第21話 祭り➁〜いたずらっ子の精霊達

 その後、スタッフの羽坂さんに借りたペットボトルカバーで、道具を作り直し、ようやくネッシーらしい外観になり、(俺の何か大切なものと間違われる事もなくなり、)ネッシー叩きが再開される事となった。


 ピョコッ!

「えいっ。」

 ピョコピョコッ!

「えいっ。あっ…!一個逃しちゃった💦」


 ピピピピピピ…!


「は〜い。タイムアップ!スコアは、120/150でした!あかり、お疲れ様!」


「ふふっ。難しかったけど、楽しかったわ。」


 ネッシー叩きの後、スコアを読み上げると、あかりは可愛い笑顔を見せてくれて、俺はホッとした。


 キーのスコアも、ナーと同じ150/150だったので、もしかしたら、負けず嫌いなあかりは機嫌を損ねてしまうかと心配していたが、将棋のようなガチの勝負事でなく、こういう遊びみたいなのは、結果を気にせず純粋に楽しんでくれるようだ。


「じゃあ、ネッシー叩きをクリアした三人に、スタンプを押していくな?」


 ポムッ!ポムッ!ポムッ!


 俺はハンマーの形🔨の消しゴム版に緑のインクをつけ、三人のスタンプカードに順に押して行った。


「わぁ…✨✨スタンプ可愛いわね?これも真人が作ったの?」


「いやいや、俺はそんなに器用じゃないよ。スタッフの富田さんがこういうの得意らしくて、彫刻刀で彫ってくれたんだよ。」


 そう言って、向こうの方のブースにいる富田さんの方を指し示した。


「そうなのね…!富田さん。私達の為に可愛いスタンプ作って下さってありがとうございます。」

「「生き神様…。」」


「いえいえ、そんな!💦💦生き神様に喜んで頂けるなら光栄な事です!頭をお上げになって下さい。」


 あかりが富田さんの方へ向けて丁寧なお辞儀をすると、彼女は、えらく恐縮して、ペコペコと頭を下げていた。


 それからも、あかりとキー&ナーは、次々に色んなブースを回って行った。


 〜パズルブース🧩〜 


 隣のブースの羽坂さんは、あかり、キー&ナーに、段ボールで作った、パズルの枠とパズルピースを渡して、説明をした。


「ここでは、パズルをやって頂きます。

 完成すると、ある人物の顔になるそうですよ。出来たらハンコを押しますので、お持ち下さい。」


「分かったわ。ふふっ。誰の顔になるのかしら…?楽しみだわ…!」


「へへっ。俺が思うに、すごいイケメンな奴の顔じゃないかな…?」


 パズルの制作者である俺は、ワクワクしている様子のあかりを可愛く思い、デレデレしながらそう言うと…。


「えー、一体誰かしら??」


「むっ。何やら嫌な予感がするの…。」

「完成させたくなくなってきたの…。」


 あかりは、キョトンと首を傾げ、精霊達はげんなりとした表情になった。


         *


 数分後ー。


「出来たわぁ!!真人の顔だったわ!!」

「はい。完成おめでとうございます!スタンプを押しますね?」


 ポムッ!


 順調にパズルを完成させ、顔を輝かせたあかりは、羽坂さんに見せ、スタンプカードにスタンプを押してもらっていた。


「「儂らも出来たぞ?」」


 精霊達も、羽坂さんの前のテーブルにパズルを置くと、(精霊達はあかりと贄以外には見えない為)パズルがひとりでにテーブルに移動したように見えたであろう彼女は周りを一瞬キョロキョロした後、机の上のソレを確認し、俺もそれを覗き込んだ。


「ん?なんだ、このパズル?!」


 よく見ると、キーとナーの提出したパズルは、ピースをデタラメに突っ込んでおり、鼻が頭についていたり、目から歯が生えていたり、化け物みたいな顔になっていた。

 さては、キーとナー、わざと嫌がらせに変な風に配置しやがったな?


