第6話 陸上の飲み物、楽器の飲み物。

折半せっぱんな?」と笑った。


「あぁ。いいよ。」


言ってしまったからには買って帰らなければいけない。

思わぬ出費だが、仕事をしないお荷物役と思われるよりはいいだろう。


駅の中のコンビニに入ると、迷わずにアイスコーナーへと向かう。


「えっ。」

俺は聡明と同時に、驚きで思わず声を漏らした。


アイスのほとんどが売り切れているのだ。


そこには、バラエティーBOXの“ice《アイシ》クルちゃん”が幾つかと、“ふぁんとむモンスター”が数本。

あとはこの暑さのお陰か、ほとんど売り切れていた。


きっと、よく売れるふぁんとむモンスターは多めに仕入れているのだろう。


しかしながらふぁんとむモンスターを買うつもりはない。


「やばくね?」

俺が聡明にいった。


「いや、迷わねぇよ?」


聡明は迷わずにバラエティーBOXのice《アイシ》クルちゃんを手に取った。


ice《アイシ》クルちゃんは老舗しにせのアイスメーカーが数十年前に出した、伝統とも言える大人気ヒット商品である。


これもまた棒付きアイスだが、爽やかなクリームソーダ味は子供から大人まで食べやすく、絶対的人気を誇っていたせいか、さっきもバラエティーパックしか残っていなかった。


俺らはレジに向かう途中でドリンクコーナーへ足を運んだ。

「俺らの分だけはドリンクを買おう」と暗黙の了解で1本ずつ手に取った。


聡明はスポーツ飲料。俺は炭酸が強いレモンのジュース。


会計を済ませて、急ぎ足で学校へ戻る。

聡明はアイスの入った袋を持っているというのに走った。

陸上部だったからさすがに速かった。

俺はというもの、吹奏楽部だった。


しかし吹奏楽部も舐められては困る。

“運動系文化部”と言われる程体力を使う部活なのだ。

肺活量を鍛えるため、いつも走り込みをしていたのを活かしてやる、と俺も聡明の後を追った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る