孤独の靄
第51話 父親
家に帰った俺は、再び溜まってしまったレポートに手をつける。
暫くやっていると、ふと気づく。
「あ、明日からバイトなんだった。」
昼夜逆転生活をしなければいけないんだった。
今は十三時、まだ寝るには早いか、先に昼食を食べよう。
そう考えていると、誰かが玄関を開ける音が聞こえた。
下ろした荷物と溜息がこのドアに沁みた。
ただいまは言わなかった。
父さんとはもうまるで話さないから、家に二人になった今は、空気がどっしりと質量をもったように感じる。
どこの部屋にも電気はついていなくて、閉じた白いカーテンの向こうから流れ込む陽の明かりだけが暖かかった。
時間が正午を過ぎたあたりということもあって、まだ寒くもなかった。
ただほかほかと暖かい匂いと足の裏から伝わるフローリングの温度が俺を満たした。
その中に父さんが入っただけで空気は一変する。
昼ごはん、食べなくてもいいかな。
わざわざ一階に降りなければいけない、それが俺には辛かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます