第99話 不出来

「うん。忘れてただろ。」


「あれ、思うんだけどさ、多分一部の親から反対でるよ?」


高嶋が的確なことを言う。

高島の家に行ったあの日から、高島の言葉には何かの力が宿ったのか、怖気付いてしまいそうになる。


「それぞれが自分たちの親に許可取ってきてもらう。」


「ダメでしょそんなの、書類でもつくらないと。」


「確かに。」


「開催するってなったら作ればいいだろ!そんなのは」

聡明のフォローにいつも助けられる。

不甲斐ない、情けない。


段々と自分が嫌になる。

今日署名を見せに行くというのにこんなのでいいのか。


心を入れ替えないと。

腹の底に、ふつふつとした怒りみたいなものが俺に刃を向ける。


それを飲み込んで沈める。


「あんた達だけじゃ心配なんだけど。」


「大丈夫だと思うぜ?」


聡明は自信を持って言う。


「それならいいけど、もしあれなら私ついて行こうか?」


「それはそれで、ありがたい。」


自分の発言に自信が持てなくなった。

途端に曖昧な発言をするようになった。


「まぁ、説得する人間は多い方がいいからいいけどよ。」


「何それ。」笑う月形と高嶋。


ニヤける聡明、俯く俺。

俺だけ、世界が違うみたいだ。


同じところに居てはいけないみたいだ。

切り替えていかなければ、、、



「え、いつ行くの?」

高嶋の質問の相手は聡明になっていた。


心無しか、自分が避けられてるように感じた。

自分じゃ大した返答を出せないから。


聡明は俺に聞く。

「放課後、そのまま直でいいか?」


「うん。」


「あー。それだったらちょっとまっててよ。私委員会の事やんなきゃ。」


「おう、分かった。」


「ど、どのくらいで終わる、と思う?」


自分の発言が本当におかしい。


聡明は俺の顔を見た。

しかめた顔で。


しっかり、しっかりしないと。

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