「「ふふん…。本人そっくりの男前につくってやったわ…!」」

「おい。こら、このいたずら精霊共が…!」


 にやにや笑いを浮かべているキー&ナーを俺は睨みつけたが…。


「はい。完成したので、スタンプ押しますね?」


 普通に完成認定して、スタンプを押す羽坂さんに俺は目を剥いた。


「羽坂さんっ??!明らかににパズル、間違ってるって分かるよねっ?」


「あっ。すみません…。私、イケメンの顔以外はあんまり認識出来なくって…💦」


「ぐはっ…!💥」


 羽坂さんに、心底すまなそうにそう言われ、俺は大きなダメージを受けた。


「「プククッ…!フハハハッ!娘もなかなか言うの…!」」


 精霊達は笑い転げている。


「ま、真人っ。大丈夫よっ?真人の顔はイケメンではないけれど、とっても味のあるいいお顔よ?元気出して?」

「ううっ。あかり…。そんなに慰められると余計に胸にクルよぅ…。」


 ショックに跪く俺に、あかりに優しく慰められ、俺は泣いた…。


 〜食べ物ブース〜☕ 


「蜜果飴というのね?とろりとして甘酸っぱくて美味しいわ〜!✨✨」


 あかりは、食べ物ブースに設えられたテーブル席で、担当の刈谷さんに、もらった蜜果飴を一口食べると、その美味しさに笑顔になり、頬に手を当てていた。


「生き神様に喜んで頂けて光栄です!甘酒も召し上がって下さいね?」

「ありがとう。温まるわ。」


 にこやかに刈谷さんに甘酒も渡され、礼を言うあかりに、キーがドヤ顔で主張する。


「生き神様!儂も試食しまして下の生地をサクサクにするよう進言したのですぞ!」

「ホントだわ〜。カップがサクサク。キーちゃんもありがとう!」


「うむ。何にせよ、うまい。はむはむ…。」


 ナーはただモクモクと蜜果飴の味を堪能していた。


 生き神が、代々守り育んで来た島の恵みをあかりと精霊達が享受してもらえて、自己満足と思いつつも、俺は何だか満たされた思いだった。


 〜ヨーヨーつりブース〜🪀


「ヨイショッ…!あっ!釣れたわ、真人!!」

「やったな、あかり!」


 あかりは何度か失敗し、苦心しながらも、ティッシュで作った釣り針を引っ掛け、ビニールプールに浮いているヨーヨーを釣る事ができた。


 その後、キーとナーは残りのヨーヨーを全部取り尽くした。


 ポスポスポスポスッ!×2


「「ハハハ!ヨーヨー楽しいのう!!」」


「お前ら、ヨーヨー取りすぎ!」

「わあっ。すごいわ!キーちゃん、ナーちゃん…!」


 両手5本の指にヨーヨーをはめ、高速でついているのを見て、俺は呆れ、あかりは歓声を上げた。


「ヨーヨーが、大量に浮いて、動いておる…!精霊様達は本当にいらっしゃったのじゃなぁ。」


 例によって、ヨーヨーが宙に浮いているように見えているヨーヨーブース担当の菊婆は、目を丸くして感心いた。


「とすると、やはり、この間、島民会の椙原様にイタズラをされたのは…。」


「ギクリ!さ、さあ、では、生き神様、次のブースへ行きましょう!」

「ギクリ!そ、そうだな。キー。」


 菊婆の目を光らせての発言に、キーと俺は顔色を変えて、その場をそそくさと後にした。


 いくら菊婆でも、精霊におしり百叩きはしねーと思うけど(俺は今でもされるだろうが…。)同じイタズラをした者同士きまり悪さを共有してしまっていた。


「あっ。待って、キーちゃん!真人!」

「??二人共急にどうしたんじゃ?」


 あかりとナーと不思議そうな顔で慌ててその後を追って来た。



 *あとがき*


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 今後ともどうかよろしくお願いします。



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