから廊下に顔を出したお母さんの声が聞こえてきた。


「雛、おかえりーどうしたのー?」


「ただいまぁ!ん。お父さんがカーテン開けっ放しだったのー!」

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