紅糸島の奇祭〜カースト底辺の俺を嫌って、イケメンに擦り寄る許嫁よ、さようなら!これから俺は、島の生き神様に贄として愛されひたすら甘々の日々を送ります〜
第4話 閑話 双子の精霊 過去の後悔《ナー視点》
第4話 閑話 双子の精霊 過去の後悔《ナー視点》
部屋へ戻ると、生き神様はいらっしゃらなかった。
生き神様の気を探ると、近くにいけ好かない明人の気と共に、この二つ先の生き神様の勉強部屋にいらっしゃるようだった。今後の事でも相談されているのだろう。
『誰かがそれ(先読みの力や他の能力)を受け継いでいるとしたら、その子孫の人に頼み込んで生き神様になってもらって、あかりの持つ神の力を分散させて、分担して儀式に臨めば体の負担も少ないんじゃないかと思ったんだけど…。』
「全く、あやつは何を言い出すか分からぬな。生き神様の為に懸命なのは分かるのじゃが、流石に無茶苦茶が過ぎるというもの。のぅ、キー?」
「………。」
先ほどの真人の途方もない発想に苦笑いして、儂が呼びかけると、双子の片割れにして同僚のキーから返事はなく、険しい顔をして何か考え込んでいるようだった。
「キー??」
不思議に思い名を呼ぶと、キーは思いがけない事を呟いた。
「ナー。さっきは、ああ言ったが、真人の話、全くあり得ない話ではないやも知れぬと儂は思ってしまったのじゃ…。」
「キー?お主まで何を言うのじゃ!200年前に、双子の弟君が軟禁場所で無念の死を迎えられた事を儂らはこの目で確認したではないか!」
驚いて詰め寄ると、キーは、わなわなと震えながら言った。
「ああ。儂も今までそう思っておった…。確かに弟君の生命の気配は消えていた。全く気が感じられなかった。まるで、真人を狙った黒パーカーの人物や今現在の風切冬馬のようにな…。」
「キ、キー…!も、もしや、お主の言うのはっ…!」
キーの危惧している事態にやっと思い至り、儂は目を見開いた。
「ああ。儂らは弟君に謀られていたのかもしれない。」
「…!!!」
「それも、無理からぬ事であろうよ。
母君であられる生き神様も、姉君であられる次代の生き神様も、後継者が双子で産まれるという前代未聞の出来事に不安定になられ、弟君には殊更辛い境遇を強いられていた。
責任の一端は儂らにもある。当時は、生き神様をお支えするのに必死で、かの方達の意見を優先せざるを得なかった…。
始祖様は、緊急時には後継者が双子で産まれる事もあるとおっしゃっていた。
どうして双子が産まれたのか?
双子が産まれた意味について、もっとよく考えるべきだったのだ…。」
「っ……!弟君は生き神様や我らを恨んでおられたじゃろうな…。
あの後起こった出来事は、生き神様にとっても儂らにとっても、報いだったのじゃろうかっ…。」
キーの拳を握っての自責の言葉に、儂も胸が抉られるように強く痛む。
『何故、私が命を落とさねばならぬのだっ!!
お前かっ、お前が呪っているのかっ?!出来損ないの弟よっ!!
私の贄まで誑かせて、殺してやるっ!!』
赤い髪を振り乱し、鬼神と化した生き神様。
血溜まりに倒れている贄。
必死に立ち向かう次代の生き神様と儂ら。
呆然とそれを見守る先代生き神様と先代贄。
悪夢としか思えないあの後の記憶が鮮烈に蘇った。
「もし、黒パーカーの人物が、かの弟君に縁ある者だとしたら、今の状況を含め、事態は深刻さを極めておる。早急に対策を取らねばならぬ。」
キーの言葉に儂も頷き、
「では、生き神様と真人にも…。」
と言いかけて言葉を切った。
伝える事で、生き神様が不安定になり、余計に過去と同じ状況になるよう誘導してしまわないか…。
そして、それ自体が、儂らや明人が今、危惧する事態を招いてしまうのではないか…。
キーの瞳にも、儂と同じ不安が映っていた。
「今の生き神様と真人の関係を思えば、大丈夫じゃとは思うが…。先に明人に相談するのがよいかの…。」
歯切れの悪いキーの言葉に儂も無言で頷いたのだった。
*あとがき*
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