第12話 生き神様に捧げる祭り
「あかり。世間では、生き神様の儀式に伴い、開催される社のお祭りで、甘酒や、祝菓子をもらったり、各地で、屋台を出したり、出し物をしたりと皆浮かれ騒いでいるんだ。
それなのに、主役の生き神様である君が祭りを楽しめないのは、どうなの?って思うわけ。
そこで、俺は考えたんだ。お屋敷の中であかりの為の祭りを企画しようと…!」
例によって、「生き神様と贄として、コミュニケーションを取る為に」という名目の為、先代贄に頼み、あかり(双子の精霊つき)を呼び付けた俺は、拳を握って彼女の前でそう宣言した。
「私の為のお祭り…?」
目の前の麗しき黒髪美少女は紫がかった大きな瞳をパチパチさせた。
「ほう…?」
「「真人め。また、面妖な事を考え始めたの…。」」
傍らの先代贄は、興味深そうな笑みを浮かべ、あかりの両隣にいる双子の精霊は呆れたような声を上げる中、俺は更に続けた。
「まぁ、遊びのイベントを中心に企画しようと思ってるんだよね。」
「いいわね!✨✨将棋大会とかやるの?」
途端にあかりはパアッと顔を輝かせたが、俺は首を横に振った。
「いやいや、今度は将棋とかそういうガチの勝負になるやつじゃなくって、「お祭り」の一環として、簡単に楽しめる遊びを企画しようかなと思っているんだ。例えば、モグラ叩きとか、金魚すくいとかさ…。」
「もぐらを叩くの…?可愛いそう…。金魚も水からすくってしまったら、死んでしまうじゃない…。」
具体的に例を上げると、優しいあかりは、その様子をかなりリアルに思い浮かべてしまったのか、目に涙を浮かべた。
「ああ、いや。モグラ叩きは、本物じゃなくて、おもちゃを叩く事だし、金魚はすくった後、すぐ水の中に戻すから、死ぬ事はないんだけど…。」
「そうなの?よかったわ…。」
俺が慌てて説明すると、あかりは安心して、ほうっと息をついた。
あかりは、生き神の役目を果たすのに必要な教育は受けているが、それ以外の世間一般で流行っている事や、俗っぽい事に関してはあまり知らないようだ。
「あかりの為の祭りなんだから、もちろん嫌な事は企画しないよ。金魚すくいも、別に例に上げただけで、生き物をすくうのが嫌だったら、おもちゃや、スーパーボールに変えてもいいわけだし…。」
「それなら、楽しそうだわ…!」
「うん。食べ物も、いくつか作りたいと思ってるから、あかりが食べれるもの、食べられないもの教えてくれる?」
俺がそう問いかけるとあかりは顎に綺麗な指をかけ、考え、考え答えてくれた。
「ううん…。そうねぇ。社の人が出してくれている食事を食べているのだけど…。肉や魚は完全に除去しているわけではないけど、少なめで、大豆や、野菜を中心のお料理だった気がするわ。」
「ほう、ほう…。」
俺は、頷き、あかりの言う事を手帳に書き留めた。
社の意向で、あかりは殆ど菜食主義者と同じような食生活という事だな…?
ハッ!という事はその胸は殆ど大豆由来と言う事か…?
大豆ってすげー!!イソフラボンマジパねえーっ!!
