第13話 妬け。

“詳細を確認(申し込み)”をタップしたのだ。



するとサイトが開かれて、

嘘にも信用が出来るとは言いづらい求人ページが画面

に小さくおさまっている。


ようやくそこで、俺はハッとした。

普段なら釣られることも無い広告に、釣られている。


俺がどれだけ今のバイトに辛さを感じているかを、やっとその時自覚した。


「つっら。」誰もいないのに笑った。


悔しいだとか、苦しいだとか、そういう時には笑いとばしてやるのだ。


俺はちょうどその時スマホの時刻が二十時二十九分を表示しているのを見ると、待ちに待った時間だと言うのに

特に嬉しくもなく、席を立った。


受付へ歩きながらme'inを開く。

幾つか赤く光った通知の中に、o-bay からの新たな通知はなかった。


十八時四十分。

微妙な時間だ、今の時間からバイトまではかなり時間が開いている。


しかし家に帰って何をするでもない。

この時間からはまともに寝ることさえ出来ない。


とぼとぼとまた、日本庭園の方へ歩いていく。

横切る車、黄色く路面を照らす街灯。


こんなにも人がいるのになぁ。


それなのになんだ。

誰も俺なんかに興味は無いのだ

あのいい匂いの女子大生にも

ぶつぶつと、何かを唱えるように歩き去っていった髪の薄いおじさんも。


きっとこの3人の中で人から話しかけられる確率が高いのは女子大生だろう。


ナンパとか、キャバクラのキャッチとか内容はどうであれ話しかけられるのだ。


つまりの所、意識されているのだ。


女って良いよな。


俺は女にこそ言えないがそう思うようになっていった。

そこにいるだけで華になる。

存在自体が価値になる。


世界には男の方が多いというのに、異性に貪欲なのは男の方なのだ。

それが俺には理不尽に思えた。


そう思うとヤケになってしまって、何もかもどうでも良くなってしまった。

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