第19話 ごめんなさい。
例えば瀬戸が、私のキスで生き返るなら、何度だってさせて欲しい。
鴉が鳴いた。
帰りにもう一度、瀬戸の家に寄ってみよう。そう決めて私は公園を出た。
公園から瀬戸の家までは一キロも無い。
私の家は道路を挟んで瀬戸の向かいの家だったから、瀬戸とよく来ていたこの公園からの帰り道は通り慣れてる。
歩きながら考えていた。
瀬戸は何故、そこまで無理をしたのか。
何故、瀬戸が体調不良な事を知っていたのに、心配をしに家を訪ねなかったのか。
今更になって、逃げ続けた心の諸問題と抗争を繰り広げている。
「私だって忙しかったから、、」と受け入れる私を
「瀬戸を見捨てて文化祭の準備をしてたもんね。」と
「そんなこと言ったってしょうがないでしょ…!そうなるなんて分からないんだから!」
自分が嫌いになっていく。
そしてただ一つ。
争っている私達が、同じように思っていたことがあった。
彼に、瀬戸に、「ごめんなさい。」と伝えたかった。
きっとこれは、気持ちを瀬戸に伝えなかった自分に対する言葉と
私なら瀬戸を、助けられたかもしれない。という希望による言葉だった。
私が家を訪ねれば、彼は無理が出来なかったのでは無いか、彼は笑ってくれたのではないか。
私は彼に、笑って欲しかった。
こんな時にも、『彼の笑う顔がみたい。』という自分の欲を満たしたいと思ってしまう私を、私はどんどん嫌になっていく。
ごめんなさい。
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