俺は思わず、今は着物に隠されている、あかりの豊かな胸をガン見してしまった。
「「むう〜っ?」」
「??真人…?」
「い、いや、何でもない…。」
キーとナー胡散臭げに、あかりにキョトンとした顔で見られ、目を逸らした。
そして、咳払いをすると続けてあかりに質問をした。
「えっと、それから…スリーサイズを教えてくれ…ぐはあっ!!」
「「このドバカ(ドアホ)がぁっっ!!」」
俺が言い終わらない内に、双子の精霊から左右の頬にドロップキックを受けていた。
「真人ぉっ!!」
「コラコラ、お前達…!」
俺がドサッと和室の床に倒れると、あかりは悲鳴を先代贄は双子の精霊を諌めるような声を上げた。
「また、怪しげな事を始めて何を言うかと思えばやっぱり、そういう目的かぁっ!」
「生き神様と関われるのは、儀式と後継者作りの時のみと言うとろうが!生き神様はお前の邪な欲求をぶつけるべき存在ではないわ!」
「ひ、ひがうっれ!ひゃんろ、よほしはしゃはいいゆうは、はるんはって!!(違うって!ちゃんと邪じゃない理由があるんだって!!)あ…。」
「真人。キーちゃん、ナーちゃんがごめんなさい…。すぐ治すわ。」
両頬が腫れてうまく喋れない俺の下に跪き、あかりがひんやり柔らかい手を当てると、痛みと腫れが一気に引いた。
「キーちゃん、ナーちゃん、話も聞かないでいきなり暴力というのは駄目よ?」
「「は、はい。生き神様…。」」
あかりに怒られ、精霊達はしゅんとしている。
「それが、必要な理由があるのよね?私もわからないから、スタッフの方に測ってもらってから、真人に伝えればいいかしら?」
「お、おう。あと、身長もお願いする。」
「ああ。それなら…。」
あかりは俺のすぐ側に立つと、双子の精霊と先代贄に向かって、にっこりと花のような笑顔を浮かべた。
「ふふっ。真人より、私の方が10cm位大きいかしら?」
「「「ああ、ちょうどその位ですね。」」」
「なな、何おうっ?!そんな事ねーだろ!俺の方が大きいんじゃねえかぁ?」
俺が動揺してあかりより前方に出て、背伸びをすると、キーとナーはため息をついた。
「足が浮いておるぞ?」
「その上、遠近法を使おうとしている辺り、自分でも分かっておるのではないか?」
「それより、真人。楽しそうな企画をしてくれるのは嬉しいけど、あんまり無理はしないでね?倒れたりしたらだめよ?
よく寝て、ちゃんとご飯も食べるのよ?」
「分かってるよ。あかり…。何だかお母さんみたいだな…。」
あかりに人差し指を立てて申し渡され、俺は苦笑いをした。
あかりの前で何度も倒れている姿を見せてしまっているせいか、彼女を大分心配性にさせてしまっているらしい。
「お母さんまではいかないけど、私、年上だから、真人のお姉さん位の気持ちではいるかもしれないわね…。背も私の方が大きいし…?」
得意げな笑みを浮かべてマウントを取ってくるあかりに、俺はついむきになって主張した。
「ぬっ…!だからぁ…。年上っつっても何ヶ月かの差だろうが…。背はまだ成長途中だし、これからあかりを追い抜く予定だから!!」
「ふふっ。そうなのね?小さい真人も、可愛らしくて、このままでいて欲しい気持ちもあるけど、男の子だものね?これから頑張って大きくなってね?」
「めっちゃ子供扱いされてるぅ…。小さい言うなし…。」
脱力していると、キーとナーにも他の方面から釘を刺された。
「おい。真人、生き神様に喜んで頂けるような催し物をするのはよいが、くれぐれも羽目を外しすぎるなよ?」
「そうだぞ?準備にかこつけて、妙な事をしようとしていたら、すぐに追っていくからな?あと、生き神様に儀式以外で邪な事をしようとすれば、許さぬぞ?」
「妙な事も邪な事もしねーよ。純粋にあかりに楽しんでもらいたくて、イベントを企画してるだけだから、心配すんなって。
準備だって社のスタッフさんに許可を得て、出来る範囲でするから大丈夫だよ。」
キーとナーに詰め寄られ、どんだけ俺信用ねーんだよと呆れながら言い返した。
「うむ。祭りとは、実にお前らしい企画だな。
私に協力できる事があれば、力を貸す故、何でも言ってくれ。」
「ああ。ありがとう。先代贄。」
先代贄は、祭りの企画に賛成らしく、彼が協力を申し出てくれた事を有り難く思った。
「それなら、必要な道具と材料を用意してもらうの、お願いしてもいいかな?あと、菊婆に、連絡を取りたいんだけど…。」
*あとがき*
カクヨムコンランキング現代ファンタジー部門、12/10 290位になりました。
読んで頂きまして、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございます😭
今後ともどうかよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます