第87話 異性

聡明はまだ歩いている。

「だるいぞー。絡むなそういうのにー!」


声を張り上げ俺に言う。

俺はふっと笑いながら小走りでまた追いつく。


「おっ。高嶋からメールきた。」


「おう。なんて?」


「いや、どこでやるかって話なんだけどさ。」


「おう。」


「高嶋ん家でいいって、母親いるけど。」


「まじ?」


「うん。やったな。」


「え、いや、なんも抵抗とか無いの?女子だよ?」


「あぁ。気にしてなかったわ。」


「え、だってほら、高嶋、高嶋さ、、ほら。」


俺はなんとなく、聡明と高嶋が一緒に笑うのはあまり好きではなかった。


「え、なに好きなの?」


「いや。別にそういうんじゃ、」


「はぁーーん。好きなんだなわかったわ。俺が協力してやるから任せろ。」


「いやちげぇって、」


「はいはい。みなさんそう言いますんでね。恥ずかちいもんねぇ」


「だから、、、!」


なんだ、俺なんかよりよっぽど嫌な絡み方をするじゃないか。

しかし、俺の胸は焦りに似たもので動いていた。


何故か、恋と言われると胸が鳴るのだ。

だから何としても聡明を黙らせないと。


そんなことを思いながらも俺らは高嶋の家に向かった。


「いらっしゃい。上がって。」


「おう。ありがとな。」


俺らは順番に靴を脱ぐ。


「ううん。五時までだけど。それでいいでしょ?」


「おう。関係ねぇよ。」


「うん。」


「いや、関係あるから。」


俺のツッコミで二人は一笑した。


久々に高嶋と聡明のノリを見た気がした。

あまりにも懐かしくて、少し思い出に浸る。

聡明は本当に女子だとか気にしていない様子だし、何しろ高嶋も、聡明をあしらい慣れている。

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