第14話 終わりの予知夢


《四条灯視点》


「あかり、じゃ、また明日。」

「ええ、〇〇、明日ね。」


沢山遊んで、夕焼け空が広がる神社の拝殿の側で、私達はバイバイした。


階段を降りて行くその後ろ姿を見守っていると、ふいにその子が振り返り、いたずらっぽい笑みを浮かべて、ぶんぶん手を振りながら、叫んだ。


「大きくなったら、ぜったい君をお嫁さんにするからな〜!」


「そんな事出来ないわよ〜!私には役目があるもの!」


私も何度も言っている事を叫び返すと、その子は怯む事なく、親指を立てて来た。


「じゃあ、将来、俺がその役目を助けてあげる人になるよ〜!」


「えっ。でも、特別な人しかなれないの!」

「じゃあ、俺特別な人になれるように頑張る!じゃ!」


「あっ…。◯◯!もう…。努力でどうにかなる事じゃないのに…。」


言いたい事だけ言って、笑顔で去って行くその子の背中に小さく零したけれど、そんなあり得なさそうな未来をほんのちょっとだけ想い浮かべてみて、私の口元には、笑みが浮かんだ。



そして、次の瞬間…。


グラッ…!


「?!」


ぐにゃりと空間が歪むような感覚があり、私は、黒雲に覆われた上空から島を見下ろしていた。


「わ、私…??」


すらっと伸びた手足、丸みを帯びた体付き。自分の体がすっかり大人のものになっている事に戸惑っていると…。


「あの時、約束したのに僕を選んでくれなかったんだね…。」

「誰っ?!」


近くで声がして、振り向くと、黒い影に包まれた、顔の見えない長身の男性が同じように空に浮いていた。


「僕を選んでくれないと、ひどい事になるというのに…。ホラ、下をご覧よ。」


「え…? …!!!||||||||」


ガラガラ…!ドーン!!ピシャン!!ドゴン!!


ゴオオオ…!


荒れ狂う空の下、稲妻が飛び交っていて、島の木々が燃えている。


そして、その異常な数の稲妻が走っている空の辺りにいるのは…。


「アハハッ…!!アハハハッ…!!この世界なんて、皆滅びてしまえばいいんだわ!」


邪悪なオーラを身に纏い、赤い髪を逆立て、赤い目から涙を流し、狂ったように笑っているのは…。


「あ、あれは…わ、私っ…?!」


そこにいたのは、神の清らかな力を受け継ぐ生き神ではなく、禍々しい鬼神と成り果てた自分の姿だった。


「ハッ!!フンッ!!」


ピシャン、ドゴーン!!ガラガラ、ドーン!!


「お、お願い!やめて!!どうしてそんな事するの?!」


稲妻を降らし、嬉々として周囲を破壊している自分に、必死に叫ぶが、聞こえていないのか、破壊行為は、ますますひどくなるばかりで、周囲の天気もどんどん荒れて行った。


グラッ…!

「?!!…!!!」


そして、また空間の歪む感覚があり、目を開けると、恐ろしい光景が広がっていた。


激しい風雨は、堤防を決壊させ、恐ろしい勢いの津波が島を一飲みして行ったのだ。


完全に水没した島の近くには家や人の残骸らしきものが多数浮いており、生命の生き残っている気配は全くなかった。


「これも、私のせいっ……?」


恐ろしさに震えていると、また場面は切り替わり……。


崖近くの草地に人が倒れていたー。


近付いていくとそれは、よく知っている男の子で、腹部から大量の血を流す彼はピクリとも動かず、神の力をもってしても生気が全く感じられなかった。


「ま…ひとっ……?」


目の前の光景が現実のものとは思えず、彼を呼ぶ自分の声がどこか遠くから聞こえていた……。


        ✽



「いやああぁーーっっっ!!!」


「「生き神様っ?」」


「っ…!??」


血走った目で周りを見渡すと、そこはいつもの自分の自室で、布団から飛び起きた私を、キーちゃん、ナーちゃんが心配そうに覗き込んで来た。


「ハアッ。ハァッ。ゆ、夢…?」


島を水没させた災害。


それを引き起こしたであろう鬼神に成り果てた自分。


そして、傷付き生命の灯が感じられない真人。


ただの夢と言うには全てがあまりにも生々し過ぎた。


そして、何より、泡立つ神の力の感覚が告げていた。

これは近い内に起こる事。予知夢であると…。


「「大丈夫でございますか!?生き神様っ!」」

「だ、大丈夫…。大丈夫よ…。」


キーちゃんとナーちゃんに答えながらも、私は体の震えがしばらく止まらなかった。




✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


《??視点》


生き神に夢を送ってやった後、私は笑いが止まらなかった。



「アッハッハッ!苦しいだろう、生き神!!とくと思い知れ!!

それが、お前らが命の半減と引き換えに免除され、200年もの間、我々が抱えて来た悪夢だ!!


自分の罪深さを知ったなら、一人で野垂れ死にでも何でもするがいい!


私は何を犠牲にしてでも、あの人を守ってみせる…!」


そう。例え、犠牲にするのが、島一つでも、自分の命であったとしても…。


私は自分の拳を握り締め、ただ一つの事を心に誓ったのだった。




*あとがき*


読んで頂きまして、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございます

m(_ _)m


今後ともどうかよろしくお願いします。


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