第25話 閑話 精霊達の覚悟
《精霊キー視点》
「もう少しだけ、もう少しだけ、このままでいてくれる…?」
「あ、あかり…。///」
社の境内に座り込み固く抱き合う生き神様と真人を空中から見下ろしていると、ふぅっとため息をつきナーが話しかけて来た。
「生き神様、昔の事を思い出しかかっていらっしゃるの…。」
「ああ…。」
『今、何か思い出しかけたわ。私、小さい頃、ここで男の子と会ったのよ。』
さっきの生き神様のお言葉を思い出し、神妙な顔で頷いた。
「最近の生き神様は、儀式の度に力を増していらっしゃる。先代生き神様の術も間もなく解けてしまうじゃろう。」
「まぁ、仕方ないじゃろう。あの時はまさかこんな事になろうとは思わなかったの…。」
「ああ。思いもしなかった…。」
過去の出来事を今の状況に重ね合わせて思い出し、ナーと共に感慨深く頷き合う。
あの時は、生き神様はまだお小さかった。そして、もう一人も…。
「しかし、分からんのものだの…。
真人は頭も悪く、顔も普通、スケベじゃし、歴代最悪贄じゃとのに…。
なのに、当代の生き神様は今まで見て来たどの生き神様よりもお幸せそうに見える。」
「ああ…。最初は反対しておったが、明人の言う通り、あやつはなるべくして贄になったのかもしれぬ。
例え生き神様の記憶が戻られたとしても、あの二人なら、揺らぐ事はないじゃろうて…。」
苦笑いしながらのナーの言葉を肯定し、二人の絆の深さに関しては確信を持ってそう言ったのだった。
「「生き神様のお幸せが長く続く事を祈らずにはおれんが…。」」
✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽
《精霊ナー視点》
真人主催の祭りから数日後ー。
ブワッ…!!
「「おお…!何と強大な光よ…!!」」
今までの2回の儀式とは比べ物にならない恐ろしい勢いの儀式の光の柱が空に立ち昇り、島全体を包み守っていく様子に我らは圧倒されながら見届けたのだったー。
「ナー、喜ばぬのか…?」
そう言うキーには、自分と同じ何とも言えない表情が浮かんでいた。
「ああ…。あの普段、鉄面皮の明人が必死さを隠さず、方々を駆け回っているのだ。
流石にこの状況が異常事態じゃというのは察するわ…。」
精霊の自分達より先に、科学的データとやらで、人間達から知らされる事になるとは何ともおかしな話だが…。
これも、数百年前、生き神様から先読みの力が失われた事による弊害か…。
儂は苦笑いをして、キーに聞いてみた。
「生き神様は、ご存知であられるのじゃろうか…?」
「うーむ。無意識レベルでは分からぬが、恐らくまだじゃろう。当代生き神様は、素直で真っ直ぐな気質のお方じゃ。気付いていれば、すぐに対策をとられているじゃろう。」
キーの答えに、尤もと儂は頷いた。
「この力の増し方だと、もう長い事はなさそうじゃの…。」
「やはりナーもそう思うか…。初代生き神様より、この地に生み出され、歴代の生き神様をお見守りして400年…。
長かったようなあっという間のような時間じゃったの…。」
冷徹なキーの白銀の瞳に僅かに感傷のような色が浮かんでいた。
儂の赤い瞳にも同じ色が浮かんでいるのじゃろうか。
「ああ…。本当にそうじゃな…。しかし、これから何があろうとも、儂らの役割は一つじゃ。」
「ああ…。」
儂らは頷き合い、声を重ね合わせた。
「「儂らは最後まで生き神様にお仕えするのみ…!」」
*あとがき*
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