第14話 精霊の手も借りたい
「次は、ここを支えていればいいですか?」
「あっ。はい。保坂さん、ありがとうございます!ふっ!くおぅっ!」
カンカンカン!カンカンカン!
スタッフの保坂さんに、薄く細長く切った長さ2m程の木材を支えてもらい、輪切りにした丈の短い丸太にトンカチで釘を打ち付けていった。
何故、お屋敷のすぐ外の庭でこんなDIYを繰り広げているのかといえば、全ては
生き神様であるあかりに楽しんでもらえるお祭りの準備のため。
「ふうっ。後は俺一人で大丈夫そうです。保坂さん、手伝って頂いてありがとうございました!」
板を丸太に仮固定する事ができた段階で、俺が礼を言うと、保坂さんはにっこりと微笑んだ。
「いえいえ。お祭りの企画なんて楽しそうですね?
また、何か必要なものがあったり、人手が必要な時があったら、いつでも呼んでくださいね?」
「あざっす!」
保坂さんが屋敷の中に戻って行った途端、さっきから怪訝な顔で俺達の様子をうかがっていた、双子の精霊達が揃って口を開いた。
「全く、お前は、今度は何をやろうとしておるのだ!」
「スタッフまで巻き込みおってからに!」
のっけから非難口調のキーとナーに、俺は怯むことなく、説明した。
「だから、あかりを楽しませるための祭りで使うセットを作ってるんだよ。この上に乗って、進んでいく遊びをやりたいと思ってね。」
まだ、今作っている、丸太でつくった平均台のようなものを指差して俺がニッと笑うと、精霊達は慄いた。
「生き神様をこの上にお乗せすると?」
「危ないではないか!」
「うん。まぁ、もう少し安定するように作っていくから任せといてよ。
多少高さがあった方がスリルがあって、盛り上がるんだよ。」
「お前になど、任せられるか!スリルどころか、乗ったら、丸太ごと横倒しになってしまいそうではないか!」
「そうだ!せめて、土台の丸太を土に埋めるなどして固定しなければ…!」
なおも噛みついてくる精霊達の意見を聞きながら、俺はウンウンと頷いた。
「丸太の固定か…。なるほどね?キーとナーの能力で、何とか出来ない?」
「「は?」」
「や、俺に任せられないって言うから、手伝ってくれんのかと思って。
ごめん、出来ないんなら、いいんだ。ハハッ。お前達、ちっこいし、無理だよな。」
目を丸くする精霊達に、俺は苦笑いして手を横に振った。
「「むぅっ💢」」
「自分で頑張って、穴掘るよ。保坂さんに、スコップ借りて来なきゃな…。うわっ!!」
ゴォッ!!🔥ヒュオウ!!❄
そう言って、一度お屋敷に戻ろうとする俺の足元に炎の風が吹き、ドアノブは冷風に晒され凍り付いた。
「あ、危ないな!何するんだよ!」
文句を言う俺の前に、憤怒に燃えるキーとナーが迫っていた。
「ドバカめ!!精霊を馬鹿にするでない!そんな事、造作もないことだ!」
「ドアホめ!!精霊の力をみくびるな!お前は、黙ってそこで見ておれ!」
「は、はい…。」
逆らうと殺されそうな勢いの精霊達に押されて、俺がその場で大人しくチョンと座って見ていると…。
「「はああぁっ〜!!」」
ゴズズズ…!!
「!!?う、うえぇ〜っ!!」
精霊達が手をかざすと、作り途中の丸太の平均台が、地響きをたてて、土の中に埋まっていく。
俺はその一部始終を瞬きもせず見守った。
丸太が三分の一ぐらいまで埋まった時、地響きはやみ、固定された丸太の平均台の周りには、削られた土が盛り上がっていた。
「す、すげー!!!」
「「ふふん。どんなもんだ。」」
俺がこめかみに汗を垂らして称賛の言葉を漏らすと、精霊達は手を腰に当ててドヤ顔になっていた。
「ああ。マジ、すげーよ!!見くびるような事言って、悪かった。」
「そうだろう、そうだろう…。」
「やっと我らのすごさが分かったか…。」
気分が良さそうに、うんうん頷く精霊達に俺は満面の笑顔を向けた。
「キー、ナー!!マジ、ありがとう!じゃあ、他のもお願いするわ。」
「「ん?」」
キョトンとしている精霊達に、俺は大量の輪切りにした丸太が転がっているのを指差した。
「あれも、土に固定して、飛び石伝いみたいに進んでいけるような遊び場にしたかったんだ。
キー、ナー、よろしく頼むな?」
「「!!?||||」」
「おっし、一番手のかかりそうなものは、お前達のお陰で早く終わりそうだから、次は、他の遊びに使う細々した制作物に取り掛かるか!あと、食べ物系の試作もしなきゃいけねーし、やる事盛り沢山だな〜。」
精霊達が固まっているのを気にも留めず、俺は今後の準備の進行について考えた。
あかりに喜んでもらう為、やる事は何でもすると心に決めた。
猫の手も借りたいこの忙しさの中、例え、怖い精霊達を青褪めさせようと、力を借りないわけにはいかないのだった。
*あとがき*
年内の投稿はこちらで最後になります。
いつも読んで頂き、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございます
m(_ _)m
どうか皆様良いお年をお迎え下さい。
よければ、来年もよろしくお願いします。
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