第10話 継嗣の儀〜始祖の霊力を込めた石〜

継嗣の儀ー。

その内容は、生き神と贄が次代の後継者を作る=子作りをするというもの。


その大事な儀式の前に、風呂の時間を間違えて、裸の生き神様とバッタリ出会うというお風呂イベントを発生させてしまった贄である俺=葛城真人(17)


生き神様であるあかりに背中を流してもらったり、ラッキースケベで豊満な胸に顔を突っ込んでしまったり、散々役得な思いをしてしまった俺だったが、あかりが庇ってくれたおかげか、その後、時間を間違えた事を菊婆に怒られる事はなかった。


その後、例によって精のつきそうな食事をたんまり食わされ、保坂さんに案内され、継嗣の儀が行われる部屋へと通された。


半地下にあるその部屋は、俺がギリギリ通れる位の狭い入り口を通ると、意外にも広い空間があり、やはり、真ん中に三人はゆうに寝れそうな広さの寝床が用意されていた。


あの儀式を行う洞窟の奥の部屋に様子がよく似ていたが、寝床の側のローテーブルには、いつものティッシュや、ローションの他、飲み物も用意されており、天井近くに設置された神棚のような所には、しめ縄と紙垂に飾られた紅く輝く丸い石が据え置かれていた。


あかりは、儀式や、継嗣の儀の部屋には、生き神の始祖が霊力を施した特別な場になっていると言っていたけれど、あの拳大位の紅い石はなにか特別な意味があるのだろうか。


よく見ると、石には小さなお札も貼られており、いかにもいわくありげで、俺はゴクリと息を飲んだ。


あと、逆に洞窟にはあった何かがない気がするんだけど、何だろう?


部屋の中をキョロキョロ見回していた俺に保坂さんが声をかけた。


「もうすぐ生き神様もいらっしゃいますので、しばらくお待ち下さいませ。

贄様、いつもの通り元気いっぱい頑張って下さいね?」


「あ、はい…」


と俺は保坂さんに返事をして…。


「ん?いつもの通り元気いっぱい…??はっ!」


「では、 私はこれで失礼致します」


俺が引っかかる部分に首を傾げ、その意味に気付いた時、保坂さんはにこやかに一礼をして去って行った。


「ぐ、ぐはっ…!そう言えば、いつも、儀式の時カメラの映像、スタッフさん皆に見られてるんだっけ…!!////」


一人残された俺は、羞恥にその場に崩れ落ちた。


そうだった。儀式のデータを取るのに必要とかで、あの洞窟の部屋にはカメラが設置されていたんだ。


「この部屋にはカメラはない…よなっ?」

辺りをキョロキョロ見回して確認すると、今回は、誰にも見られることなくあかりと睦み合えそうで俺がホッと胸を撫で下ろしたところ…。


ポンッ!


「真人っ。さっきぶりね。お待たせしてごめんなさいねっ。」

「…!////」


突然空中に紅い着物姿の黒髪超絶美少女が現れ、俺の目の前にフワリと降り立った。


「あかりっ!いや、全然待ってない!い、今来たとこっ!」


「ふふっ。それなら、よかった…」 


デートの待ち合わせのよう受け答えをしてしまう俺に、あかりははにかんだような笑顔を浮かべたところ…。


「うっ…!」


「わわっと!あかりっ?!」


いきなりよろめいたあかりの肩を掴んで支えると、彼女は額に手を当てて気分が悪そうにしていた。


「ど、どうした。あかり!大丈夫か?どこか、具合が悪いのかっ…?」


真人ドバカよ。落ち着け。今、この場は始祖様の霊力に満ちている故に、生き神様の神の力が干渉を受けてご気分を悪くされてしまっているのじゃ。」

真人ドアホよ。時が経てばお体が順応なさる故、しばし待たれよ。」


「キー!ナー!」


あかりに続いて姿を現した精霊達が、心配をする俺に交互に説明をしてくれ、あかりは辛そうながら笑顔を浮かべた。


「そうなの。心配かけてごめんなさい。頭痛と目眩がするけれど、少し休めば直ると思うわ。」

「生き神様、お苦しいと思いますが、しばしの辛抱です。」

「個人差はありますが、大体は数分〜1時間以内には収まりますので…。」


「あかり…。無理しないで、そこで横になりなよ。」

「ええ。皆、ありがとう。うっ……!っ……!」


精霊と俺が声をかけ、寝床に寝かせると、あかりは弱々しく礼を言い、青い顔で体調の辛さを堪えていた。



心配で堪らず、俺はキーとナーに聞いてしまった。


「もしかして神棚に飾られているあの紅い石に、その生き神の始祖とやらの霊力が込められていて、それがあかりの具合を悪くさせているのか?

その石をどこか他の場所に移して、継嗣の儀をしちゃ駄目なのか?」


「「たわけがぁっ!! 駄目に決まっておるじゃろがっっ!!」」


あかりが心配なあまり提案した事は、精霊達に鬼の形相で全否定された。


「お主の推測通り、あの紅い御石には始祖様の霊力が込められていて、継嗣の儀に必要不可欠な場を作り出しておる。」「決して動かしてはならぬものじゃ。罰当たりめっ!!」


「そ、そうなのか…?確かに、お札まで貼ってあってすごい力を秘めてそうな石ではあるけど…。」


「「??お札が貼ってあるじゃと…?」」


キーとナーはフワリと舞い上がり、神棚に飾られた紅い石の近くを見に行き、不思議そうに首を傾げた。


「そんなものはないぞ…?」

「尊い御石にお札を貼るなど社の者がする筈がないし、見間違いではないかの…?」


「えっ。あれ、本当だ。ない。でも、さっきは確かに…」


キーとナーの言葉に紅い石に目を遣ると、さっきお札が貼られていたと思った位置には何もなく、狐につままれたような気持ちになっていると…。


「ふうっ…。始祖様の霊力に順応したようだわ。もう大丈夫よ?」

「あかりっ…!」


あかりが身を起こして、元気な笑顔を見せてくれたので、俺も精霊達もホッとした。


「生き神様、お早い順応でようございました。」

「過去に一度ですが、あまりにも体調が悪化された為、継嗣の儀を延期した生き神様もいらっしゃいましたので心配しておりましたが、安心致しました。」


精霊達は、あかりに笑顔を向けると、ペコリと一礼した。


「「それでは、失礼させて頂きます。待機しておりますので、継嗣の儀が終了次第、お呼び下さいませ。」

「ええ。ありがとう。」


そして、精霊達は俺を半目で一瞥すると…。


「「生き神様がお清めの湯に入られてる最中に、覗きに乱入した真人ドスケベよ。いらぬ時にばかり性欲を発揮せず、必要な時に励めよ?」」


「なっ…!ち、違っ。//あれは、時間を間違えて…。」


フッ。


「おいっ…。最後まで聞けよっ!」


俺が言い終わらない内に、精霊達は姿を消しており、あかりは困ったような笑顔を浮かべていた。


「キーちゃん、ナーちゃん。一応、私から説明したのだけどね…。」



*あとがき*


読んで頂きまして、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございます

m(_ _)m


今後ともどうかよろしくお願いします。


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