第18話 精霊達の裏切り者調査
その後、姿を消す技を解除してもらった俺とあかり、(他の皆には見えないが精霊達)菊婆、社のスタッフで集まり、和室で座卓を囲み、話し合う事になった。
「菊婆様、島民会と風切総合病院の方々の対応どう致しましょうか?」
保坂さんに問われ、菊婆は渋い顔をした。
「どうもこうも、奴らめ、真人が無精子症じゃの、新しい贄じゃの、生き神様に敬意も払わず好き勝手言いおって……!」
「本当にそうですね。既に継嗣の儀の後ですし、生き神様は後継者の生き神様をお体に宿されているというに……!」
「「!」」
顔を顰めての保坂さんの言葉に、俺とあかりはビクッと肩を揺らした。
「あ、あのっ。それなんですが……」
「実は、まだ後継者は出来ていないんだ……」
「「「「ええっ!?」」」」
「何じゃとっ!?」
あかりと俺が事実を告げると、菊婆とスタッフさん達全員信じられないといった表情で大声を上げた。
「儀式ではあんなに、元気いっぱいでいらしたのに?」
「ええ。贄様若さ全開でしたのに!」
「生き神様と贄様、お清めの湯も共にしていらっしゃいましたよね?」
「もしかして、後継者作りのプレッシャーで機能しなくっ?」
「ああっ。贄様のお料理、すっぽんの量をもう少し増やして置けばよかったですっ!」
スタッフ達に、儀式(※スタッフにはカメラ中継されていた)や、事故で清めの湯に乱入してしまった事なども持ち出され、あかりと俺は真っ赤になった。
「いえ、あの、行為自体は問題なく行われましたっ! /// 真人も真人の真人も元気いっぱいでした!」
「お、おう! 儀式の時の5倍は元気だったって、何言わせんだよ! ///
あと、刈谷さん、継嗣の儀の前の食事、すっぽんの量凄かったから、それ以上増やさないで?」
慌てて、弁解するあかりと俺に菊婆は衝撃を受けていた。
「では、滞りなく継嗣の儀が行われたというのに、後継者がお出来にならなかったという事か……!ますます奴らの主張が信憑性を増してしまうのぅ……」
「継嗣の儀の部屋で、祀ってあった始祖様の御石って奴、最初は小さなお札が貼ってあったのを見たんだ。」
「私が部屋に入った時には、そのお札は消えていました。体内で、干渉されるような力も感じましたし、何か細工をされていたかもしれません」
「何と……!」
更に不穏な事実を告げると、菊婆は目を見開き、苦しげに嘆息した。
「自分達に有利になるように画策された事じゃったなら、これは由々しき事態じゃな……!! 島民会に内部情報が漏れていた事からも、社側に奴らと通じている者がいることになってしまうではないか……」
「「「「………||||」」」」
スタッフさん達も青褪め、辺りに重い沈黙が立ち込める。
「分かっているなら、話は早い!」
「スタッフ達の心を少し探らせてもらうぞ?」
「「キー(ちゃん)?ナー(ちゃん?)」」
スタッフさんの方へふよふよと浮いて行く精霊達に、俺とあかりは目を瞬かせた。
「真人、どうした?」
「あっ。いや、なんか、精霊達が、今からスタッフの事を調べるって言ってて……」
「「「「「……!」」」」」
怪訝な顔をする菊婆に、俺が状況説明すると、スタッフさん達は身を固くした。
「そういえば、精霊様は人の心が読めるのじゃったな。皆、これは生き神様を守る為に必要な事、分かってくれるな。」
「「「「「「は、はい……。どうぞ、精霊様……!」」」」」」
「精霊様、お調べ下され。」
スタッフさん達と菊婆は、彼女達に見えない精霊達に身を委ねるように目を閉じた。
「菊婆から行くぞ……」
以前、儀式前に俺にしたように、ナーは
菊婆の額に指を当てて、術を発動させた。
「ナー…。」
「ナーちゃん…。」
俺とあかりはその様子を不安気に見守り……。
「ふむ……。「亡き心様の代より、社の責任者を預かりながら、孫の真人と共に失態を重ねてしまい、本当に申し訳なく思いますじゃ……。
もともと、老いたこの身ですが真人と共にいつでも生き神様に生命を捧げる覚悟にございます。、精霊様、如何様にもご処分下され……!」だそうです。」
ナー菊婆の心の声を聞かされ、俺とあかりは驚きながらも、精霊の声が聞こえないスタッフさん達に配慮して小さく声を上げた。
「(そんな!処分だなんて菊婆ったら……!)」
「(勝手に人を道連れにしようとするな!)」
「まぁ、社の責任者で、
「そうじゃな。」
「「よ、よかった……」」
キーとナーが頷き合って出した菊婆は味方だという結論に、取り敢えず俺とあかりはホッとした。
それから、キーとナーは順にスタッフを調べて行った。
「続いて、富田……。「私は生き神様に心から忠誠を誓っております!」」
「続いて、羽坂……。「私は生き神様と贄様に心から忠誠を誓っております!」」
「続いて、保坂……。「私は生き神様に心より忠誠を誓っております!」」
裏切り者が発覚する事もなく、順調に調査は進んでいたが……。
「続いて、刈谷……。ん?」
青褪めてガクブルしている様子の刈谷さんの額に手を当てたナーが一瞬固まった。
「か、刈谷さんが、どうしたの?ナーちゃん??」
「な、何かあったのか?ナー??」
ビクつく俺とあかりに、ナーは困惑したように答えた。
「え、ええ。「ああ〜どうしましょう?精霊様達に調べられて、今月、試作品の開発を張り切りすぎて、予算をかなりオーバーしてしまった事が分かったら、社のお金を食い潰す裏切り者だと思われてしまうでしょうかっ!?」だそうです……。」
「(え。それを気にしていたの?刈谷さん……)」
「(な、なんだ……。一瞬、刈谷さんが裏切り者なのかと思っちゃったぜ……)」
ナーから刈谷さんの心の声を聞いて俺とあかりは脱力した。
「「まぁ…刈谷は白じゃな」」
「ええ。刈谷さんは白」
「ああ。刈谷さんだけは絶対白」
精霊達と俺達全員一致の結論が出たところで、試作品について俺が大分無理を言った責任を感じ、後で、厨房の予算の事について菊婆に一言言っとこうと決意したのだった…。
*あとがき*
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