第11話 閑話 データの示すもの

「これは…。ちょっと、すごいな…。」


自室で、パソコンの画面に表示された儀式のデータを見て、私が驚いて嘆息していたところ…。


「はぁ〜。あのドバカめ。全くやってられんわ…!」

「ふぁ〜。あのドアホめ。デレデレしおってからに…!」


突然、背後に双子の精霊、キーとナーが現れ、渋い顔でぼやいてきた。


「真人の事か?いきなり現れてお前達、何を腐れている?」


振り返って呆れて問うてみると、彼らは私にも文句を言って来た。


「明人も悪いのだぞ?今までの慣例を勝手に変えて、儀式以外の日にも必要があれば、贄が生き神様にお会いできるようにするなど!」

「そうだ!真人にえが調子に乗って、ここのところ、毎日生き神様をお呼び立てしているではないか!今は次の儀式に向けて、気を高めていかなければならない大事な時期であるというのに、贄の都合に振り回されてしまう…。

前回の儀式の時など、先代贄のお前まで率先して贄の遊びに興じておって、けしからん!」


キーとナーに責められ、前回の儀式直前まで

生き神様に将棋の指南をしてしまった事を思い返し、私は咳払いをした。


「まぁ、流石にあの時はやり過ぎてしまったかとは思うが…。

生き神様と贄がコミュニケーションを取り、気持ちを一つにするのは悪い事ではない。

二度目の儀式の威力をお前達は見届けたであろう?」


「むぅ…。確かに二度目の儀式は通常であれば、一度目よりは威力が落ちる筈であるところを…。」

「むむぅ…。不思議な事に、寧ろ、一度目よりも威力が勝っていたな…。」


私に指摘されると、精霊達は反論の勢いを削がれて、難しい顔を見合わせた。


更に、私は彼らにパソコンのデータのグラフを指差して続ける。


「地盤の強度を測定したグラフでも、前々回より、前回の方が地盤が強化されているという結果が出ている。


生き神様と贄が心を通わせて儀式に臨んだ方がより強い儀式の力が得られると、私は推定しており、それを実践しているのだ。


儀式でよりよい結果を残すために、生き神様と贄の会合の場を設けているのだったら、文句はないであろう?」


「それは、そうじゃが…。むう〜。何だか上手く明人に丸め込まれたような気がするの…。」

「明人は口がうまいからの…。」


キーとナーは唇を尖らせながらも渋々納得したようだった。


もともと、生き神様以外の人に懐かない性質の精霊達にとって、最初の印象が最悪の贄、真人に対する風当たりは強い。


だが、生き神様と精霊達にとって、自らの存在意義でもある儀式の力の強さを持ち出されると、強くは出れないようで、今後は少しは真人に対する見方も変わっていくかと、私は安堵したのだが…。


「当代の生き神様、贄の気の力はここ何百年かで群を抜いて強いものだ。その途中には力の弱い生き神様と贄の組み合わせもあった事を考えると、今のうちに次代の分まで地盤の強化をしておいた方がいいかもしれぬな…。」


「うん、まぁ、そう言えばそうか…。今までは、、次の代の生き神様と贄が弱い気の力しかなく、大きな災害に当たってしまったら大変だものな…。」


キーの言葉に頷いて、ナーがそう発言した事に、私はふと引っかかりを感じて、呟いた。


?そう…なんだろうか…。」


「「明人…?」」


精霊達が不思議そうに見つめて来たのに気付き、私は笑顔を向けた。


「ああ、いや。なんでもない。

とにかく、今は、島民会で、生き神様信仰について懐疑的な者も出てきているし、黒服の人物の存在もあるし、社の内部で内輪揉めをしている時ではない。


真人が気に入らなくても、生き神様との仲を取り持ち、彼をも守る事がお前達の役割と心得よ。」


「「ふん。偉そうに言われずとも分かっておるわ!そろそろ、生き神様が湯浴みを終わられる頃故、もう行くわ。」」


そう言って、精霊達は私の前から姿を消した。


残された私は、確かめたい事があり、過去のデータを今まで起きた災害、キーとナーに確認して、メモをしていた歴代の生き神様と贄の系譜に照らし合わせて見て行くにつれ、眉間の皺を深めていった。


「まさかとは、思うが…。」


悪い予感が当たらなければ、それに越した事はない。だが…。


「準備をしておく必要はありそうだな…。」


私は、ある人物に連絡を取ることを決心したのだった。






*あとがき*


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