第82話 無価値への回帰

あれからの日々はあまりに怖かった。

どんどん忘れられていく。


きっと俺らは、どんどん離れていく。


俺から離れ、俺への興味は消え、俺は無価値へと帰る。


どうしようもない時間の進行が、それを加速させているようにも思えた。


受け入れるしかないと思った。


だからこそ俺は、それもどんどん受け入れるようになっていったかと思っていた。


でも自然と、俺はこう思うようになっていた。

「最後に、何か大きいイベントを開きたい。」

それがあれば俺は、忘れられないとでも思ったのか。


覚えてもらえると思ったのか。


俺は聡明に相談して、「卒業祭」を企画した。


卒業するから、と署名を貰って、三年生のみで小さな文化祭のようなものを開こうと思った。


それの発起者が俺となれば忘れられないと思ったのか。


高嶋や月形、桐谷とのグループチャットでは文化祭の写真が送られていた。


そこに、俺はいなかった。

皆は笑っているのに、俺はいない。


まだ入院していた時、病床でそれを見て、俺は不安に駆られた。


こうして、記録にも残らない俺は、人の記憶という不確かな物に映り込めるわけが無いと思った。


悔しかった。

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