孤独の靄

第51話 父親

家に帰った俺は、再び溜まってしまったレポートに手をつける。

暫くやっていると、ふと気づく。


「あ、明日からバイトなんだった。」


昼夜逆転生活をしなければいけないんだった。

今は十三時、まだ寝るには早いか、先に昼食を食べよう。


そう考えていると、誰かが玄関を開ける音が聞こえた。

下ろした荷物と溜息がこのドアに沁みた。

ただいまは言わなかった。


父さんとはもうまるで話さないから、家に二人になった今は、空気がどっしりと質量をもったように感じる。


どこの部屋にも電気はついていなくて、閉じた白いカーテンの向こうから流れ込む陽の明かりだけが暖かかった。

時間が正午を過ぎたあたりということもあって、まだ寒くもなかった。

ただほかほかと暖かい匂いと足の裏から伝わるフローリングの温度が俺を満たした。


その中に父さんが入っただけで空気は一変する。

昼ごはん、食べなくてもいいかな。

わざわざ一階に降りなければいけない、それが俺には辛かった。

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