第47話 無自覚な皮肉
なんで毎回皮肉みたいな心配を受けなきゃいけねぇんだよ。
いつもそう思っていたが、ふと、
これで本当に成立しなかったら俺、恥ずかしいぞ。
いつも笑って「大丈夫っすよ。何とかするんで」なんて言ってたけど、これで成功しなかったら、合わせる顔もない。
俺には過度なプレッシャーがかかっていた。
かなり焦っていた。
だから部活には手がつかないし、十月下旬の中間試験の勉強だってできていない。
製作だってまともに手が動かない。
ずっと頭のどこかで、足りなくなった役の補填の作戦を考えている。
おかげで殆どの登場人物のセリフを覚えてしまったくらいだ。
どこで、誰がどう分散させればいいのか。
登場人物の必要性、なぜそこに居なければいけないのか。
今までに月形に三人の修正と変更を提案している。
一人目、ダイナーという主人公が時々買い物に行くと、日常のヒントをもらうのだが、その店主。
この役は別に人で無くてもいいし、ダイナーじゃ無ければいけない訳では無い。
この案は無事に取り入れられた。
そして二人目のカーヌン、主人公の母方の祖母だ。
これに関しては、いるだけの存在なので今や要らないと思った。
だが月形は絶対にそれは対処したがらなかった。
「いるだけの役だけど大切なの。」と言っていた、
焦りすぎているせいだと分かっているが、少しでも事が上手く運ばないと納得が出来ない。
そうなると、相手を恨んだりする。
ただ、月形に何も文句を言わなかったのは、時間がもうないからというのと、なにより月形は一生懸命だと思ったからだ。
悪意がないと分かっているものを責める程には俺は腐っちゃいない。
そして今さっきフレストの役についてを検討してもらった。
嫌な予感しかしないが、役を減らせば俺らは幾分も楽になる。
だからそこに一縷の希望を掛けたのだ。
明日からは製作も終わり役作りに入る。
もう時間が無い。いそがなければ。
「あっ。」
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