第79話 恐怖

だからまた連絡を取ろうなんて思えない。

忘れられるから、俺は、聡明の中から消えてしまうから。


友達の一人として、この聡明の中から消えてしまうから。

それが悔しかった。


だから、引っ越しするという事はもう、聡明との縁を切るような感覚だったのだ。


孤独だった。


俺は良くない人間だ。

こうなっても、俺が聡明を大事に思うのは、たった一人の俺を心配してくれる人間だから。


聡明だけがいい理由はない。

つまり、“聡明”としてではなく“人間”として、この行動を取る人格が好きなのだ。


聡明は俺のことを一人の俺として見ているから、俺がどんなに悪役になろうが、人を殺そうがきっと俺を大切に思ってくれるだろう。


俺はそんなこと出来ないが、彼はしてみせるだろう。


そんな差が、俺を益々ダメにさせた。


それでも聡明は語り続ける。

こんなにも友達や周りの閑居に依存しきらなかったのは本当にすごいと思う。


俺だったら少なくとも、友達だとかいうものには依存すると思う。


友達がああするから俺もこうしたい、とか、きっとそんな愚かなことを思うんだ。

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