第62話 意図
僕は今のお母さんから産まれたけど、兄ちゃんは二人目から産まれたらしい。
親が違うから、顔つきも全然違かった。
そんなお父さんは、僕にたまにいう。
「ごめんな。アイツは失敗作だ。」
僕はその言葉が怖かった。
人を、作品として見ていること、何度でも作ればいいとでも思っているかの様な発言を笑いながら僕に言えるのが怖くて、首に回された手に、鳥肌を立てているのが伝わらないように願った程だった。
「そうなんだね。」
僕がそう言うと、父さんは真剣な表情になって、
「だから、お前には生き方を変えてもらう。」
と言った。
それから僕の部屋には大量の教材と大量の鉛筆が置かれるようになった。
日本で一番偏差値の高い大学に合格できるように。
お父さんは遊び人だったけど、それをわかっていて、今のお母さんも家に入ったらしい。
お父さんには子供が何人もいる事を教えてくれた。
それでもここに僕と兄ちゃんしか居ないのは、女が産まれると綺麗になるように育てて自分の遊び道具にするんだとか、綺麗にならなかったら処分と言って人にあげてしまうんだとか。
それで残った子供は、顔の整った僕と兄ちゃん。
兄ちゃんがお母さんを殴っている所を見て笑うのも、お父さんもやっているかららしい。
それでも僕に優しくしてくれるから。
僕は口を出せなかった。
いや、その優しさに裏付けるように恐怖があった。
人を殴るという事、それで泣いているのを見て笑うこと。
うるせぇと蹴飛ばす事。
好き放題女の人を道具扱いする事。
人を道具としてしか見ていないこと。
この広い日本家屋や、子供からねだられた物は何でも与える事。
働いていないのにお金を大量に持っていること。
何かが裏で動き続けているのが怖かった。
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