第36話 レポート

懐かしいな。

昔から母さんは優しかった。


俺は目玉焼きとごま塩がかかった白米を食べ終えて、自室に戻る。


あ、その前に。

「母さん、美味しかったよ。ありがとう。」


「ふふ、急に何よ。」


「なんでもないよ、ただ何となく言っただけ。」


俺を助けてくれたあの時からお礼を言えていなかった。

それが今になって気がかりになってしまって、ありがとうを言わないという選択肢はなかった。


明後日からはバイトにまた戻る。

シフトが深夜だから生活リズムを壊さないとな。


一週間後、学校に行ったら俺はなんと言われるだろう。

やはり中学生の記憶は脳に焼き付いて取れないようで、今でも時々怖くなる。


しかし今は違うのは、俺は休める場所を見つけた。

国立庭園、あれは俺をかなり助けてくれた。


明後日に備え今日から生活リズムを考えなくてはいけないし、明日から壊さなくてはいけない。


今は朝で、そうか、十八時か十九時くらいには寝て夜中起きるんだ。

俺は入院で失った記憶を取り戻しつつある。

失ったといってもそんなに大それたものでは無いが、いくつか忘れてしまっていたり、うろ覚えだったものがある。


さぁこれから何をしようか。暇だ。とはならない。


俺は高校生なのでレポートの提出が必須なのだ。

今まで溜まったぶんのツケが回ってきている。

ツケておいてくれた学校に優しさを感じる、だがそれ以上に物量の多さに理不尽ながら憎しみを覚えた。


俺はレポートに取り掛かった。


母さんもそれを知ってか、一切話しかけて来なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る